先日、ある釣りの記録を読んで遠い遠い昔の記憶が突如よみがえった。
「インデ鯉」、ご存じだろうか？
どれくらいの方がご存知なのか、さっぱり予想もつかない。
私の釣り経験と言えば、小学生の頃、近くのため池で興じた程度だ。回りは田んぼと畑だらけで、牛の鳴き声も聞こえてくるようなのどかな時代だった。
だが時代は急激に変わろうとしていた。家庭に電話が普及し始め、テレビはカラー放送が始まり、人類は月に立った。サンヨーズバコンが、チャンネルを遠隔操作で動かすのを見たとき、未来がやって来たと思ったものだ(笑)
宅地開発が急ピッチで進められ、高校に行く頃には、たくさんあったため池も田んぼも畑も雑木林もことごとく消え、マンションがとって変わっていた。カエルの鳴き声もいつしか消え、カブトムシも飛んでこなくなった。雨で増水した溝にフナが流れることもなくなった。
かつては想像もつかない風景が次々と上書きされ、面影はどんどん薄れていった。
あの頃、ため池で釣れる目玉は、なんと言ってもフナだ。もちろん、私の腕前ではめったに釣ることができない「幻の魚」で、大抵は「インデ鯉」だった。
長時間糸を垂らしていても、いつの間にか食い逃げされていることがほとんどで、やがて池の中の木や岩、あるいはゴミなどに釣り針が引っ掛かって取れなくなったりする。そうすると友達から「いんでこい(往んで来い)！」と言われたものだ。
大阪弁で「帰れ」という意味だ(笑)
但し、帰ったらまた戻ってくるんやぞ、と言う奇妙な優しさも込められていたと思うが。
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