『気配を察した金毛は真面に沢造と向き合い、背中の毛を逆立てて突進した。約十メートルまで接近したとき、沢造が「ウワーッ」と大声で叫んだ。その声ではっと金毛は立ち止まり、目前に迫った沢造に襲いかかるべく前足を振り上げて立ち上がった。ウォーッと大きく吼えて、一っ跳びしようとした一瞬、沢造の腰嬌にし銃から一条の火篝が走った。〜この撃ち方は、初めから心臓を狙うのではなく、クマが前足を振り上げた瞬間に下腹の臍の辺りを狙って第一弾を撃ち込み、腰の骨を砕いて後ろ足を絶たなくさせることに主眼を置いたものだ、と沢造は言っていた。つまり、前足だけで暴れる結果、熊の胆(胆嚢)が肥大し、それの分だけ高く売れるのだ、と。』
『羆吼ゆる山』(今野保:著)ヤマケイ文庫刊
https://www.yamakei-online.com/yama-ya/detail.php?id=3609
https://www.yamakei.co.jp/products/2824050030.html
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する