ウザいとか山行の楽しさを奪われるという次元の話ではなく、無責任なアドバイスは他人を危険に曝す行為だからやめてほしい、そういう話です
最近の山行でこんなことがありました。まず状況を説明します。
残雪期雪山のそれなりの危険箇所、私はソロで片手にピッケル・もう片手にストックを持ってピッケルを後ろ手気味にしてスピッツェがどの程度雪面へ効くかを細かく探りながら雪面を下っていました。
そこに2人組が登ってきてすれ違いとなったので、登りの2人に先に通ってもらうことにしました。
双方視認した時点ではまだだいぶ距離があったので、登りへプレッシャーをかけずに済むようにある程度私が先に下り、安全度が高めの箇所で脇へ避けてやり過ごすことにしました
その後に登り側が進んでこられて登り待ちの間、2名のうち先頭の方から山頂付近の状況を聞かれたので、簡単に危険を感じた箇所の話をしました。
するとその方は登りがてら私の装備に目をやり、ちょっと気になったところがあったようで数点アドバイスをもらったのですが、特に「ピッケルは仕舞ってストック2本のほうがいいと思いますよ」というのです。
私は「安全なところへ降りてから変えます」と答えてすれ違いを終えました。
ええと・・・
アドバイスをしている相手はお前のパーティーメンバーでもなければ友達でもないんですよ。
さて、ここで「お前」と書かれてムッとした方、「善意で言って『あげている』のになんて言い草だ」と感じた方、落ち着いて読んでください。申し訳ないのですがその当事者意識から察するにあなたは山で他人を危険に曝す身勝手なアドバイスをしてしまっているかもしれません
「このギアに変えたほうがいいよ」「こうしたほうがいいよ」とその場で言うのは簡単です。
しかし、下山までの危険箇所はそこだけですか？ 途中の斜面状況やアクシデントにあわせて最後まで付き合いきれますか？
仮にアドバイスをした瞬間に限った話としても、相手の力量と体力状況・目に見えない怪我や集中力の低下まで読み切れていますか？
そこまで考えきれずに相手へ不確かなアドバイスをするのは、テレビの野球中継にヤジを飛ばすのと大差ないのではありませんか？ それは山岳における他人の安全にかかわる行動として適切なものですか？
前提が違うとギアの選び方も扱い方も大きく変わります。
今回の場面は複数のルートが合流して登り詰める箇所だったので、その人は他のルートから来たのかもしれませんがそれは私には分かりません
登山における集中力というのは全方位で常時注意することというよりは、いかに普段から反復練習して自然に身体が安全行動を取れる範囲を増やしつつ現地で五感を使って状況を掴んで判断をし行動し続けるか、というものであるように思います。
山行の途中でのギアチェンジはそもそもこの微妙なバランスを保っている箇所へ穴を開けて本来注意力の必要な箇所へ注意を向けきれなくなる危険性を持つもので、それゆえ新ギアを手に入れたら練習山行を積み重ねて定着させるものなのではないでしょうか。
クリティカルシンキングの訓練を受けていて意識的にアドバイスを吟味できる状態になければ、自分より慣れてそうな人から言われたことを容易に受け入れてしまうのが人間です。
あなたの「アドバイス」を鵜呑みにした初心者が型を崩して滑落死したら、あなたは責任を取れるのですか？
私は結構ひねくれているのでその場で相手を怒らせない程度に受け入れる風の受け答えをしつつ受け流しました。しかし下山中に長い時間「あの人はなんでこれを言ったのだろう」と考え続けてもいました。
こうして集中力が低下するだけでも、危険度の高い山行における安全マージンは削られていくのです
私は割と保守的に登山道の対人コミュニケーションを捉えているので、普遍的に登山道で相手にかけてセーフな言葉というのは
「こんにちは」、「ゆっくりで大丈夫ですよ」（すれ違いを待つ場合）、「ありがとうございます」（すれ違いで先に通らせてもらう場合）、「お気をつけて」
だけだと思っています。
