山行記録: 雄冬 渚ブライダルヴェール

記録ID: 4004366

全員に公開

アイスクライミング

増毛・樺戸

雄冬渚ブライダルヴェール

2022年02月15日(火) [日帰り]

Takenaka2017

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コースタイム

濃昼駐車帯で現役に降ろしてもらい、新赤岩トンネルを抜け海岸を少し歩くといきなり50mぶったちが現れる。ナイルを登ったせいか、これは登れそうだと確信した。が、この判断は経験不足、今日登っておかないとという焦り、まぁ何とかなるでしょという楽天思考による過ちだったと痛感するはめに。トップアウトまでに4時間かかった。
久しぶりに本気でフォールを覚悟した。

・1p 30m Ⅳ(+？)　竹中
基本80°部分的に垂直のくらげ氷。ずっと凹角を辿れる。2p目の落氷を避けれそうな小空間でピッチを切る。ここから直射日光との追いかけっこが始まる。
・2p 30m Ⅴ+ 竹中
カンテを乗っ越し、緩い凹角に沿ってつららを破壊しながら垂直を登る。落氷をもろに受け止め顔面は血だらけ。さらに凹角を形成している左側の氷柱(と思っていたもの)は、上から覗き込むと中が空洞で勢いよく水が流れておりゾッとした。最上段5～7mは5㎝程度のまさに薄氷。最後の落ち口を見上げると氷が部分的に途切れていた。。。
最上段のルートの選択肢は①薄いけど凹角状でマントルまでの距離が短い、②3mトラバースして比較的氷が厚いが綺麗な氷柱形の2つ。アイスのカンテクライミングに自信のない僕は①を選択した。
考えが及ばず最後に残ってしまった22㎝スクリューを5㎝位入れ、手持ちシュリンゲで最も短い懸垂バックアップ用をタイオフして深呼吸する。氷の厚さ・質ともにアバラコフは作れない。絶対に怪我はできないし、もうここまで登ってきてしまった以上、無事帰るには登りきるしかない。昨晩よく研いでおいたモノポイントを蹴り込んで足場を安定させ、片腕ずつレストしながらムーブを組み立てる。試しに加重した草付きは頼りなく、氷質もグサグサで最悪。じわじわと迫る直射日光も相まって嫌な汗が背中に滲む。
1つ前のスクリューもこの氷質だと大フォールを止めてはくれないだろう。でもこんな状況でも冷静に思考できる自分を褒めてあげたくなる。頭の中で登りきる自分をイメージし、再び深呼吸してから、意を決してムーブを起こす。壁に張り付いた貴重な薄氷を絶対に割らないよう、ピックの先で優しくチョンチョンとアックスを差し、足も氷のなるべく厚い箇所にチョンチョンと差し込む。マントルまであと3m。Petzl Pure iceピックも命には代えられないので上部の土に向けて容赦なく振り下ろす。うっすい草付きを貫通し、岩に当たって跳ね返され思わず声が漏れる。「これはヤバいなぁ」と心の中で呟く。
「頼むから崩れないでくれ」と凝視して、左手はかろうじて張り付いたアイスの残骸に、右手はもげそうな草付きでそろーっと体を上げ、腕くらいの太さの樹木を掴む！あぁ助かった。カムイMIXや沢の悪い巻きなど、色々なクライミングをやってきてよかった。自分の楽観視が招いた事態とはいえ、冷静に難局を乗り越えられたことになかなかの充実感を得る。危険要素でしかなかった太陽光線も、今では背中を柔らかに温め、自分を褒めてくれているようにすら感じた。
フォローしてくれた井上も「これは悪いね笑」とグラサン越しにニヤニヤして上がってきた。

ところが懸垂1pで地面に降り立った瞬間、先ほどまでの感動は急速に灰色を帯び、なんだか自分がとても情けなく、どうしようもない愚か者に思えてきてしまった。ロクスノ41号「トラッド王国に足を踏み入れて」の杉野さんの言葉が頭をよぎる。ナギブラは美しく素晴らしい氷瀑で、こいつを登った先輩クライマーの方々は皆輝いているように見える。それなのに、自分はこんな危険を冒してまで一体何がしたいのだろうか？

天候	晴れ　気温:-7℃(6:30)～0℃(11:30)
過去天気図（気象庁）	2022年02月の天気図
アクセス	利用交通機関：自家用車
コース状況／危険箇所等	上部は薄くて脆い