知床遊覧船の痛ましい事故について連日報道されています。
この事故の報道に初めて接した時、私は2009年のトムラウシ山遭難事故を思い出しました。
ヤマレコを利用する諸賢の中にも、同じことを連想した方もいらっしゃったかと思います。
装備の問題、ツアーという性質、運営企業の経営方針、いろいろと共通する問題がありますが、ここでは置いておきまして、私が着目するのは、気象情報です。
2つの事故に共通する点として、気象に対する見通しの甘さがありました。
高山や海上という、気象の影響を強く受ける環境に出かける以上、気象には特に敏感であるべきです。
近年の気象情報の発達は目覚ましく、その日の天気はかなりの確度で当たるわけですから、これらに一通り目を通すのは当然のことと思われます。
もっとも、山岳気象や海上気象は、陸上の(平地の)気象とは違いますから、それ専用の前提知識が必要となります。参照すべき情報も、都市部向けの天気予報とは別のものになってきます。
また、90%の確率で静穏な天気になると予想されたとしても、残る10%は大荒れの可能性があれば、判断は全く変わってくるでしょうから、想定されるリスク(特に低頻度高リスク)を読み取る技術も必要になってきます。
とはいえ、気象情報の正しい理解は、とても安上がりで効果的な対策と言えるでしょう。
登山装備や船舶装備を整えるにはそれなりにお金がかかります。技術の体得にもそれなりの時間と苦労とお金がかかります(山や海に行くなら絶対に疎かにしないでほしいとは思いますが)。
それらに比べると、情報の取得と理解というのは格段に安上がりなわけですから、せめて情報を有効活用してほしいと思うわけです。
そういえばトムラウシ山のときは、「低体温症」(あるいは疲労凍死)という”聞き慣れない”言葉が注目され、さかんに報道されました。
夏でも人間は簡単に体温が低下し動けなくなる、時には凍死することは、登山をしない私も知っていました。ですので登山者にもあまり認知されていないという報道に衝撃を覚えたものです。
断熱性と耐水性に優れた装備を身に着け、十分なカロリーを摂取していれば、低体温症はかなりの割合で防げるというのは正論ですが、ちょっとした情報・知識の有無が生死を分けることだってあるのではないか、そう思うことがあります。
気象情報をはじめ、これだけ多くの良質な情報に簡単にアクセスできる時代になったのですから、情報でリスクに備え身を守る、そういう意識がもっと根付いていくことが望まれます。
自分も知床遊覧船の遭難事故とトムラウシの遭難事故を比べてしまいました。
どちらもツアーで不特定多数の人を決して安全な場所へ連れて行くものではなく、責任者(船長、ガイド)として注意や責任が希薄だったと思います。トムラウシ事故については本を何冊か読みましたが、ツアー会社もデタラメで山行ガイド3名も登山当日初めて顔合わせをしたとのこと。また参加者の装備もマチマチで簡単なウインドブレーカー程度の人も参加させていたとありました。今回の知床遊覧船事故は特殊な装備も必要ではなく。予約さえすれば普段着で誰でも乗れる観光船。海水温2〜3度の海に投げ出されたらトムラウシのように低体温症云々というまもなく生命が危ない状態になったはずでしょう。亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。合掌。
コメントをいただきありがとうございます。
私も当時いくつか報告や論評を読みましたが、今回も本当に似ている部分があると思います。山と海で違いますが、教訓が生かされなかったかと、とても残念に思いました。
今後、知床の事故とトムラウシの事故に共通する構造的な問題まで解明が進むことを期待したいと思います。そして、リスクを正しく理解し十分に備えたうえで、雄大で美しい山や海を訪れる人が増えることを願っています。
通信に関しても同様です。アンテナやAU携帯で船検が取れていることばかりを報道してます。別の船長が13時にどうしてどのようにして連絡をとったのか全く報道されていません。メディアは10時から13時までに関してほとんど報道していません。本当のところはこれらの情報がなければ何か言えるとは思えません。
結局は書籍もメディアも重視しているのは数字だけです。
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