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記録ID: 55836
全員に公開
沢登り
屋久島

屋久島小楊子川左俣川→宮之浦岳→新高塚小屋→安房川トロッコ道→安房

1993年08月23日(月) 〜 1993年08月26日(木)
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zeniya1990 その他3人
コース状況/
危険箇所等
屋久島小楊子川左俣川→宮之浦岳→新高塚小屋→安房川トロッコ道→安房
1993/8/23-26

L:銭谷竜一(4) AL:日下出(4) M:辺見悟(2)、岩花剛(2)

南洋のアルプス,と称される屋久島.亜熱帯から亜寒帯まで変化していく森の中を河口から稜線の最初の一滴まで遡ったこの南国の沢は北国の沢で育った我々にとってまさに天国であり,そのスケールの大きさに終始圧倒されてばかりであった.

8/23

 鹿児島港の居酒屋で札幌のペットボトル入りなどとは比較にならぬ本場の焼酎を飲み干していざ屋久島へ.高気圧に覆われ台風の気配すらなく,このまま一気に入山すべく島の南端に移動して熱帯魚がひらひらと泳ぐ河口の東屋で満天の星空を眺めながらのC0.南国気分を満喫して入山する. 林道終点から沢におりると噂どうり巨岩がゴロゴロ.これは川原なんてものではない.普通の川原にあるようなサイズの石は皆無であり,岩の迷路の中を歩いているような感じである.側面は巨大な木が生い茂る亜熱帯の森あるいは花崗岩の大スラブであり,巨岩の隙間からでは底が見えないほど豊富な水が流れている.パーティ一全員が小人になったような錯覚に陥っていた. 晴天続きで水量が少なかったせいか予定よりずっと早く予定天場に到着.しかしここまでずっと天場になりそうな平地など全くなし.しかしこの川にはバスより大きい,家より大きい岩がゴロゴロしているではないか.上が最も水平に近い岩を探して夏天を建て,天場前の大プールで遊ぶ.海水パンツに水中眼鏡まで持ってきたメンバーにアシスタントは「信じられへん」を連発する.しかし自分こそ全裸で大股を開いて日光浴をしているではないか.

8/24

 翌日朝一番からこの山行最大の核心,コケシスラブを突破する.両岸は高さ100m近い大スラブ.右岸側は確かに「こけし」であった.そして底に直径20Mあろうかと思われる巨岩がチョックストーンの様に挟まり,スラブとの間が滝となっている.初遡行の記録ではここの大高巻きの途中でビバークまでしているが,我々は正面から突破することにした.巨岩前の大プールを右岸へと泳ぎ,巨岩の正面にとりつく.先人はボルトを連打して人工で抜けたようだがこんな無粋なものは無視しよう.この巨岩は落ちてきたときにぱっくりと割れ,その間に二段のチョックストーンがはさまっている.1段目から2段目のチョックストーンまではショルダーしてもわずかに手が届かない.たまらずショルダーしてくれているメンバーの頭を踏んでよじ登る.これだけ苦労して越えても沢まで懸垂下降して戻るのであった. 右俣出合から中俣出合を過ぎるまでは一転して函の連続となる.しかしここは南国,水温はプールと同じぐらい温いので泳いだほうがずっと気持ちがいいのだ.しかしいくらもがいても前に進まないリーダーはすべて引っ張ってもらう.最後の函を越えたあたりから周囲は巨大な屋久杉の森となり,沢相も穏やかになる.こんなところまでは木こりも来なかっただろう,ここがまさしく原生林だ,などと感慨に耽っていると天場にちょうど良いところに先人の捨てたシートや空き缶が….全く無粋きわまりない奴等だ.しかし天までそびえるかのような巨木の間にたなびく焚き火の煙を見ながら飲む焼酎はなんとうまいことか.南国の沢には九州の焼酎が一番似合う.

8/25  たっぷりと水を吸ったザイルの重さにあえぐリーダースタッフを尻目にメンバー達は競い合いながら突っ走る.沢が開けてくると,巨岩の間に敷き詰められた正長石の結晶の上をさらさらと水が流れ中州には杉の巨木が枝を広げる,といった盆栽の鉢の中に迷い込んだかのような世界となっていった.そして上部の函滝を捲いて沢に降り立つと側壁から側壁まで手を伸ばせば届きそうな,日高のような雰囲気となる.その最奥の3段60mの小楊子大滝で記念写真を撮って大高巻き開始.北海道に比べれば赤子のような笹をつかんでぐいぐいと尾根上の石楠花帯まで上がるとそこは白骨化した杉の木が孤独にそびえ,丸い花崗岩の巨岩が転がる一種異様な風景であった.再び沢に戻ってすべての核心が終わった満足感をかみしめつつ南国の太陽の下にからだを投げ出して日光浴を決め込む. 心配性のアシスタントは「こんなに快適でいいわけがない.この後きっとなにかあるで.」とつぶやいているが,ほかの面子はサングラスをかけ,ときには流れの中に寝そべりながら天国の庭のような源頭を詰め,夏道へ飛び出す.下りの夏道でもあるものは巨岩の岩屋の陰で涼み,あるものは石楠花の中に猿を見つけて喜び,ほげほげと小屋まで下る.

8/26  最終日は縄文杉・ウィルソン株をはじめとする屋久杉の銘木を見ながらトロッコ道へ.ここでも屋久猿や屋久鹿を見,巨大な安房川の川原を眺めて屋久島の自然を満喫しながら下山し,島の焼酎「三岳」で乾杯したのであった.
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