今年の芥川賞受賞作「バリ山行」を読んだ。最近読むのは専ら時代小説で、この前芥川賞を読んだのはいつのことか思い出せないが、誕生日に娘がプレゼントしてくれた。
舞台は六甲山で最難関ともいわれる西山谷のバリルート。誰もいない山中を行く高揚感もつかの間、まもなく藪漕ぎにもがいたり急峻な崖で滑落しそうになったりで心身ともに疲弊していく主人公の姿が、緻密な情景描写も相俟ってリアルに伝わってきて、ひと晩で一気に読み終えた。おそらく、西宮在住の筆者は実際に何度かこのルートを歩いたのだろう。
バリルートは未経験、命懸けの思いをしたこともないが、丹沢や奥多摩を歩き始めるようになってまもなく、登山地図では破線になっているコースを、道迷いの不安や心細さ、焦りなどを抱えながら独り歩いた記憶がよみがえってきた。
六甲山のある阪神間は、20代の終わりから30代にかけて住んだ街。連れ合いの実家も甲山の麓にあるが、そのころは全く山に興味がなかった。六甲山の思い出といえば、牧場でアイスクリームを食べたことぐらいか。つくづく惜しいことをしたと今になって思う。
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