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Yamareco

記録ID: 4172022
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アルパインクライミング
近畿

南紀・小鹿滝【 21世紀に出現した大滝を登る 】

2022年04月09日(土) [日帰り]
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まっちゃン その他2人
GPS
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距離
382m
登り
99m
下り
96m

コースタイム

小鹿橋より取り付きへの下降開始(730)登攀終了し、左岸尾根下降後に小鹿橋着(1740)
天候
過去天気図(気象庁) 2022年04月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
国道から見る小鹿滝
2021年12月05日 07:48撮影 by  DSC-T77, SONY
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12/5 7:48
国道から見る小鹿滝
と、その登攀ルート
2021年12月05日 07:48撮影 by  DSC-T77, SONY
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12/5 7:48
と、その登攀ルート

感想

 2016年春に家族で旅行に出掛けた際、車で通りかかって何気なく見掛けた大滝が、意外な物語を秘めていた。
 近年2011年水害に洗われて現れた見目麗しい滝に、いざ手掛けてみたら一筋縄ではゆかず登るに簡単ではなく、さりとてピシャリ拒絶されるわけでなく、美しさと厳しさとを兼ね備えたその登山対象が更に未登となれば我々は否が応にも惹きつけられた。
 たった80年の長くもない人生の中で、自然災害によって出現した滝と出逢う確率が確率なら、それが手付かずで、山奥になく目立つ国道近くに、単調でなく見るからに興味を惹く美しい貌をしているのも稀で、その上簡単に過ぎず人間の身体能力の範囲内で収まる難しさで登れた自然の好意の有難さをも思った。それも、他でもないかつての台湾溯行の同志と共に登れたことも手伝って。一生に一度あるかないかの好機に、たった三度の挑戦で滝頭に立てた我々は実に幸運だった。

●南紀・小鹿滝登攀【完登】(2022.4.9)
 昨年末の敗退、そして今年3月の試登と、2度のトライアルを経て今回、ようやくこの小鹿滝の登攀を完成させること叶った。実際、美しくも厳しい滝の登攀だった。
 今回こうして発表に至るまでは本滝を「ο(オミクロン)滝」として扱ってきた。これまでの記録は、
●南紀・小鹿滝登攀【敗退】(2021.12.4)
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-3815851.html
●南紀・小鹿滝登攀【試登】(2022.3.5)
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-4060764.html

 今回登攀対象とした南紀・小鹿滝は、新宮市から熊野川を遡って位置する国道168号線脇の観光スポット「葵の滝(白見滝) 」の対岸に垂れて見える80m程の滝であり、水量は些か少ないものの変化ある滝の形状やその強い傾斜から立派な大滝と捉えて差し支えない。
 この滝との出会いは、家内に牽引されて家族で出掛けた2016年春の熊野詣の道すがらだと記憶する。立派なアーチ橋を従えた如何にも立派な滝を国道対岸に見て「あ、あれは登ってみたい」と私にしては珍しく興味関心を持ったものだった。下半は緩傾斜のスラブ、上半が傾斜のある黒い滝で構成されており、殊に石も置かない鑿削ったような綺麗なスラブ部分に惹かれた。登ってはみたい、さりとて簡単なはずもなし。
 調べてみれば、何としたことか2011年に当地で発生した「2011年紀伊半島大水害」で現れた滝だという。それまでは上部のみが滝として存在していたものの、その水害によって下半部の樹林や土砂がゴッソリと剥がされて、綺麗なスラブ部分が露出したことになる。これら指摘をくれたのが、特に登攀の観点で全国の滝に関する情報を数多くお持ちの青島氏で、そんな流れもあって実際に小鹿滝を登ろうと手掛けた第一回、第二回とご一緒した。敗退、試登を経て、我々の手に余る厳しい登攀内容に、オープンプロジェクトにする話も挙がったが、何処の誰とも知れぬ輩に初登攀の栄誉を搔っ攫われるよりかはと、これまた大滝登りと言えばこの人、我らが台湾溯行同志・成瀬氏の登場を願ったのが今回の成功へと繋がった。こうして、図らずも台湾溯行の第二世代三人が集い、結果を出すことができた。
 天候は勿論のこと、気温、水温、日射そしてメンバーとそれら条件が一つでも欠けては今回の成功はなかったものと思う。ノンボルト、残置なしというクリーンなスタイルでルートを拓けた。初登攀と思われる。2017年3月に惜しくも亡くなったロイヤル・ロビンスが提唱した「初登スタイル尊重の原則」に則って、今後登ろうという向きにはボルトの使用をお控え願いたい。いや、打たないで下さい。そのために我々は情報を集め、知恵を絞り、余分の装備を持ち上げ、墜落の恐怖に耐えて登ったのだから。
 尚、私は今回の小鹿滝を登攀対象として見出したプランナーというだけで、小鹿滝出現の経緯や過去記録の発掘、登るに当たっての細やかな分析は同行の青島氏の独壇場だったし、実際の登攀の場面で核心となる難しいピッチは百戦錬磨の青島・成瀬両氏の受け持ち分だったため大きなことを言う立場にない。けれど、小鹿滝を見出して以降、こうして仲間に声掛けし、情報を収集し、時間を工面して遥々ドライブして出掛け、登れずに帰ってきてアレコレと思案し、試登して再考し、タクティクスを練って最適解を探るという、これら初登攀に向けた一連の流れに乗るのが実際に「山に登る」という行為なのだと改めて学んだ気がする。今回、この滝が私に与えてくれたモノの大きさを改めて感じている。
 丁度六年前に登りたいと思って眺めたあの滝の落ち口に、傾きかけた日差しに照らされて無事立てたことに今はただ安堵している。見降ろした滝の素晴らしい高度感を今でも思い出せる。実際、良い滝だった。これ以上望みようもない同志と共に滝頭に立てたことが何より貴い。感謝しかない。その最終ピッチ、見降ろした下半スラブをスクリーンとして射光が映し出したアーチ橋の影リングが印象的で、彼女からの祝福のサインに思われた。あれは確かに、登った者だけに与えられた光景だった。
 熊野訪問の際は新設なった白見谷「葵の滝駐車場」に立ち寄って是非、対岸に目を向けてみて頂きたい。

【追記;物語はまだ終わらなかった、、、、、。】

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