(過去レコ)山頂に棲む老犬〜高川山
- GPS
- --:--
- 距離
- 21.6km
- 登り
- 1,884m
- 下り
- 2,060m
コースタイム
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2006年01月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
高川山(976m)は、山梨県大月市と都留市の境界にあり、360度の展望で、特に富士山の展望が素晴らしく、秀麗富嶽12景のひとつに選ばれている。
この山の頂きにビッキーと呼ばれる犬がいることは、『山と渓谷』2006年2月号の読者紀行文で知る。
読者紀行文を読み、これは早急に行かねばならぬということで、その年の1月28日(土)に行った。
その時は最寄り駅を始発の電車で発ち、高川山山頂には7時15分に立つ。先行者は誰もいない。
快晴の天候で、端麗な富士山が神々しい。
ビッキーの姿が見えないので、大声で呼んでみた。
そのまま富士山に見入っていると、いつの間にか足元に来ていた。
ビッキーが食事をしている所を撮ろうと、カメラを構えて菓子パンを与えると、何とくわえたまま初狩駅方面へ立ち去った。
「しまった!撮り損ねた」と思ったが、その場で食べるものと思い込んだのが間違いだった。
私も食事の用意をして展望を楽しんでいると、間もなくビッキーが戻ってきた。
そうか。ビッキーは食糧を自宅に運んできたのか!
いつもいつも食べたいだけ食べられる訳ではない。
暴風雪の日には登山者も上がって来ないだろう。
一日中、登山者からの差し入れがない時でも、何かを食べなければ生きられない。
そういう時の為に、ビッキーは‘蓄え’という知恵をつけたのだろう。
暫くビッキーと二人だけで時間を過ごした後、もう一個保存用のパンを与えてから、禾生(かせい)駅方面へ下った。
その後、ビッキーはどうしているだろうか、元気でいるだろうかとの思いが、私の頭から消えたことはない。
しかし、初めての高川山で絶景の富士山が見られたことで、高川山への再登山に踏み切れないでいた。
06年の読者紀行文は切り取って保管しているが、それによると、01年9月頃から山頂で犬が目撃されるようになり、ビッキーの名付け親は最初の頃、ビッキーを見つけた登山者らしい。
目撃されてから既に8年5ヶ月が経つ。
犬の平均寿命からしても、あと何年生きられるだろうか?
ましてや、全ての面で厳しい山の頂上という場所で、である。
まだ生きている内に再会しておかないと、後顧に憂いを残す。
会えなくなる日は、ある日突然来るだろう。
昨日(31日)、林道上部まで車で上がり、まだ誰も登って来ない時間を狙って頂上に立つ。
まだ日の出前だったが、すっかり明るくなり、富士山の頂上には大きな笠雲が掛かっている。
今日は富士山の展望は二の次、ビッキーと会う為に来たのだ。
持参した発砲スチロールのトレーにビッキーの朝ご飯と牛乳を入れてから、大声で呼び、上がって来るのを待つ。
しかし、いくら呼んでも来ない。
もう亡くなったのかも知れない。
結局、40分も待って現れないままだった。
すっかり落胆して下る途中、高年の単独行と行き会う。
もう山頂の犬はいなくなったのかと聞いてみた。
何と、先週来た時にはいたという返事にびっくり!
暫く立ち話をし、もう年老いた犬なので、朝早くから頂上で登山者を出迎えるのは難儀なのだろうという結論に達した。
その時、午後からもう一度来ることにした。
林道中腹からは1時間ほどで登れるので、1日に2度でも3度でもその気になれば訳はない。
下山後、大月市北部の林道で調べ事をして、12時半、デイパックで再登山する。
下りてくる単独行2人あり、1人は(犬には)気が付かなかったと言うが、もう1人はいましたよ、とのこと。
早く会いたいが為に急ぎ、防寒着は脱いでいても汗が流れる。
40分で登頂。
中高年4人グループの他、単独行など3人が先行して休んでいる。
ビッキーは、腰を下ろして食事中の4人グループの傍で、弁当のおすそ分けにあずかっていた。
4年振りの再会だったが、意外に元気そうで安心する。
私も菓子パンを小さく千切って差し出したが、手からは食べようとしない。
4人グループが使っていた板切れの上に置いてやると食べ始めた。
やがて、東側のコースから男女6人の中高年グループが上がってきた。
彼らは腰を下ろして食事はせず、立ったまま富士山を眺めたり、山の話で盛り上がっている。
その中で、ビッキーがオスかメスかで暫しの間、賑やかとなる。メスだと言う人もいれば、いやオスだと言う人、4人グループも加わって、その内の1人はメスだと。
6人グループの内の男性が、締めくくった〜「き〇〇まを見れば分かるよ!」
普通なら大爆笑となる所だが、そこは酸いも甘いも噛み分けた人生の達人方ばかり、笑い出す人も座が白ける事もなく、皆さんが納得した様子であった。
ビッキーが一日でも長く、登山者の心の支えであることを願いつつ、山頂を後にした。
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