10月5日(日)に,御来光が見たくて,今シーズン唯一登っていない比羅夫コースから羊蹄山に登った。
昨年,比羅夫コースから登った時は,山頂までだいたい4時間だった。
その時は,一緒に行った先輩を9合目辺りでかなりの時間待った記憶があったから,今回はそれよりも早く登れるだろうと思った。
でも,ヘッデンの光だけを頼りに登るわけだし,時期が時期で登山道が凍っていたり,雪が積もっていることも考えられたから,滑って怪我などしないようにゆっくり登ることにして,山頂までは4時間半程度かかると思った。
それで,日の出は5時過ぎ頃だと決めつけて(正しくは5時30分を過ぎる),「4時半山頂着,5時過ぎ御来光」の予定で,午前0時頃,登山口を出発した。
正直に言うと,深夜の森の中を歩くのは怖かった。
この世のものではないものが見えそうな気がした。
30過ぎのいい年こいた大人のはずなのに,おばけが怖くて,歌を歌いながら登った。
そしたら,3合目に着く頃には,なんだか疲れた。
だから,その後は黙って登った。
付けていた熊鈴の音が気を紛らわしてくれて,恐怖心はなくなった。
いつも思うことだけど,「羊蹄山には熊がいない」って言うが,本当にそうなのか?
たしかに,羊蹄山には川などの水場がないため,熊は暮らせないのかもしれない。
でも,半月湖があるじゃないか。
湖がある以上,羊蹄山の麓に熊がいてもおかしくないんじゃないかと思う。
喜茂別の登山口には熊の目撃情報があるという張り紙もされている。
自分は,基本的に,山には熊がいるものだと思っている。
「ここの山では熊を見た。あそこの山では熊を見ない。」
当然,熊のいない山だってあるだろう。
でも,それをどうやって確かめるのか?
特定の山で熊を「見ない」ということは,ただ単に人間が熊を見ていないだけで,その山に熊が「いない」こととイコールだとは思わない。
音を発することによって,熊に自分の存在を伝えることが,熊と出会わないようにするための最良の方法だと思っている。
だから,この日も熊鈴を付けて登った。
記憶は定かではないが,3合目を過ぎた辺りからだったと思うが,時折,倶知安の街の夜景が見えた。
きれいだった。
休憩も取らずに黙々と登って8号目くらいからだったか,風の音が聞こえるようになった。
8合目からは,登山道の岩が凍っていたし,霜柱も目立つようになった。
9合目の手前からはガスがかかり始めた。
9合目を過ぎると,かなりの強風で,地面は霜で白かった。
おまけにガスが濃くて,ヘッデンの光がガスに反射して,周りが真っ白にしか見えなくなってきた。
ガスった夜をヘッデンを付けて歩くのは初めてじゃなかったけど,もはや足元しか見えないような状況で,しかも羊蹄のペンキは白くて,岩も凍って白いんだかペンキで白いんだか分からない状況になった。
ガスはとれる気配もなく,風は強くとても寒い。
なにより,想定外だったのはこの時点でまだ3時前だったこと。
山頂まではあと少しで,山頂まで行けたとしても日の出まで2時間くらいある…(あとで知ったけど,日の出までは2時間30分くらいある)。
防寒着は,薄手と厚手のフリースの2枚を持っていたけど,このガスと強風の中,やることもなく,2時間をじっとして過ごすのはあまりにも辛く思われた。
そもそも,御来光が見たくて登って来たのに,今の状況では御来光など見れそうになかったし,そもそも,自分の足元しか見えないような状況で,リスクを冒してまで山頂に行く必要があるのかなどと考えると,僕はあっさりと下山することを決めた。
で,下山を開始してすぐ,ロストした。
あれ〜?と思いながら,少しちょろちょろすると,すぐにどっちから歩いてきたのかすら分からなくなった…。
ちょろついてる最中に思い出したのは,本で読んだ「自分のいる場所がよく分からなくて付近を歩きまわっているうちに滑落とかして遭難する」パターン。
実際,自分が今いる場所が分かんないんだから,自分にもそんな可能性があるよなと思った。
結局,GPSアプリがあったからよかったものの,僕は,思っていた方向とは全く別の母釜の底の方に向かって歩いていた。
ちょろちょろしてる時は,あと2時間もすれば日が出て,周りの景色が見えるようになるから大丈夫だとは思っていたが,GPSで現在地を確認した時,少しゾッとした。
