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「え！」
2月初めのある日、3月に大学卒業を控えた娘が、突然宣言した。
夕食の席で告げられた私は一度態勢を整えてから聞き直した。
要するに
「3月初旬、卒業記念に家から大学のある堺市内まで走っていく」
ということだ。
コロナ禍の中、卒業旅行にも行けず、
彼女としては4年間の大学生活の一つの区切りとしたいようだ。
我が家は奈良県の真ん中辺りにあり、堺市内までは30�卍�度ある
フルマラソンを何度か走っている娘には距離は問題ないようだ。
「で、教えてほしい」
「何？」
「奈良からどうやって大阪へ越えるか」
平地のルート設定はGoogleで調べるが、山間部は道の様子もわかりにくいので
日頃、近辺の山をうろうろしている父親に聞いてみる気になったようだ
少し考えて、2つほど提案した
�� 国道166号線に沿って葛城市當麻町から竹内峠を経て太子町へ抜けるルート
：最短距離で道も舗装道。
→ビビリな娘は車がビュンビュン走っている車道を走るのが嫌で却下。
�� 當麻寺から祐泉寺を経て二上山馬の背まで登り、ろくわたりの道で太子町に下るルート
：道は山道でそれなりに険しいが車は通らない。
娘は�△剖縮�を示したが、私もろくわたりの道は登ったことがなく
提案した責任もあり2月11日一人で下見に行ってみた。
道の駅近つ飛鳥の里太子から、ネット動画を参考にして
ろくわたりの道を通って馬の背まで行ってみた。
結構、急な階段の上り下りもあり、麓では路肩が崩れている箇所もある。
ランニングシューズで行くのはちょっと大変かもしれない。
太子町側への出口もわかりにくく、ランのコースとしては推奨できそうにない。
馬の背から万葉の森に下り、竹内峠の登山口から道の駅太子へ国道に沿って戻った。
登山口から道の駅まではほとんどの区間で車道と歩道がガードレールで
区切られており、思っていたより安全に走行できそうだった。
偵察した情報をもとに娘と相談した。
当麻寺から祐泉寺を抜けて岩屋峠を経由し竹内峠登山口へ下る。
そこから道の駅太子まで国道沿いの歩道を通り太子町を突き抜けるコースとした。
山間部のコースが定まったので、2月19日に実際に2人で試走してみた。
といっても私は娘のランの速度に到底ついていけないので
娘は家から走り私は車で追いかけ、当麻寺駅付近で落ち合うことにした。
そこから予定のコースを二人で歩いてみた。
「何とかいけるかな」
娘は山道が苦手である。以前、友達に誘われてトレラン大会に初参加したが
木の根っこに躓いて転倒し、結局1時間弱でリタイアした経験がある。
だが、山岳区間？も歩けば問題なく行けそうだった。
太子町まで下れば羽曳野市、堺市と市街地になるので何とかなるだろう。
全コースを見てみると、古代の飛鳥京、藤原京から難波宮を結ぶ横大路
(中世の伊勢街道)とほぼ重なる。図らずも歴史の道を辿るコースとなった。
そして、3月3日、一人ひな祭りランが決行された。
私は仕事なので遠くで見守るのみ。
朝の通勤ラッシュが終わる頃にスタート。
前日は大雨だったが山道も特に問題なく通れたようだ。
途中(あれほど確認したのに)、祐泉寺で道を間違えるアクシデントがあったが
50m進んでから気づいてコースに復帰できた。
11時頃に「大阪に入った」とメールが入った。
そして、昼過ぎには無事大学付近に到着したと。
一人なので気楽に走っていた様子で、聖徳太子廟にお参りし
竹内街道の古い町並みを走り抜け、羽曳野・堺の古墳群を横目に走りぬいた。
普段何気なく通り過ぎている地域の知らなかった風景を見て
いろいろ感じるところがあったようだ。
帰りはいつも通りの電車に乗ったが
「あっという間に最寄り駅に着いてしまって悲しかった」とのこと。
ともあれ娘のささやかなチャレンジが無事に終わってほっとした。
彼女にとってはほんの通過点の1ページに過ぎないのだろうが
そこにわずかでも関われたことは幸運で、幸福であった。
到着した時にメールで「無事完走おめでとう！」と送り
娘から「ありがとう」と返ってきたが
私こそ「ありがとう」だった。
4月からは就職して関東へ行く娘の健闘を願って
長々と日記にしたためてしまいました。
おめでとうございます！
淡々と描かれていますが、巣立って行かれるお嬢さんのために下見までなさるお父さんの愛情、共に頑張る父娘の姿が素晴らしいと思いました。
お嬢さんの行く末に幸あらんことを！！
miki-taniさん
初めまして、morigieと申します。温かいコメントをありがとうございます。
就職で遠くに行ってしまう前に、娘のチャレンジに関われた喜びを形にしたくて
日記にしてみました。
多くのヤマレコの皆さんに気持ちを共有していただいて本当にHappyです。
（まあ、頑張ったのは娘だけですが）
娘へのエールありがとうございます！
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