ストックカングリ(6123m)


コースタイム
7/31(火) マンカルモ9:00〜11:30BC
8/01(水) 高度順応日
8/02(木) BC00:05〜4:00肩〜5:35ストックカングリ6:05〜8:40BC
8/03(金) BC08:20〜12:50にゃむしゃんの家
天候 | 7/30 晴れ 7/31 晴れ 8/1 曇り時々晴れ 8/2 晴れ 8/3 晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2012年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
タクシー
飛行機
|
コース状況/ 危険箇所等 |
ガイドは「ネオ・ラダック」に依頼。 http://neo-ladakh.blogspot.com/ ストックカングリは6000m峰にもかかわらず、技術的に困難な箇所がほとんど無い。このため、日本から短期間の旅行(私の場合10日間)でこの登山を成功させようとした場合、とにかく高度順応が課題になる。すぐに登山を開始できるにゃむしゃんの家に宿泊できること、食事面が充実していること(日本人のおなかに優しいメニュー)、ガイドが日本語堪能なこと、などネオ・ラダックにお願いするメリットは多く、登山そのものと健康管理に集中できる。一方時間が潤沢にある場合は、レー現地で安くガイドを雇ったり、もしくはポーターのみ手配してあとは自力で何とかするなど、手はいくらでもありそう。 コース全体を通して技術的に困難な箇所はない。標高5000mのBC(ベースキャンプ)まで基本川沿いを歩く。渡渉も数回あり、午後遅くは水量がかなり増すことがあるので、サンダルなど靴を脱いで渡る準備をしていった方が安心。BCより上、氷河は規模は小さい。クレバスもあまり発達していないためロープは不要。ストックカングリ本峰に取り付くと難しい箇所はないが、気温が低く雪は固いのでクランポン(+トレッキングスティックorピッケル)は必要。5900mより上の稜線は切り立っているので、滑落に十分注意する必要がある。なお、4400mのマンカルモ、及びBCには売店もあり、水やジュース、簡単な食料を買うことが出来る。 登山口そばにあるにゃむしゃんの家はラダックの古民家に手を入れたもので、ここでガイドのワンボ、奥さんの悦子さん、娘のかりんちゃんが現地の人人と同じ生活をしている。ここのホームステイだけでもとても充実した体験になる。登山前後の宿泊にも是非お勧め。 |
写真
感想
7/28(土) 晴れ
上海、デリーと飛行機を2度乗り継いで、ラダックの中心都市レーに早朝到着。10時ころまで安宿で仮眠し、そのあと市内散策して王宮まで登ってみた。王宮からはレーの街中が俯瞰でき、インダス川を挟んで今回登るストックの山々も見えた。
昼食後、体調もいいので下ラダックの有名なゴンパ、アルチを見学に行くことにする。バザール前でタクシーをチャーターした(2000Rs)。レーを出るとすぐにインダス川沿いを下るようになる。途中でザンスカール川との合流点も通るが、このあたりは峨峨とした渓谷になっている。アルチには2時間ほどで到着。この寺院は見た目はかなり地味だが、建物内にある壁画がすばらしい。ここ以上に規模の大きなものは他の寺院には無く圧倒された。
帰り道にあるバスゴというもうひとつのゴンパも見学してからレーに戻った。初日に動き回ってわかったが、ラダックの風景は街以外に樹木はなく、カラカラに乾燥した大地に雪山が連なっている。冬は何もかもガチガチに凍るとのこと。大変厳しい風土であることを思わされた。
7/29(日) 晴れ 登山前日
レーに着いて2日目。昨日のドライバーが結構いい人だったので、再度チャーターをお願いした(3000Rs)。今日はゴンパめぐりでは外せない上ラダックに行くことを計画していた。ティクセ、チェムレイ、タクトク、ヘミス、スタクナ、マトの各ゴンパを回ってもらい、盛りだくさんな一日になった。また今日は偶然タクトクでお祭りがあったのだが、風変わりな仮面をつけた踊りを見ることが出来た。年に1回のお祭りとあって、現地の人、外国人問わず凄い人出だった。この地域のゴンパはどれも急な斜面の上や深い山の中にあり、要塞都市のような様相である。寺院の建物はしまいにはどれがどれだかわからなってしまったが。。。
夕方にストックのにゃむしゃんの家まで送ってもらった。ガイドのワンボと奥さんの悦子さん、娘のかりんちゃん、犬のヤマト、ユキトが出迎えてくれた。明日からの登山でご一緒するM田夫妻(蝶の撮影が趣味)もすでに到着していた。にゃむしゃんの家はラダックの古民家に手を入れたもので、中は山小屋のような感じだった。居心地はとてもよく、居間の窓際に座っているとほっとできた。
