3/7 阿弥陀岳北稜
コースタイム
5:40 美濃戸 6:00
9:50 行者小屋 10:30
12:30 第一岩稜取付き敗退 13:00
18:00 美濃戸 18:20
天候 | 晴れから雪 |
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過去天気図(気象庁) | 2014年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
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コース状況/ 危険箇所等 |
美濃戸口から美濃戸までは轍が深いので注意。 行者小屋まではトレースばっちり、そこからはトレース少なめ。 阿弥陀北稜は先行パーティがいたので若干トレースがあったがそれなりにラッセルが必要な状態。 中岳沢はデブリの上にうっすら積雪。 |
写真
装備
個人装備 |
冬用登山靴 1
アイゼン 1
アックス 2 アッズ&ハンマー
ヘルメット 1
ザック 1
腕時計 1
山と高原地図 1
2万5千分の1地形図 1
コンパス 1
スパッツ 1
ウェア 1
防寒具 1
雨具 1
ヘッドライト 1
予備電池 1
テルモス 1
プラティパス 1
行動食 1
非常食 1
バラクラバ 1 ビーニー&ネックゲイターでも可
手袋 1
手袋予備 1
手袋インナー 1
靴下 1
サングラス 1
ゴーグル 1
ハーネス 1
アルパインクイックドロー 5
120cmスリング 2
カラビナ 4 120cmスリング用2+2
ロッキングカラビナ 3
ビレイデバイス 1
ギアラック 1
ナイフ 1
ストック 1
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共同装備 |
ツェルト 1
ダブルロープ 2
カム・ナッツセット 1
ハーケンセット 1
トライカムセット 1
ワードホッグ 2
捨て縄 1 7mmx5m以上
ファーストエイドキット 1
アタックザック 1
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感想
前夜21時過ぎに自宅を出発。
23時45分頃に美濃戸口に到着。
車内で夕飯を済ませて0時半頃就寝。
翌朝4時15分に起床。
5時には駐車場に集合。ここまで予定どおり。
チェーンを付けて美濃戸へ出発。
赤岳山荘駐車場で支度を済ませて6時には出発。予定どおり。
ここから少しずつ計画が狂い始める。
以前かみさんと2人で美濃戸から赤岳鉱泉に上がった時は同じくらいの荷物で1時間40分程度だった。
計画では余裕を見て2時間の行程としていたが、赤岳鉱泉到着時点で8時15分。すでに時間オーバー。
行者小屋到着予定は8時半、支度に30分で9時に出発の予定だったが、実際には行者小屋到着が9時20分、出発はなんと10時30分。
この時点で1時間30分も予定から遅れていた。
まず歩きの遅れについては大きく2つの誤算。
1つはザックの選択。
普段はオスプレーのバリアントという定番のザックを使っているが、今回はライト&ファストをめざしてアセンジョニストの45Lと25Lを初めて使用。
まずこのザックがバリアントに比べると背負いにくい。
簡単に言えばヒップベルトが弱い。
そのためショルダーにものすごい荷重がかかるのでかなり肩が痛くなって血管が圧迫される。
ただこれはライト&ファストのトレードオフなので弱点というよりは特徴だと思う。
そしてこのザックにはトップリッドがない。
あるにはあるが行動食とか水は入らない。
初めて使うためザックに不慣れなこともあり、毎回の休憩でいちいち時間がかかる。
まるで1年前の初めて冬山に行ったころのようだった。
せっかく最近ではようやく休憩などもスピーディーにこなせるようになってきていたのに、また前に逆戻りである(笑
また、アタックザックが25Lというのも失敗だった。
夏山マルチだとアタックザックが18L(ペツルのバグ)なので25Lならば妥当かと思ったのだが、これでは全然不足だった。
アタックザックの容量が少ないため、アタック時の行動にいちいち支障が出たことは否めない。
もう1つはかみさんの体力。
前夜に八ヶ岳山荘の仮眠所で寝たのだが、正直あまり良く眠れなかった。
とくにかみさんがほとんど寝れていないようだった。
また普段からそうだがこの週も平日は常に若干寝不足気味、さらに雪訓で腰を痛めている後遺症と若干風邪気味なこともあり、それほど体力があるほうではないにしても、普段よりも体力が落ちている状態だった。
次に行者小屋で1時間以上も時間がかかったことについては、これは経験不足による準備不足という点が大きい。
まず最大のミスはクランポンの調整をしていなかったこと。
縦爪の付け替えに気を取られて、センターバーをバツーラに合わせていなかった。
合わせていればものの5分もあれば装着できるのが、クランポンの調整と装着だけで20分はかかっていたと思う。
また今回はザックの容量をかなり一杯一杯にしてきたので、ザックへの収納を最適化するあまりアタックの準備という点でマイナスが発生していた。