羊蹄山は独立峰だからどこに下ろうと最終的には町にたどり着くからいいようなものの,これが大雪や日高だとそうはいかない。
本で読んで知ってはいたものの,視界が悪いとこんなに簡単に方向感覚を失うんだと思った。
いい勉強になった。
それでも,i-tomoさんのレコを拝見すると,山頂まで行っていれば,寒い思いはしただろうけど,御来光も見れたかなと素直に思った。
引き返したのは失敗だったかなとも思った(未だにちょっとだけそんな気持ちもある。)
でも,気持ちの中の大半は,山頂に行かなくて正解だったと思っている。
山頂付近は岩場だから,自分の足元しか見えない状況で,それこそ滑ったりしたら怪我をするのは間違いない。
「次の機会もあるさ。」
そう思うことにして,今シーズンの御来光目当ての羊蹄山ナイトハイクは諦めることにした。
そもそも,ナイトハイクするなら,もっと暖かい時期の方が楽しいと思う。
昨年,山で話をさせてもらった(還暦は過ぎている)おじさんの言ったことは忘れられない。
「山は逃げないっていうけど,そんなことはなくて,逃げられることだってあるんだよ。いつか行こう,いつか行こうと思ってるうちに,自分が年を取ったりいろんなことがあって,結局行けなくなる山だってあるんだ。だから,行きたいと思ったらまず行ってみる。行ってみてムリだと思えば帰ってくればいい。行きもしないで諦めると,後で必ず後悔するよ。行ってみて後悔した山はないけど,行かなくて後悔した山はたくさんある。」
行ってみてムリだと思えば潔く撤退する。
登山者としては未熟な自分だけど,いつまでも経っても慎重で臆病な登山者でありたいと思う。
おはようございます
夜間登山で恐怖心を克服する訓練は、わたしは歩荷することだと思ってます。
水を5〜10Lも歩荷すると汗だくで妄想もわきませんよ(この訓練は夏場がいいですね)
ふふふ・・ヘロヘロになれば水は捨てればいいですから
夜間は怖くは無いのですが、本州に居るわたしは、ヒグマの生息する北海道の山が恐ろしく思います。
北海道のナイトハイク・・とてもじゃないですが・・
遠慮しますね(汗
でわでわ
uedayasujiさん,こんにちわ。
歩荷で恐怖心を克服ですか。
確かに10リットルもの水を背負えば,暗闇を怖がってる余裕なんてないでしょうね。
ヒグマはいますが,よほどラッキー(?)じゃないと出会うことはありませんよ。
僕は,これまで1度も見たことがありません。
至近距離では出会いたくありませんが,遠くからなら見てみたい気持ちもあります
STHさん、こんにちは!
山は逃げるかぁ。確かにそう思う時もあります。
今の自分じゃなきゃ登れない山(体力、時間、技術などなど)を選んで登っているようなところもあります。
行かないで後悔する気持ちももちろんわかります。
でも僕の場合は、逃げられ続けたらたぶんその山とは縁がなかったんだなって思っちゃうかなぁ。百名山ハンターでもないし、その山に登るのが義務みたいなのは嫌なので。
なので僕の場合、行ってみてムリだと思えば撤退するどころか、ザック背負って靴履いて玄関から出る時に「なんか今日気分のらないな」ってな時は、即時撤退 そのまま朝から
とりあえず今回はSTHさんが無事下山されたことが本当によかったと思います。焦る必要は全くなし。だって僕がSTHさんの年齢の時はまだ山なんて全く歩いてなかったもん。なのでSTHさんにはまだまだ行くチャンスが嫌になるくらい転がってますヨ!
p.s.
yahさんとshizuさんのトムラウシのレコ読んだんですけど、そちらはもう雪景色なんですね。
STHさんが充電期間に入っちゃうのも間近かと思うと、ちょい寂しいなぁ。この前のレコで冬は何もすることがないのでつまらないって書いてましたが、スキーとかはやらないんですか?
zawadaさん,こんにちわ。
百名山は,僕も興味がありません(笑)
だから,百名山には関係なく,行ってみたいと思う山に行っています。
玄関出る時から気分が乗らないのであれば,zawadaさんの言われるように,朝から飲んだ方が絶対たのしいはずっ!
明るいうちから飲む は,夜の2倍はおいしく感じますよね(笑)
雪景色といっても,雪が積もっているのは大雪くらいなんじゃないでしょうか?
