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更新日:2014年09月11日 訪問者数:25101
ジャンル共通 技術・知識
トムラウシ山遭難はなぜ起こったか 低体温症と事故の教訓 No.1
ベス
トムラウシ山遭難はなぜ起こったか
 低体温症と事故の教訓
 羽根田 治 他三名著 −1− 

◆遭難の経過

トムラウシ山遭難が起きたのは、2009年7月13〜17日のツアーで起きた。
ガイド3名(途中から別行動のポーター1人)+15名(55〜69才。長期の登山経験のない人もいたが、経験豊富な人が多かった。ほとんど初対面)
4泊のうち、避難小屋が2泊。
報道では、夏場の軽装だっと伝えられたが、セパレートの雨具、ダウン、ツェルト、アイゼン等装備はしっかりしていた。
軽装としたのは、装備として持ってはいたが、着る機会を逃してきれなかった人がいたということだった。

2日目は、前泊の旅館を出、2泊目の避難小屋まで順調に進む。

3日目は、朝から雨。強風が吹いたり、時折雨が強く降ったりした。
避難小屋に到着時間は、2〜3時(はっきりした記録なし)。行動時間は、約9時間ほど。

雨具の手入れの仕方(防水スプレー)、スパッツ(登山靴をしっかり覆うタイプ)等で、濡れに差が出る。
また、小屋の場所取りで、隙間から雨が入り込んだり、雨に濡れた衣服のせいで濡れ、睡眠がとれない人もでる。
(濡れた衣服は、ほとんど乾かない)

4日目。5:30出発、朝から強い風と雨(夜中よりは弱まる)。1日目の天気予報では、天気は快方に進むと。
トムラウシ山には登らず、横の迂回ルートで進むことに。

出発後、1時間も経たないうちに行動に支障をきたす人が2名(何度も倒れる)。
稜線に出るまでは、風はそれほど強くない。
稜線に出、強風(風速20m、時折風は弱くなる)、エスケープルートは選ばず、そのまま進む。

日本庭園で風が強くなる(飛ばされそうになるほど)。

ロックガーデンで、同じ山小屋で一緒だった別のパーティに追い越される(9:30過ぎ)。
かなり遅いペースだったという。

ロックガーデン後、広い丘で、まっすぐに立って歩けないほどの風上からの強風。耐風姿勢◆で行く。
◆−体ごと吹き飛ばされそうな風が吹いている時、腰をかがめるように姿勢を低くし、風上側に頭をもってくる姿勢。

北沼で、水が溢れ出し、2m幅の流れとなる(10時ごろ。水はふくらはぎの下〜ひざ下くらい)。
ガイドA(61.リーダー兼旅程管理者)が流れの中に入り人を渡す。
そのサポートしていたガイドC(38.サブガイド。重いザックをかついだまま)がバランスを崩し転び、全身濡らす。
強風の中、そこを渡りきるのに、時間がかかる。

渡り終えた北沼分岐で、女性A(68才)が低体温症で行動不能になり、ガイド3人に介抱される。
その間参加者は、吹きさらしの中で待たされ、体が冷えていく。
(水流を渡り終えてから1〜2時間。記憶に違い)強風が続く。
その女性とガイドAが残ることに。(N氏がツェルトを貸す)※1

そのすぐ後、3人の女性(M62、O61、S59)が動けなくなり、ガイドB(32.メインガイド)とN氏(69才)が残り※2、
ガイドCと10人は先に進む。(ガイドCは、低体温症で体に異変が現れ始める)

男性I(66才)が、意識障害行動不能に。
S氏(61)が1時間ほど留まり介抱するがどんどんおかしくなり、あきらめ先に進む。(のちに死亡)
先頭は進んでいて、パーティはバラバラになっていく。
(分岐では、後続を確認後、行くなどしていたが)

S氏は、15分ほどで、2人(62、69)を介抱しているS女史(68)に追いつく。
S女史は、ガイドCを呼びに行くため、S氏に2人の介抱を託す。
(ガイドCは、4人用テントを所持してたので、それを使用するため)
S氏は、40分ほど励まし介抱したが、奇声を発していた2人は反応もなくなり、どうすることもできなくなり、離れる(1:40)。
(2人は死亡)

(12時ごろには強風は止み、4時ごろには雨も止み、晴れていく)

午後4時前に、先頭のガイドCと☆女史が110番に救助要請(電波が入る)。

H女史(55)は、T女史(64)を留まり介抱してた。
Tは、しだいに受け答えができなくなり、倒れる。
HはツェルトをTにかけ、途方に暮れる。(4:28)

別行動になったガイドCが動かなくなる。意識を失い、ハイマツ帯に倒れこむ。(5:21)※3

H女史のところを、K氏〜S女史〜S氏(6:30ごろ)が、追い越していく。
Hは、ビバークすることを決め、Tのシュラフを冷たくなったTにかけ、
低木帯のうえにマットを敷き、その上に自分のシュラフを載せ、パンなどを食べ、雨具、登山靴のままシュラフに潜り込む。
(Tは死亡、Hは翌朝ヘリに救助)

最初に道にたどり着いたT氏(64)と☆女史は、午後11:55、報道の車に乗せてもらい、救助本部へ。

次にS氏とS女史が、0:50に、報道陣の車に拾われる。
K氏(65)は、林道から30分ほどの地点でビバークし、翌朝一般車に拾われる。

ガイドAと7人計8名、低体温症での死亡遭難事故となる。

※1−女性とガイドAは、死亡。

※2−ガイドBは所持したツェルトを張り、N氏とともに3人のケアにあたる。
   Bは、南沼キャンプ場にテントを張っている人がいるかもと、行く。
   たまたま登山整備業者がデポしていたテント、毛布、ガスコンロ等があり、数回ほど行き来し、持ち帰り使用。
   会社に救助要請のメール(4:38)
   保温等の甲斐もなく女性2名死亡。(Oは助かる)

※3−別の登山者が見つけ、110番通報。翌日午前11:35ヘリで病院に搬送され、助かる。

◆主催者側の問題点

このルートで登ったことがあるのは、ガイドBのみ。(ガイドCはトムラウシにも登ったこともない)

避難小屋で強風時は、稜線はもっと風が強くなる、また、雨が降れば、北沼は水が増水するなど、ガイドに予備知識が乏しい。

ガイド同士は、面識もなく、意思の疎通がとれていなかった(アップダウンの関係か)。
ガイドの選定は、旅行会社側の過失である

ガイドが天気図を読めていない。(高山では、平野部より天気回復が遅れる等)
強風時にツアー客に適切なアドバイス(防寒着を着る、行動食を食べてなど)もしていない。
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コメント

このbesuさんの記事
私には全く見ることができません。何か設定が必要なんでしょうか?
2014/9/10 22:02
Re: このbesuさんの記事
ご連絡頂き、ありがとうございました。
やり方が悪かったようで、文章が消えてしまったようです。
もう一度、登録しなおしました。
ご連絡いただかなかったら、わからかなったです。
本当にありがとうございました<(_ _)>
2014/9/11 6:18
Re[2]: このbesuさんの記事
henry3です。 早速読ませて戴きました。ありがとうございます。
涸沢テント場にて薄着でアルコールを摂取していたときに一度経験していまして、人ごとではないので気をつけようと思います。
2014/9/11 10:14
Re[3]: このbesuさんの記事
henry3さん、ありがとうございました。
低体温症を経験されたことがあったなんて、それはびっくりされたでしょうね。
回復されて良かったです。
高度が高い山は、通常と違う環境ですので、気をつけなくてはと思いました。
ありがとうございました。
2014/9/13 5:58
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