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日本百名山に名を連ねる開聞岳
鹿児島を訪れるまでは,その美しい山容,海岸から連なる円錐という表層的な印象でしか開聞岳を感じていなかった。そこにある山を人々がどのように眺めてきたのか知らなかった。開聞岳が何をみてきたのか知らなかった。
鹿児島から開聞岳へと向かう途中,知覧の特攻平和会館に立ち寄った。知らなかった。飛行機乗りになることを憧れ知覧の航空学校に集まってきた志高い若人。戦争に向かう時代の闇へのうねりのなかで,そう長くない時間の中で知覧の地は飛行機乗りを輩出する学び舎から,特攻へと向かう基地へと姿を変えていったのだ。次はだれか。次は自分か。特攻を運命づけられた若人が,自らの精神を律し,家族を思い,母を思う。万感の思いを込めて書き綴られたであろう若人たちの手紙。涙なしには読むことができない。若人は,朝方に知覧を飛び立つことが多かったそうだ。飛行機の翼の片側には燃料,片側には爆薬。特攻機に乗った若人は知覧を飛び立ち,朝日をあびる開聞岳に一礼をして沖縄へと飛び立ったのだと聞いた。
開聞岳はいつもそこにあるのか。
山はどう感じているだろう。山は変わらず全てを見つめ続けているのか。山という大きな存在にとっては人間の営みなど,取るに足らないものなのだろうか。山にとっては,100年にもならない歴史は,ほんの一瞬のことなのだろうか。いや。開聞岳は人々の喜び,人々の悲しみ,人々の多くの思いを大きな大きな懐に受け止め,喜び,悲しみながら,そこにあるのだろう。開聞岳を目の前にして,そう感じた。
山への思いは一人ひとり違うだろう。それもまた,お山の素晴らしさ。
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