ただ,ほかの山が白くなるのももうすぐだとは思いますが
スキーは,行っても1シーズンに1,2回くらいですね。
一時,すごいスキーにはまって毎週末行っていたこともありましたが,1度行かなくなると,行くのが億劫になっちゃうんですよね。
冬山も行ってみたいとは思うんですが,いかんせん1人なんでなかなか踏み出すことができません。
冬の間は,まじめにジムに通って,体力,脚力ともに鍛えたいと思っています。
こんばんはSTHさん(^^)。
なかなか考えさられた内容の日記でした。
自分は登山以外の趣味で支笏湖や海で夜釣りしているので、今は夜間の行動に関して何の抵抗もありませんが、昔の怖がっていた自分が懐かしいです。昔、調べましたが人間は本能的に闇を怖がるように設定されているようです。ですが、本能がアテにならかったため故に知恵を備えなければならなかった生物でもあります。自分の兄や従兄弟に大学院の理数系の人間が居ますが彼らに言わせると「理学や数学で表現できない事は、この世の中には絶対に起こりえない。」ようです(いまだ解明されていない現象もありますが‥。)。この発言を聞いてから闇が克服できるようになりました(笑)。もしかしたら「幽霊」とかは自分の心の中だけに存在しているだけかもしれませんネ‥(^^)。あとヒグマですが、羊蹄山には「居る」と思った方が妥当だと思います。2年前に2か月間倶知安に住んでましたが、地元の方も「羊蹄山近辺にヒグマは居る」という認識でした。あと水場については2年前に羊蹄山を3分の1周を歩きましたが(長距離過ぎて1周は断念)、半月湖だけでなく羊蹄山の山麓に無数に湧水が存在し、ヒグマが水には困らないくらいの水場が存在します。ある意味生息に適している環境かもしれません。あと学者さんに言わせると北海道はヒグマの居ない場所の方が少ないので、どんな山に登るにしろヒグマへの備えがあった方が良いと思います。ゆえに自分は、どの山行でも「熊鈴+熊撃退スプレー+軍用鉈」の重武装で登っていたりします。
morethanさん,こんにちわ。
「理学や数学で表現できない事は、この世の中には絶対に起こりえない。」とは,いかにも頭のいい方のご発言ですね(笑)
頭が悪いからこそ,いろいろと余計なことを考えてしまって,恐怖心がわいてくるんでしょうか。
ヒグマについてはやっぱりそうですよね〜。
登山道で糞とか見たことはありませんが,なんで「ヒグマはいない」って言われているんでしょうかね?
不思議です…。
スプレーだけでなく,鉈も携行されてるんですね。
よく鉈は熊撃退に有効だって言われてるのは知っています。
ちょっと前に,道新の夕刊で,ヒグマ研究家の方のコラムみたいのが連載されていましたが,その方も鉈の携行を推奨されていました。
ヒグマに出会わないようにすることが大切なのは当たり前ですが,ヒグマに出会ってしまった時のための対策を講じることも大切ですね。
最近のレコを見ていると,トントン拍子でレベルアップしているので,少し急ぎ過ぎてやしないかと心配していたところです。
とくに,「幌尻岳山頂直下テン場泊」あたりになると,一般登山者にすぎない自分の目から見たら,およそ考えられないと思うようなレコでした。
今回も,詳しい装備は分かりませんが,いつ積雪や吹雪があってもおかしくない時期で,しかも夜間なのに,薄手と厚手のフリース2枚というのは,やや不安を感じてしまいます。
自分が心配性でびびりなせいだけかもしれませんが,もし遭難していたら,やはり非難されても仕方ないと思います。
体力があって健脚だからこそできるのでしょうが,全てが上手くいっていると,なかなか自分自身の限界にも気付かないものです。
山を始めてから2,3年くらい経つと,ちょうど油断が出てくる時期でもあります。
初めての場所よりも,前にも行ったことがある場所の方が道迷いをする。
それは,思いこみと油断があるからです。
自分もそういった経験があります。
危険な目に遭って初めて気付くこともあるので,そういった意味では良い経験だったのかもしれません。
かくいう自分も,この日記を見て,自分自身の山行計画を立てる上での戒めにさせてもらいました。
ただ,それも無事に下山できたからこそ言えることだと思います。
とにかく無事でなによりでした。
これを教訓として,是非とも愛別岳登頂を目指してください。
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する