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記録ID: 39036
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ハイキング
中国

トホレコ(日本縦断徒歩旅行の記録)40・日本海、ひたすら〜4(鳥取の砂浜で)

2006年10月28日(土) 〜 2006年10月30日(月)
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GPS
--:--
距離
---km
登り
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下り
---m

コースタイム

10/28 岩戸海岸ー鳥取砂丘ー白兎海岸ー宝木
10/29 宝木ー宇野
10/30 宇野ー羽合ー北条砂丘ー赤碕

過去天気図(気象庁) 2006年10月の天気図
アクセス
コース状況/
危険箇所等
10/28
 一玉だけ残っていた茹でうどんをキャベツと一緒に焼きうどん風のものにして朝食とする。いと不味し。
この辺の海岸の砂は大変粒が細かく、水を含んだ波打ち際は案外に歩きやすい。アスファルトなんかより膝に優しそうだ。というわけでこのまま砂浜沿いに鳥取砂丘を目指すことにする。
 無限に続くかと思われた広漠たる砂浜がいきなり途切れた。波に浸食されたのか、防波堤に打ち寄せる波の下に砂浜が消えてしまっている。テトラポットを伝ってこの難所をなんとか突破しようと試みるも、波が存外高く、あえなく敗退。500mほど引き返せば、何の苦もなくこの堤防の上に上がって通過出来るのであるが、そいつは俺の沽券ってもんが許さない。堤防の亀裂から登攀での突破を試みる。高さは5mくらい。空身ならどうってことないルートではあるが、この重荷では少々キツイ。しかしこのスラブの弱点はここをおいて他にない。小樽は赤岩海岸のスタンダードなボルダールート“なめこスラブ”のムーブを応用しつつ、下段の核心部を辛くも突破。上段は少しかぶっているので空身でないと登れそうにない。中段で一度ザックを下ろし、渾身の力で抜け口へ放り投げる。あとは強引に這い上がるだけだ。なんとか無事に完登。快心の登攀。頭おかしいのか、俺は。
 あとは遮るものとてない砂浜を颯爽と歩いていく。何時しか左手の砂地がぐおーんと高く、壁のやうにそそり立っているのに気付く。その上部には、波平の頭よろしく、まばらな人影が逆光のシルエットになって浮かんでいる。もしや、あれってくゎんこう客?そう気付いて、さっそくその急な砂の斜面を登っていく。砂に足を取られつつ、最上部まで登りきると、果たしてそこには荒涼たる砂丘が一望出来る。遥か国道の方から沢山の人たちが列を成して砂丘走破を試みているのが見える。辺りで一番高そうな丘を選んで、しばし黄昏てみる。別に大した期待をしていた訳ではなかったが、仲々いい所である。願わくば独りになりたい。しかしそれは贅沢というものだらう。国道へ向けて砂丘を横断していく。ラクダに乗ってキャラバンを楽しむひともいた。噂には聞いていたがホントにいるのね、ラクダ。一体どういうセンスなんだ。乗るほうも乗せるほうも相当なガッツを要求されそうだ。ビジターセンターにパソコンがあったのであちこちにメールなど送ってみる。