翌日からいよいよストックカングリ登山が始まることとなる。ストック村から見るストックカングリの山は標高差もあるようには見えず、遠目にはそれほど難しくないように見えた。登る山を目の前にすると自然と気合いが入る。体調もよく万全の体制で臨めそうだった。
7/30(月) 晴れ 登山1日目(にゃむしゃんの家9:00〜15:30マンカルモ)
馬に荷物を乗せてからそのまま出発。にゃむしゃんの家は登山口よりも山側にあるのでそのまま歩いて山に入れる。ストックの村はストックカングリから流れ出る川が平野に流れ出る寸前の扇状地斜面に位置しているが、ストックカングリの登山道はこの川沿いにつけられている。崖などで通れないところは除き、基本的この沢沿いを氷河まで遡ることになる。ストックの標高は3600m。今日は標高4400mのマンカルモに泊まるので800m標高を上げることになる。
沢沿いを進んでゆくと早速蝶が現れ、M田さんたちが大騒ぎになる。蝶を見つけるとすぐにダッシュして撮影に入る。単なる登山よりよっぽどハードだ。驚いたことに、飛んでいる蝶をみて即座に種類が同定できている。珍しい種類が次々現れるようで、この山域が貴重な蝶の宝庫であることがわかる。
この日は何故か日本人の方にも何名かお会いしたが、びっくりなことに81歳の女性が降りてきた。この方、71歳の時になんとチョ・オユーに登頂されており、当時は世界最高齢だったそうだ(ウチダさんというそう)。この方、更に凄いのはマナリ経由でレーまで陸路で来られたそうで、若いバックパッカー顔負けの旅行をされている。日本人の年配の方は世界でも例がないほど元気だ。
お茶屋を過ぎると川は両岸が迫って急流となるため、登山道は高巻きになる。やがて峠に出るがここにはトントンという精霊を祭ってあり、トントン・ラ(峠)と呼ばれている。峠からまた川に下り数回の渡渉になるが、大増水しており大変苦労した。渡渉点を探しながら歩いているうちにもどんどん増水してきた。また、数日前に土石流が流れたとのことで、ところどころ粘土質の泥に阻まれた。後で聞いた話だが、馬が胸まで埋まるほどの底なし沼になっているところもあったそうだ。しかし、そこも何とかクリアし、マンカルモにたどり着いた。
マンカルモは急流沿いのゆるい段丘の斜面に開かれたキャンプ地だ。ストックカングリ本峰も眺められ、泊まり場としては申し分なく、大変気分の良いところだった。悦子さんの作る料理はおいしく、山の中とは思えぬほど豪華な夜になった。
7/31(火) 晴れ 登山2日目(マンカルモ9:00〜11:30BC)
朝も高山病の症状は無く、快適に目が覚めた。思ったより気温も下がらず、マイナスにはなっていないようだ。連日天気もよく、気持ちが良い。
今日はBC(ベースキャンプ:5000m)まで600m標高を上げる。短い行程なのでゆっくりと出発する。マンカルモの少し上流で川は3つに分かれる。一番右(北)の沢がストックカングリの氷河につながっているが、BCは真ん中の沢沿いにあるので、これを進んでゆく。
この日も蝶がたくさん現れ、M田さんたちは喜々として走り回っていた。天気が良いので蝶の出現率がとても高い。ワンボもすっかり蝶撮りにはまってしまった様子だ。
BCには昼前に到着、ここもマンカルモに劣らず景色の良いところだ。ストックカングリ本峰は前山に隠れて見えなくなるが、代わりにゴレップカングリ(5950m)がすぐ近くに見えた。ワンボにあれには登れるのかと聞いたら登れるが少し難しいという。山頂部にはたっぷり雪が乗っており斜面も急そうに見える。この日は順応のためにBCの沢を5200mくらいまで詰め、戻ってきた。夕方になると川の増水はすさまじく、真っ赤な水が洪水のように荒れ狂っていた。戻れなくなったら困るので、対岸には渡らないようにした。
8/01(水) 曇り時々晴れ 登山3日目(高度順応日)
昨晩から頭痛がひどくなり、夜中も何回か目が覚めた。食欲も減退しており明らかに高山病の症状だ。今まで症状はほとんど無かったが、ついに出始めた。昨夜からダイアモックスを服用していたが飲み始めるのも少し遅かったようだ。午前中は何もせず休むことにした。M田さんとワンボ夫妻は蝶探しに出かけた。午後からはM田夫妻は山を降り、ここでお別れとなった。自分は標高を5400mまで上げて明日に備えた。幸い夕方までには高山病はずいぶん回復し、頭痛は無くなった。翌日に備えて夕方6時ころには寝に入った。
8/02(木) 晴れ、山頂のみガス 登山4日目(BC00:05〜4:00肩〜5:35ストックカングリ6:05〜8:40BC)
満月がこうこうと照らす明るい夜になった。ワンボと私ともう一人若いポーターの3人で出発、ほとんどのパーティがもう出てしまった後でわれわれは最後だった。目の前の尾根を超え、お隣のストックカングリから流れる氷河の沢に入る。しばらくすると氷河歩きになりクランポンを装着する。ところが氷河はすぐに終わり、あとはストックカングリ本峰の広い南東斜面をジグザグに登ってゆくこととなる。思ったより雪は少なく、夏道も出ているところもあり雪山という感じがあまりしない。付近の山々はどれも雪たっぷりなので、ストックカングリはおそらく地形的に特殊で雪の付きにくい山なのだろう。登るにつれ月明かりに照らされる山々が青白く浮かび上がり、神々しく見える。風も弱く、聞こえるのは我々の息遣いだけだ。
