山の中に朝の光が差し込み、小鳥たちもさえずりはじめた。そんな山の中でなんだか僕は疎外感を感じていた。自分だけが自然の中に侵入した異物のように思えた。
「ああこんなことをやってちゃダメなんかもな・・・」
僕は子供のころから動物が好きだった。動物の仲間になりたかった。山の中に分け入って、自分が食うための獲物を狩ることに憧れたのも、それが理由だった。はじめてとったシカの肉を友人たちと分け合って食べたとき、彼らが「うまいうまい」といって喜んでくれたことが何よりうれしかった。自分や仲間たちの血肉となってくれる獲物を、知恵を絞り自分の力で獲ってこれたことは、自分が動物であることを実感できた瞬間だった。
それが今は、誰だか知らない他人が食べるためのシカ肉を得るためにたくさんのシカを獲っている。そして、その肉が売り物になるかどうかばかりを気にしている。自然界の肉食動物だって家族や仲間が食べる分以上の獲物をとることはない。僕は知らないうちに、山の動物ではなくなってしまっていたようだ。
「もうやめよう。これは自分がやりたかった猟じゃない」
by千松信也 『10歳から学ぶ狩猟の世界』
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