 真っ白な砂丘でひもじい。

などという山頭火風のステキな自由律に、砂丘の感慨を読みこんで添えてみる。実際腹が減ったな。うどん一玉じゃ腹持ちが悪い。生憎辺りにはくゎんこう向けの食堂しかない。
 どっちに行っていいのが今ひとつピンと来ない。テキトーに西と覚しき方角へ進んでいく。鳥取市街に向かうと遠回りなのでパス。空港の前をよぎって海岸へと抜ける。コンビニで久々にカレーヌードルなど食してみる。店内で漫画雑誌を立ち読みしながら、
「今週のグラビアはショコタンか。むーん、ギザかわゆス。」
などと悶絶していると、いい感じにノビノビのラーメンが出来上がる。これが良いのよ。美味いのよ。
 海沿いには風通しのいい光景が広がっている。道も広いし、実にさはやかな印象。白兎海岸の道の駅で金山時味噌をゲット。ここは“因幡の白兎”ゆかりの地らしいが、その白兎が何者なのかよく知らないのであまり興味も湧かなかった。なんでも伝説上の生き物らしい。つってもウサギでしょ?
 一山越えて、宝木あたりにつく頃、日が暮れ始める。内陸のほうにちょっと行くと温泉があるようだ。寝床はこの辺の海岸にするとして、とりあえず行っとこか。2kmくらいあったが、ザックからラジヲ引っ張り出してアヴァンティに聞き耳を立てているうちに到着。“宝喜温泉”という湯である。この温泉は何かの社長さんが、一念発起して工場の敷地内を掘ったものらしい。「古くからの言い伝えを信じて闇雲に掘り進んだ」とかって熱い縁起が館内に掲げられていて感銘を受けた。子供向けのプールみたいなものがあったりして、なんだかなぁってところもあるが、意外に源泉掛け流し。熱いロマンが実現させた男の湯である。
 真っ暗な細い夜道をトボトボと引き返して海岸へ。しかしこの海岸、川が変な具合に流れ込んで来ていて、温泉から辿ってきた道をまっつぐに進んでいくと、川で行き止まってしまう。川沿いに下流に進んでいくと別の運河が流れていてまた行き止まり。なんなのよ。真っ暗なので要領を得ない。もうこのまま海岸には出られないんじゃないかと、心細い気持ちになってくる。
 相当遠回りしたが、無事海岸に着く。テトラポットに挟まれた小さな砂地に野営。闇夜のことで、あたりの様子が判然としない。どうにかマキを拾い集めてちいさな火を起こす。晩飯はキャベツとギョニッキーの金山時味噌和え。これが案外美味いのよ。酒によく合う。金山時味噌ってものを見直してしまった。酒がすすむ。したたか酔ってしまった。なんでこんな漠然たる闇夜の浜辺で、俺はこんなに酔ってるんだ?なんか可笑しくもあり、また飲む。やがてヘベレケの酔漢と化す。それにしても、何処なんだ此処は。

10/29
 夜明け頃、忽然として目を覚ます。なんか二宿酔いだ。異常に喉が渇いている。二度寝して8時頃再び起床。昨日の残りで朝食。歩く気がまったく起きないので、ラッパなど吹いてみる。コーヒーなど飲みつつテトラポットの上で二時間余り。まあ、そろそろ行くか。
 相変わらず広々として清々しい道が続いている。鳥取の海岸は「キャンプ禁止」の看板もないし、とてもいいいところだ。日本人は多く鳥取に学ぶべきところがあると思うよ。
 地図で見るほど道は平坦ではなく、港と港を隔てて緩い丘が横たわっている。この位の軽い峠越えなら、気分転換に丁度良い。日曜だからか、海面に浮かぶサーファーの姿が多い。しかしこんな凪の日に無駄だろ?昨日から風がピタリと止んでベタ凪が続いているのだ。サーファー受難の週末である。
 羽合手前のちょっとした砂浜で野営。多分、宇野海岸ってとこだと思う。宵の口から風が強くなる。今夜も焚き火を試みたが、マキが少なくあっという間に燃え尽きてしまった。ご飯丸コゲ。悲しからずや。レトルトカレーをぶっかけて食す。