具体的には、普段余裕のある容量(バリアント52を2つ)ならば、ギアラックなどはそのまま使える状態で収納しているのだが、今回はそれでは入らないのでギアラックからギアを外して別々に収納していた。
ザックのパッキングはむしろ上手なほうだと思うのだが、逆にそのため「アタック時の行動しやすさ」よりも「小さいザックにうまくパッキングする」という優先度が低い方を選択してしまった。
もう一つ反省すべき点は、クランポンの調整や装着について普段からかみさんの分まで自分がやっていたこと。
調整していなかったのが最大のミスだが、2人がそれぞれ自分のクランポンを面倒みれればそこの時間は半分で済むということになる。
マルチについても、以前はロープワークなどでほぼ自分一人でやっていたためシステム部分が遅かったのだが、これはかみさんのロープワーク訓練によって分担できるようになり結構な高速化ができていた。
同じことが冬山についてはまだ下準備が出来ていなかったということになる。
また前述したようにアタックザックの容量が少ないため、パッキングその他での効率が悪かったことも大きな要因である。
冬山アタックの場合にはビバークするためのレイヤリングや道具が必要になるが、それらについて初体験だったため毎回考えながらやるというのも失敗であった。
ちなみに天気は行者小屋時点ではピーカンだった。
これは天気には恵まれたなあとこの時点では思っていた。
ともかくこうして1時間半遅れでアタックを開始する。
事前に最大の核心はジャンクションピークまでのルートファインディングと雪崩の回避だと思っていた。
幸い行者小屋から少ないながらもかろうじてトレースがあったので、ルートファインディングをするというよりは、そのトレースが正しいかどうかだけを判断すればよかったのは幸運だった。
ここが核心だと思っていたので、事前に山ほど阿弥陀岳の岩稜やジャンクションピーク、また中岳沢や阿弥陀岳の2つの尾根の位置関係、赤岳、中岳、阿弥陀岳の関係を頭に入れていたので、トレースが正しいかどうかについてはさほど悩まないで済んだ。
ただトレースがなかったとしたら、中岳沢を上がっていってどこから樹林帯に入るかについて正しく行動できたかはちょっとわからない。
今回の行動でそこについて良い経験が出来たと思う。
樹林帯に入って斜面が急になると、かみさんの行動ペースがガクンと落ちる。
もともと1時間半遅れていたために余計遅く感じたのかもしれないが、それを差し引いても普段の行動ペースよりは明らかに遅い。
3ヶ月前に一度同じルートを連れられる形でアタックしているのだが、その時はヒーヒー言いながらももう少し力強く行動していた。
そして中岳沢から樹林帯に入る頃から、うっすらとガスが出始める。
樹林帯を上がっていくにつれてどんどんガスは濃くなり寒くなっていった。
ジャンクションピークに出る前の急な部分では、かみさんの顔色が相当悪くなっていた。
ここでまず1回目の敗退の検討が頭に浮かんだ。
ただ、11時20分あたりで岩稜が見えてジャンクションピークに出られそうだったので、まだ可能性はあると思いとりあえず行動を継続する。
ジャンクションピークに出るとかなり気温は下がり、稜線のため風も吹いていた。
緩やかな斜面を過ぎて岩混じりの急な斜面に差し掛かる。
ここを抜ければもうすぐに取り付きだ。
この時点で、取り付きに12時に辿りつけなかったら無条件に敗退しようと思っていた。
また12時に取り付きに辿りつけてもかみさんの様子が悪そうだったら敗退しようと思っていた。
結果としてはジャンクションピークから取り付きの真ん中あたりで12時を過ぎたためここで敗退を宣言した。
もともと行者小屋の時点で、「14時を撤退期限とします」と宣言していたのだが、取り付きに12時に辿りつけなかったら今日のコンディションで14時までに登頂できるとはとても思えなかった。
さらにこの時点では、相当天気も悪くもはや悪天候といえる天気になっていた。
周囲は一面のガスで真っ白、体感温度もマイナス20度以下という感じだった。
敗退することにしたのでここでグローブを行動優先のものから保温優先のものに変更した。
ただ撤退期限は14時と考えていたので、岩稜取り付きまでは行くことにした。
岩稜取り付きに到着したのが12時半、実際に目にしてみるとヨダレが出そうなくらい簡単な岩場だった(笑
ここはグッとこらえて取り付きでプロテクションセットの練習をする。
しかし風も強くなり気温も下がり、かみさんの行動がもう限界に見えたので、練習も早々に切り上げ13時に下山を開始。
おそらくかみさんは相当体力も限界に近かったためであろう、ジャンクションピークから岩稜取り付きまでの急登がクライムダウンできないと言う。
正直冷静に判断すれば、かみさんの今のスキルでもあの斜面は十分にクライムダウンできるレベルである。
実際クライムダウンを少しやってもらったら相当遅かったため、ロープを出して懸垂することにした。
ところがこの懸垂の1人目というのがまた大変だった。
