発生区の傾斜について
発生区の傾斜30度を超えると雪崩発生のリスクは高くなり、30度超える斜面の流下に入ることは危険が高まるといえる。
ルート取り段階での傾斜の把握する、国土地理院の電子国土web
http://maps.gsi.go.jp/?z=4&ll=35.99989
は水平距離を測る機能がある。高さは等高線で読み取れ、底辺と高さの情報から直角三角形の計算により傾斜は算出できる。(三角形の計算サイトあり)
30度を超える部分がある場合は植生が問題となるが後で述べる。
上部に30度を超え斜面がある沢ルートは基本的に計画段階で登りルート採用すべきではなく、植生や雪の安定度を確認した上で下降ルートとして使うか判断すべきである。
現地を登っている際の傾斜の把握はスキー登山の場合、スキーシール(スキン)で鉛直線上を真直ぐ登れる限界がほぼ30度である。
また、スマホGPSアプリ、GPSStatusで傾斜を測る事ができる。常時測って傾斜を体得することが必要。
植生について
木が混んだ斜面では雪崩が発生しにくいと言われているが、ある気象条件下では発生区の傾斜が40度を超えると雪崩のリスクは高まる。
まずは大雪が降っている中またはその直後、大量の雪が上部に乗ると重量バランスが崩れ、落ちてくる。
砂丘の風下側の砂が崩れを落ちるのと同じメカニズム。
後で述べる面発生表層雪崩の引き金となる場合が多い。
融雪期に新たな雪が積もり、その後の雨、または日射により上部の雪の水分量が増え接地力(旧層との摩擦力)が低下し落ちてくる。
木が混んだ斜面でも40度超え大雪降雪中は要注意です。
木のない斜面では降雪に関係なく雪崩は発生する、しかも発生区の傾斜は30度超えで、一般的に面発生表層雪崩と呼ばれ、規模が大きく、被災する確率が高い雪崩であるが、特徴は積層内に滑り面(弱層など)があること、上層が板状化(スラブ化)していることが条件となる、積層内に滑り面などを確認する弱層テストについては後で述べる。
なお、この種の雪崩の発生は気温上昇と因果関係はない、上層が板状化(スラブ化)しているので木が混んだ斜面では木が落下防止力となる、また大木の場合木からの落雪が滑り面に凹凸を作るため、発生のリスクは極めて低い、傾斜が30度超える斜面のルート取りは木の混んだ部分を選択して登るべきだろう。木の無い斜面はどうするかは後で述べる。
木のない斜面で融雪時期、発生区の傾斜は40度超えで発生するリスクが高い全層雪崩、この種の雪崩は積層と地盤面との境が滑り面となり水が介在する。雨の日、気温上昇した午後2〜3時が発生確率が高い。毎年同じ場所で起こるので被災する確率は低い。
融雪時期は午前中に行動を終えることもリスク回避につながる。
あと、富士山特有のスラッシュ雪崩(半溶雪崩)固い氷板の上にまとまった新雪という条件下で大量の雨でシャーベット状になった雪が流れくだり土石流を伴うこともある雪崩。
主に雨の日に起こるので被災する確率は低い。
なお、富士山は水が浸透する土壌なので全層雪崩が発生する確率は極めて低い。
弱層テスト(ルッチブロックテスト)について
木の無い斜面は滑走の対象となる良い斜面、しかも30〜40度の傾斜は最適だが、面発生表層雪崩も多く発生するエリアとなる。
そこで積層の状態を確認するルッチブロックテスト行うことをお勧めする、ルッチブロックテストは他の弱層テストより結果がわかり易い、時間が掛かるとの理由であまり行われていないが、長尺スノーソーで3方向カットすることにより約10分でセットアップできる。
木の無い斜面で30度超えの斜面に登っている時に遭遇した場合、尾根の風下側の側面に入った所で弱層テストを行う。テスト場所の選定については後で述べる。
テスト結果が悪い場合は撤退、木が混んだ斜面を滑る(降る)
(動画をご覧ください)
スキーによるルッチブロックテストやり方の動画
スノーシューによるルッチブロックテストやり方の動画
長尺スノーソーの作り方の動画
弱層テスト(ルッチブロックテスト)の弱点について
滑走する斜面で行うのがベストだがリスクが伴う場合、同じ方向の斜面で滑走斜面とよく似た状況の場所で登っている時に行う。テスト斜面の傾斜は35度超えが望ましい。
傾斜が急なほど敏感に反応する。
スマホGPSアプリ、GPSStatusで傾斜を測ることが重要だろう。
このことが結果にでた動画(2015.2.11)
弱層テスト場所の選定で、滑り面にキズ(凹凸)が過去にある場合、安定しているとの結果がでる問題点がある。
具体的には過去に滑走痕(シュプール)、登りトレース、雪庇の直下、大木からの落雪、風による雪面の凹凸がある場合、安定しているとの結果がでる。
複数回することが望ましい、人のこない、大木などの下でない、また風による凹凸ができないところ(風下側稜線から少し下がった所)を選ぶ。
滑走する斜面ですることがベストだろう。
過去に滑走痕(シュプール)の上でのテスト動画(2015.2.11の隣で2015.2.17に実施
まとめ
傾斜30度以下斜面の尾根筋を登り降りするルートは雪崩のリスクは極めて低い。
発生区の傾斜30度以上の場合、流下は傾斜が緩くても雪崩のリスクはある。
発生区の傾斜40度超えの斜面の流下あるルートは雪崩のリスクが高い。
降雪時期の大雪の最中、直後以外は木の混んだ斜面は雪崩のリスクは低い。
降雪時期の傾斜30度超えの木の無い斜面では弱層テストによる雪の安定度を確認する必要がある。
テスト場所の選定が重要で滑り面のキズ(凹凸)のリスク回避のため複数回することが望ましい。滑走する斜面ですることがベストだろう。
融雪時期に積層が雨および気温上昇により全層ザラメ化すれば積層内の滑り面による面発生表層雪崩はなくなる。
ザラメ化後にまとまった新雪とその後の気温上などによる新雪層の水分率の増加による雪崩が発生区の傾斜40度超えの斜面で発生率が高まる。
融雪時期は雨と気温上昇に着目する必要がある。
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