10/30
 昨日に引き続いて頭が痛い。そればかりか喉も痛い。なんてことだ。二宿酔いかと思っていたら、風邪だ。風邪だったんだ。そんな訳で6時頃起きたのだが、コーヒー飲んで再び寝てしまう。何かっつーと二度寝してるな、俺は。
 それでも何とか9時頃出発。そんなに大袈裟にならなくてもいいと思うよ。程なくしてハワイに到着。言っておくが常磐ハワイアン・センターなんてまがい物ではない。まごう事なき日本のワイハはちゃんと鳥取の地にあるのだ。羽合という字を書く。こんな場合、得てして地方自治体などが暴走して“ハワイ饅頭”とかアロハとかを売り捌いたりし勝ちだが、この町はその辺の良識はわきまえている様で、あまり浮き足立ったキャンペーンなど打っていない様子。ただ、コンクリート工場かなんかの巨大なタンクに「ハワイ」と太く染め抜かれていたのが印象的だった。
 折角なんでハワイの砂浜を辿ってみようかと思ったのだが、砂粒の荒い砂浜は足を取られて極度に歩きにくい。割とすぐ諦めて9号線を行くことにする。なんか、妙に平べったくてスガスガした印象のところである。この感じ、なんとか写真に収められないものか。クルクルと回る巨大な風車を執こく何枚も撮ってみる。
 「北条公園」の道の駅でランチ。体が弱っているようなので、奮発して長いもコロッケの定食を食べてみる。長いも、この辺の名産だとか。ごはんお変わり自由也。干し芋と干し柿も買っていく。やはり柿は干したのが美味いよな。カテキン効果で風邪なんてぶっ飛ぶぜ。もっとも柿にカテキンが含まれているのかは不明。多分入ってると思うよ。
 道の向こう、防風の松林を隔てて北条砂丘がある。鳥取砂丘に隠れて目立たないが、これも一つの砂丘である。まあ、唯々茫漠たる砂浜が広がってるだけ、と言えなくもない。いや、砂丘である。果てしない砂浜をしばしたどる。海岸には、釣り師の姿がちらほら。テントを張って野宿に現を抜かす親父などもいる。ならば僕は別の寝床を探さねばなるまい。
 適当なところで切り上げて9号線沿いに戻ってくる。国道沿いに広がる畑の中の農道を辿ってみる。農作業に精を出すピグモン状のおばちゃんがいたので訊いて見ると、このあたりの畑はみんなラッキョウだそうで。雑草取りの最中とのこと。ご苦労様です。丁度花の季節と見えて、薄い紫色の小さな花がヒラヒラと風に揺られている。仲々めんこい花だ。そばの花もいいけど、ラッキョも捨てがたいね。
 浦安という、千葉県出身の僕にとっては非常に親しみ深い地名の町まで来ると、何故か急に通りが賑やかになる。古本屋があったので入ってみる。体よく中島らもの「今夜すべてのバーで」と「注文の多い料理店」をゲット。せっせと歩いてなんとか5時前に赤碕の道の駅に到着。この辺り、国道は高台を通っていて、道の駅の裏手から海を見下ろすことが出来る。眼下には丁度いい感じの砂浜。今夜の寝床はあそこで決まりだな。
 閉店間近の道の駅の鮮魚コーナーでは売り切れ御免のたたき売りが始まっている。鰆のタタキを購入。たたき売りだけにタタキ。それからネギや小松菜、お米なども購入。
 急な階段を下りて砂浜に出ると、放し飼いの巨大な犬が踊りかかってくる。伝説のブラック・ドックかと思ってビビッたが、よく見れば黒いラブラドール・レトリバーなので。なんかえらく興奮して、やたら吠えまくっている。ラブちゃんって、いまいち話が通じねえんだよな。あのおバカなところが人気なんだろうけど。
 鰆はネギや小松菜と一緒にさっと煮て食べた。いと美味し。夕暮れ、少し風が出てきたが、やがてそれも止んで静かな夜だ。鰆を冷やすので入れてくれた氷で、今夜はオン・ザ・ロックと洒落ようじゃないか。こういう氷ってあんまり綺麗なもんじゃないのかもしれないけど、細かいことは抜きにしようじゃないか。

快心の登攀。
真っ白な砂丘でひもじい。
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真っ白な砂丘でひもじい。
ラッキョ畑のピグモンおばちゃん。
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ラッキョ畑のピグモンおばちゃん。
赤碕の夕べ。
波音は常にそこにある。
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赤碕の夕べ。
波音は常にそこにある。
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