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“最恐”のスズメバチ!最強のヒミツ - サイエンスZERO(30分)
https://www.nhk.jp/p/zero/ts/XK5VKV7V98/episode/te/EYMN14W5Y4/
解説
玉川大学 学術研究所 小野正人 先生
大阪市立自然史博物館 松本吏樹郎 先生
九州大学 大学院 農学研究所 上野高敏 先生
秋のスズメバチは、巣に新女王バチが誕生するため、巣を守るためにスズメバチの攻撃性が増す
🔶スズメバチの持久力
毎日、約100km飛ぶ
エサを獲るために飛行する距離 2km/回。1日50回程度繰り返す
※ スズメバチが飛ぶ速さを検索すると、一般的に20~30km/H (≒約417m/min≒約7m/s) とのこと。早くて持久力もあるようです
持久力の源は、巣の中にいる幼虫が出す唾液。これを飲んで栄養を摂取している(=唾液を吸う。栄養交換と呼ばれる生態)
唾液の成分には、アミノ酸が17種類含まれている(メチオニン、グリシン、ロイシン、ヒスチジン、トレオニン、イソロイシン、アルギニン、セリン、アスパラギン酸、アラニン、フェニルアラニン、リジン、グルタミン、バリン、チロシン、プロリン、トリプトファン)
これらのアミノ酸には脂肪を分解、燃焼する効果があり、スズメバチの持久力を生み出している
「成虫は狩りで獲った獲物を小さく噛み砕き、巣にいる幼虫に与える→幼虫は栄養たっぷりの唾液(=栄養ドリンク)をお返しし、成虫は狩りに出かける栄養をもらう」というサイクル
🔶スズメバチの体の構造
スズメバチの消化器官は腹部にあるが、口から飲み込んだときにウエストが細い(幅?1mmくらい)ため、固形物が通らず、液体しか利用できない体になっている
成虫にとっての幼虫は必要不可欠。幼虫にとっても成虫は必要不可欠
🔶針の進化
現在:オオスズメバチの針(毒針)の長さ:6mm
スズメバチは狩りでは顎(あご)を使い、毒針は使わない。巣を守るために毒針を使う
ハチが出現した頃、毒針は持っていなかった
具体的には、
3億年前:ハバチ(葉バチ、ハチの祖先と考えられている)。腹部にある針に見えるものは、産卵管。薄い葉の間に卵を産みつけるために適したノコギリ状(片側)の管だった
2億5000万年前:ヒメバチ。植物でなく虫(の体内)に産卵する(寄生する)ようになり、産卵管の形は、ノコギリ状(片側)の管は同様だが、先端が鋭く尖って突き刺しやすいようになった。さらに卵を産みつけやすくするために、麻酔成分を同時に注入できるようになった
5000万年前:スズメバチ。巣の中に卵を産み、集団で育てる(社会性を持つ)ようになり、産卵のための鋭い針は必要なくなった。針の形状は両側のノコギリ状になり、高速に片側ずつ動かして皮膚を切り裂くことができるようになった。麻酔成分は強力な毒になった。これは、巣が敵に襲われた時に巣と仲間(幼虫や女王バチ)を守る必要があり、巣を襲う敵は野生動物やヒトだったので、産卵管が巣と仲間を守るための道具へと変化し、皮膚を切り裂いて効果的に毒を注入できるようになった(防衛能力を獲得した)と考えられている
🔹刺されないためには、
まずは、巣に近づかないことが重要
スズメバチの攻撃=防御する(巣と仲間を守る)ためだから
🔹巣があると知らずにうっかり近づいてしまった場合は?
いきなり刺してくることは殆どない
巣に近づくと1,2匹の門番のハチが身の回りをまとわりつくようにホバリングする。その時に顎を合わせるような音(カチカチという音)を出す。これが聞こえたら近くに巣があるという警告の合図なので、落ち着いてその場から引き返す(離れる)
🔹もし刺されてしまったら?
毒液の匂いは仲間を呼ぶ役割もある(敵に印をつける)。よって、刺されてしまうと、たくさんのハチが集まってくることがあるので、まず遠くに離れる
※100mくらい離れると追ってこないようです
そして、刺されたところが痛いだけでなく、蕁麻疹、息苦しい、吐き気、腹痛などの全身症状が現れたら救急車を呼ぶ
🔶ミツバチがスズメバチを襲う
ミツバチの巣に近づいた1匹のスズメバチを多数のミツバチが囲み、温度を上昇させて熱で殺す(熱殺蜂球。中の温度は50℃近くになる)
スズメバチの致死温度が45~46℃。ミツバチは 48℃くらい
🔶近年の変化
熱殺蜂球が効かないスズメバチが見られるようになった(ツマアカスズメバチ)
ツマアカスズメバチは羽ばたき能力が高い
羽ばたきの回転数(110回/min)がオオスズメバチ(70回/min)より高く、俊敏に動くことができる。また、長い時間(30分近く)同じ場所でホバリング(滞空飛行)することができる。他のスズメバチはそこまでの体力はない
この高い身体能力により、巣の出入口にいる多くのミツバチから威嚇されながら、一定の距離を保ちつつ長い時間ホバリングして、巣に戻ってくるミツバチを空中で捕らえることができる
※ 熱殺蜂球は地上での攻撃だが、ツマアカスズメバチは空中で距離を保ちつつホバリングするので熱殺蜂球が効かない、と理解しました。しかも、効かないだけでなく、巣に戻ってくる仲間を捕食されてしまう
ツマアカスズメバチはもともと中国や東南アジアに生息していたが、物流に紛れるなど人の手を介して2012年に日本で初めて観測された
ツマアカスズメバチの故郷は猛禽類などのスズメバチの巣を狙う鳥などがいて敵だらけだった
その環境の中でツマアカスズメバチは体は大きくならず、高い身体能力を獲得してオオスズメバチとは異なる獲物をターゲットにすることで生き残る道を選んだ種であると考えられている
日本では養蜂家への被害や生態系に悪影響を及ぼす恐れがあることから、2015年に特定外来生物に指定され駆除の対象となっている(ツマアカスズメバチ)
※ 国内では長崎県対馬市でのみ定着が確認されていて、福岡県内では、令和4年11月現在、4市町で確認されているようです
https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/tumaakasuzumebati.html
2024/12/20追記
2024/12/2 の環境省の発表によれば、「令和6年秋季調査の結果、本種は確認されず、福岡県北部における生息状況調査と初期防除の実施により、本種の定着を阻止できたものと考えられます。」とありました
https://kyushu.env.go.jp/press_00065.html
🔶さいごに
生き物に罪はない。いつも通りにエサを探して休憩をとって交尾相手を見つけて子孫を残そうとしているだけ(上野先生)
緑の森が保たれている理由を考えた時、植物を食べる昆虫を捕食するスズメバチの存在を忘れることはできない(小野先生)
🔶写真 1,2
今年の7月に水上(群馬県)で撮影したものです。
体育館のような施設の軒下にあって、すごく大きくて遠目に「まさかね…」と思いましたがまさかでした。
🔶写真 3
今年の6月に多摩森林科学園で撮影したムササビです。
巣箱の出入口の端に両手を添えて身を乗り出していました。とてもかわいかったです。タイトルと全然関係ない写真なのですが癒し成分としてオマケに😊
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