だが四十を過ぎると、どうしたって肉体の燃焼力は低下し、何か行動にとりかかるとしても、自分の尻に鞭を打ち、叱咤激励して自らを鼓舞しなければ実行できない。生命体としての総合的なパワー、すなわち生命力が下降し、なんか面倒くさいなぁと腰が重くなりはじめるわけだ。それが気力の低下とよばれるものである。
〜でも現実としての肉体は衰えはじめている。本人は衰えを認めなくないし、まだ十年前と同じ体力を保持していると思っている、というかそう信じたい。だから、まだまだ行ける。行けるはずだ、おれは・・・と過去の幻影にしがみつき、そのスケールの大きな冒険を実行することになる。その結果、下降線をたどりはじめた肉体が、拡大するおのれの世界に追いつかないという現実が待っている。そして遭難する。
『狩りと漂白』角幡唯介著
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する