ルートはやがて南方向に大きく巻き、肩と呼ばれる稜線にでる。標高は5900m。キリマンジャロの標高もすでに越えてしまった。ここまで4時間で実にいいペースだった。先行していたパーティも全部抜かして我々が先頭になった。しかし若いポーターは疲労が激しいようでここで脱落してしまった。肩から頂上までは標高にして200mほど。ゆっくり行っても1時間だろうと見込んでいたがここからがきつかった。10歩歩いては休むの繰り返しになり、結局1時間半かかって山頂にたどり着いた。ワンボとがっしり握手をして喜び合った。残念ながら日の出と同時にガスが発生して回りの景色は拝めなかったが、生涯初めて6000m峰に登ることが出来た満足感は大きかった。タルチョを取り付けたり写真を撮ったりして30分くらい山頂に滞在したが、天気は回復しないので降りることにした。
肩までの稜線は足元が悪い。高度障害で足元がふらつき視野も狭くなるので細心の注意がいる。肩から下は危ないところも無いので快速で下山することが出来た。雪がもう少し柔らかければクランポンを外して足スキーやグリセードで下れてしまうだろう。氷河まで降りるとところどころ水の流れに阻まれるが、この時間はまだ水量も少なく問題は無かった(遅くの下山になったパーティは洪水になっており、渡るのにずいぶんと苦労したそうだ)。下りは2時間半でBCまで戻ってきてしまった。登りの苦労に比べるとあまりにあっけない下山だった。この日は体調も万全で、高山病の症状は全くでなかった。昨日は心配な状況だったが、結果的に目論見どおり高度順応でき、スムーズに登頂することが出来た。
朝に下山してしまったのでこの日は大いに暇になってしまった。文庫本を持ってきていたのでほとんど本を読んですごした。ワンボは蝶を撮りに隣の谷に出かけていった。この日はとても暑く、夕方には川は再び大洪水となった。全く、朝のチョロチョロの小川と比べると愕然としてしまう光景だ。
日没後、BCの谷は暗くなってから月が昇るまでしばらく間がある。月光は周りの山々だけに当たって白く浮かび上がり、その前をゾー(※)の黒い影が悠々と横切ってゆく。なんとも言えぬ美しい光景だった。今回のストックカングリ登山では、とりわけ夜の山の研ぎ澄まされた景色に心を奪われた。
(※) ゾー:ヤクと牛の雑種
8/03(金) 晴れ 登山5日目(BC08:20〜12:50にゃむしゃんの家)
泥のように眠り、すっきり目覚めた。5000mの標高でも問題なく寝れる体になってしまったようだ。この日はにゃむしゃんまで降りるだけなので、花や蝶の写真を撮りながらのんびり下った。下るにつれ呼吸は楽になるが、血の巡りが良くなるせいか手足の末端がピリピリしびれてきた。
にゃむしゃんまで戻るとまたかりんちゃん、ヤマト、ユキトが迎えてくれた。ワンボの実家の方で水浴びをさせてもらいすっきりしたあと、悦子さんに家の構造、家族の生活の様子など説明してもらった。改めて思うのは、ラダックの人人は究極のエコ生活を無理なく行っているということだ。厳しい自然環境がそうさせているのは当然として、その中でも生活を楽しむことを忘れていない。
夜はキングフィッシャーで乾杯。更にラッキーなことに地酒のチャンまで飲むことが出来た。6000m峰登頂を無事果たせて良い気分だったが、調子に乗って飲み過ぎてしまい、翌日まで引きずってしまった。
8/04(土) 曇り時々雨
ラダックに入ってから初めて天候が崩れた(あまり暑くなくて良かったが)。この日は隣村のチョグラムサルにダライラマがティーチングに来るということでそれを見に行くことにした。広場は凄い人出で、ダライラマも遠目にしか拝めなかったが、ワンボが通訳してくれたので、どんな説法をしているのか少し判った。
レーに出ておみやげなど買い物をし、夜はワンボ夫妻とツォモリリから戻ったM田夫妻と食事をして過ごした。レーにもびっくりするほどお洒落なレストランがあるもので、白人たちが群がっていた。パスタやピッツァなど美味しいイタリアンを満喫できた。
8/05(日)
最終日の朝レーはとても冷え込んだ。山には新雪が積もっているのが見えた。ストックカングリBCでもおそらく積雪したことだろう。
デリー、広州経由で日本に帰着。デリーではガンジー博物館を見学した。最後の最後で何故かおなかを壊し、広州ではラウンジのトイレに籠もりきりだったが、無事に旅を終えられてよかった。
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