マルチのような70-90度とかであればともかく、急とはいえアックスとクランポンで登れるのでせいぜい40度くらいの斜面である。
斜面が緩やかなことと、岩とは違って雪なので実にロープが流れない。
また腰にはダブルアックス、足にはクランポンがあるので、ロープがいちいちそれらに引っかかる。
普段であればロープダウンして末端までロープを捌きながら降りるのに10分くらいだと思うが、30分くらいかかっていたような気がする。
ただ2人目以降はロープは捌かれているのでこれはマルチの懸垂と大差ないスピードで下降はできる。
ロープを伸ばしきるとちょうどジャンクションピークへの抜け口までもう1回の懸垂で降りれるくらいの距離。
ここはかなり緩やかな斜面なので、クライムダウンどころか歩いて降りれるように見えたが、かみさんに聞いてみると懸垂のほうが良いということだったので再度懸垂をセット。
ただ最初の懸垂よりもさらに緩やか、たぶん25度位の斜面なので2メートルくらい降りてはロープを捌くということを繰り返していたため、1回目よりもさらに遅かった。
2回目の懸垂を終えるとジャンクションピークへの抜け口、ここからはまたかなり急な斜面が数十m続く。
どうするか聞いてみたところ「頑張ってクライムダウンしてみる」ということなので、慎重にトップで降りてもらう。
この斜面は1回目の懸垂をしたところと同じくらいかそれ以上に急な斜面だが、岩混じりではなく純粋な雪壁なので、アックスワークについてはまだマシなのでおそらく問題ないだろうとは考えていた。
実際歩みは遅いがそれほど問題なく着実にクライムダウンしていく。
そして樹林帯に戻って、先日雪訓で練習したクランポンワークを再度練習しながら着実に降りていく。
無事中岳沢に戻れた時点で、15時を過ぎていた。
もうビバークのリスクもほぼゼロになりようやく緊張も解けて行者小屋に向かう。
装備のパッキングをして下山開始したのが16時半くらい。
南沢ではなく赤岳鉱泉経由北沢で下山。
ほぼ休憩ゼロで18時には赤岳山荘駐車場に到着した。
さて今回の山行について、最重視していたのは「かみさんと事故無しで戻ってくること。軽い凍傷すらも起こさないこと」であった。
これについては無事クリアできた。
敗退の判断についても「事故なしにするのを重視するあまり余裕を残しすぎて敗退判断した」というレベルではなかったと思う。
感覚的には限界まで判断を引っ張ったとしてあと10%くらい余分に行動できたくらいではないだろうか。
ザックの選択ミス、装備の準備不足という自己責任のマイナス面はあったが、これらがなかったとしてもあの天候と当日のかみさんの体調からすると、完登はできなかった可能性は高かったと思う。
そして敗退したとうことは、自身の限界を超えたチャレンジをしたということなので、スキーで言えば転ぶようなもの、クライミングでいえばフォールするようなものであるから、考えようによっては限界まで経験値を稼げたとも言えるだろう。
楽々完登できるようなチャレンジだと経験値はそれほどたまらないだろうし。
根拠はないがなんとなく、「この山行を10回くらいやったら、かなりアルパインについての下地が出来そうだ」という気がした。
マルチの越沢バットレスや大貧民ルートへのトライのような感じだ。
できれば2年くらいの間にこのルートかもしくは同程度のルートを10回位経験したいと思う。
そしたらおそらく、「アルパインクライマーとしての下地」がそれなりに出来るような予感を持つことが出来たというのは、今回の山行の良い点であった。
ところでライト&ファストのザックでガチャを一人で全部担ぐと相当肩が痛くなることがわかった(笑
奥さまは寒さに強い方ではないと言っていたので心配してました。でもzakimeguさんのナイスフォローでご無事で何よりでした。雪山は本当に天候に依るのでもっと良いコンディションの時に再チャレンジでしょうか?それにしても愛ですね。
ありがとうございます。
かみさんになにかあったら多分クライミング自体やめたくなる気がしますからねー。
行者小屋ではあんなにピーカンだったのに、山の天気の怖さを知りました。
でも行程としてはそんなに大変じゃないので練習として良いプランだと思います。
これを何度かやれば下地が出来ていく気がします。
http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-411951.html
これをみると美濃戸口6時なので1時間遅く出発していて、行者小屋出発はほぼ同時、そこから登頂が3時間半なので、全体的に行動ペースが2割くらい早い感じかな。
このくらいが当たり前になるようにしよう。
なにより下山を始めて50分で行者小屋というのが早い。だから14時半登頂の見込みでも行動できるんだろうな
結果は敗退かもしれませんが、いい経験ができたみたいですネ
冬山は準備も含めて、色々とたいへんですよねえ。
お互い頑張りましょう!
(私はアルパインはやりませんけど。 )
今シーズンもう一回くらいプライベートで阿弥陀北稜いきたいですね
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