道中の危険箇所について漠然と聞かれて「いや特に問題ないですよ」と答えるのも私は躊躇します
さて、登山道のすれ違い、登り・下り対向でもせいぜい1分そこらの短時間です。
そのうち1つのことについて喋っているほんの10秒・15秒の言葉のやり取りで適切に情報を相手へ伝えるのは難しいです。
特に命を預けるギアの扱い方についてアドバイスをするのなら「日本山岳ガイド協会 山岳ガイドステージ�兇�xxxです」とか、「静岡で消防士をしているM月といいます」という一言があれば言葉の説得力が明らかに上がりますが、山でいきなり名乗るのはおそらく相手が準遭難状況にあると判断してそれに付き合う覚悟をしたときぐらいじゃないでしょうか。
今回私にアドバイスをくださった方も、今後コメントやDMなどで連絡がつけば・あるいは山行記録をもとにどういった山行スタイルの方なのかの推測ができれば、頂いたアドバイスを今後の私の安全登山へと役立てられて大変ありがたいのですが 今のところ連絡手段がないのでせっかくのアドバイスは聞き流し状態にあります
私個人的には力量差のありそうな複数人パーティーで先頭の方がロープ装備されていればガイドさんっぽいなと判断していますが
旅行業法的に微妙な範囲のアマチュアガイドの方もいっぱい居そうですし見た目だけで判断するのは危険です
ちなみにこういった頼んでいないアドバイスを受けた際のおすすめ行動があります。
私は、どこの誰か分からない人からの頼んでいないアドバイスに対しては、礼儀として「安全なところへ降りてから変えます」と答えるようにしています。
ここでいう安全なところとはちょっと3m下のテラスとかではなくて完全下山後の平地を指していて、つまり「当該山行中はよほど明らかな問題点以外は保留します」、という意味ですがこれぐらいの叙述トリックは許されるでしょう
しかし考えてみると外見からの判断はお互いにしています。
私も向こうからやってくる方の目がうつろだったり息が極端にあがっていたりする場合は警戒水準を上げて、普段はしないような世間話をすることもあります。
同様に、私は外装をほぼモンベルで固めているので上級者？の方からすると頼りなく見えてアドバイスしてやろう！ となるのかもしれません
そういえば、前提が揃ってない、体力やスキルが合わない過去経験にばかり頼ったアドバイスを受け続けるのが苦痛で山岳会を辞めた、という話を聞いたことがあります。
今回これを思い出しました。逆に、これら状況判断に基づいた適切なアドバイスを初対面の人に対して出来る人は相当な手練でしょう。めったに居ないと思います
最後におことわりですが、少なくとも本日時点で私がヤマレコやYAMAPでコメントやDMをやり取りさせて頂いたことのある方、一緒に山へ登ったことのある方は皆分別のある方々で大変尊敬しております。この日記内容はそういった尊敬する各位を指差すものではありませんのでご承知おきください
過信にならないように、という心構えと共に芯の通った姿勢、尊敬します。長く安全に楽しんで参りましょう
登りたての若造にご助言という気遣いはわかりつつも、自分の命は自分で守るんだという気で過信せずある程度の根拠を持って行動しようと思っています。自分の命にすれ違った程度の他人は責任持ってくれませんから…。
コメントありがとうございます！ 山中でアドバイスなのか文句なのか、はたまたデカい独り言なのかもはや分からないような言葉を投げかけられると判断に苦しみますよね、、それにしても熊鈴笑 しっかり近隣へ自身の存在注意喚起して参りましょう
去年 @ce.さんから南アルプスの中盛丸山のあたりで聞かせてもらった、とある山域の山頂での出来事も思い出しながらこの日記を書きました。他パーティーの人とのやりとりで山行全体、なんならその山自体への気持ちも下がってしまうというのは悲しいものです。仰るとおり過信につながらぬよう、お互いに安全登山を楽しんで参りましょう
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