前穂北尾根 リベンジ

過去天気図(気象庁) | 2013年04月の天気図 |
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計画書
(更新時刻:2013/04/20 13:56) |
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感想
■自信なし敗退記
26日深夜、沢渡駐車場に着いた我々はうきうきであった。天気予報から、アタック日の天気は最高、最高の登攀が約束されているはずだった。唯一の心配は渋滞でのタイムアウトのみと信じていた。
27日早朝に偶然居合わせた知り合いパーティとタクシーに同乗し、上高地バスターミナルに着いたとき、暗雲が急に立ち込めた。「横尾より上は入山規制だよ!」とバスターミナルの係員が登山者に呼びかけていた。
なんだそりゃと、登山相談所、スマホで出来る限り情報を集めたが、「雪崩の危険があるため横尾より上は入山規制」以上の情報は得られず、横尾山荘あたりで一番詳しい情報が得られるだろうということで、まずは横尾に向けて出発した。
横尾より上に入れないとすると急ぐ必要もないと徳澤園でお茶していると、スタッフの人が詳しい状況をアナウンスしてくれた。張り紙もあり、それらの情報をまとめると、「新しい積雪が涸沢で150cm(聞き間違えか、横尾山荘で新雪50cm、吹き溜まりで1mと判明した)あり、雪崩の危険が高いため、涸沢方面は横尾で入山規制、槍方面は槍沢で入山規制である。入山規制は2日間。蝶はOKだが横尾から稜線までラッセルで7時間かかるので初心者は入山を控えてほしい」との情報を得た。
この時点で、雪崩を避ける道はないかと、慶応尾根でのアタックを検討するためとりあえず慶応尾根の取り付きを経由して横尾に向かう。慶応尾根の取り付きに行くも、やはりトレースはなし。相当の新雪なのでラッセルとなるが、今回はワカンを車にデポしてきてしまった。岳沢方面から下るとしても、雪崩の危険が高いのは涸沢方面と同じ。ということで、慶応尾根からのプランが消えた。
横尾に着いて情報を求めるが、徳澤園で得た情報以上の情報は得られなかった。積雪が150cmではなく、50cmであることだけがわかった。横尾大橋には「入山規制」のロープが張られ、誰もわたる人はいない。横尾のテント場は、全体を沈んだ空気が支配していて、どんより沈殿という雰囲気である。
我々もとりあえず沈殿し、今後について検討することにした。検討した結果、明日規制が解除されれば涸沢まで入り雪の状態を見極める、前穂北尾根が困難ならば北穂東稜に目標を切り替える、ということで明日の朝を待つこととした。しかし思えばこの時点で、自分の中では規制の解除はないだろうな〜と気持ちがすでに切れていたように思う。
朝、5時過ぎに起きると天気は快晴である。6時過ぎに朝食を済ませてトイレに行くと、橋の入り口に救助隊らしき隊員が3名いて、登山者と話している。そして昨日腰の高さだったロープが、頭の高さにまで上がっている。情報を得に近づくと、県警救助隊だった。「雪崩れの危険は昨日と同様に高い、しかし昨日はガスで視界もなく遭難の危険が高かったが、今日はこの天気なので、強制的に止めることはできない、自己責任で判断してほしい」とのこと。しばらく様子を見ていると、アルパイン目的らしきパーティーと、縦走パーティが橋を渡った。
さっそくCLケンゾーに報告し、急ぎ出発の準備をしてから検討することに。7時過ぎにパッキングを済ませ、もう一度救助隊員に、雪崩の危険個所、涸沢テントサイトの状況などを聞く。「先に入ったパーティが初めで、昨日から入ったパーティはほとんどいない。本谷橋までは危険は少ないが、そこから先はどこが雪崩てもおかしくない。一度雪崩てしまえば安定するが現時点でまだどこも雪崩ていない。涸沢のテントサイトは人が入っておらず整地されていない。しかし涸沢のテントサイトまで到達するような雪崩はこの時期にはこれまでは起きていない、だけど今年はちょっと例年と違うからわからない。今日の朝に救助のヘリが飛ぶが、その時に雪崩の状況をチェックする」ということであった。
ここで最後の判断となる。
涸沢まで入った場合、雪の状況、雪崩への警戒など考えると、相当な時間がかかるものと思われた。問題なく昼ころに涸沢に到着できたとしても、午後の雪崩の危険が高まる時間にさらにカールを詰めるような行動はできない。とすると、現実的な目標となる北穂東稜へのアタックは雪が安定するであろう明朝になる。通常でも上高地までは丸1日の行動である。しかし今の状況で北穂東稜にしてもラッセルは必至で通常の時間で行動できるとは思えない。
北穂東稜にアタックするとしても、今回の場合、いろいろなコンディションが運が良い方に賽の目が出て、かつその中で最速で行動できる体力を必要とする。その場合のみ、涸沢まで上がる意味が見いだせる。しかしここで、自問自答してみて、自分としては、その体力に自信がなかった、というかそれは難しいだろうという自信があった。今シーズンの雪山の経験数、その時の体力と今の体力、いろいろ考えてみたが、今の自分にはこの状況での北穂東稜は体力的に困難というしかなかった。
またこれだけ雪崩リスクが高まっている状況の中で、本当に雪を見極められるだけの知識と経験があるかと自問自答した時、こちらも自信が持てなかった。その時点で得られている情報からは自分の知識では、君子危うきに近づかず式に涸沢に入るのを中止するのが最善の判断だと思ったが、それもその判断の強さに自信が持てなかった。涸沢に向かう以上は雪崩地形は避けられない。雪崩3点セットは持っているが、できる対策は距離を取って歩くくらいか。入るパーティは少ないので、救助の手助けは期待できない。降雪後24時間以内が雪崩が多いというが、昨日の昼過ぎまで降雪があったので、まだ降雪から24時間たっていない。午後に雪崩が多いというが、もうすでに山行全体のタイムリミットは迫っており、午後に行動しないという贅沢はいうことができない。また自分たちのパーティが雪崩に遭遇せずに済んだとしても、雪崩によって足止めを食らう可能性は相当高く、涸沢で足止めを食うことになればすなわち下山遅れとなる。
これらのリスクと涸沢まで入った時に得られるものとを頭の中で天秤にかけた結果、前穂北尾根のリベンジに燃えるCLケンゾーに、「すみません、敗退させて・・・」と申し入れる事となった。
絶好の登山日和(に見える)前穂の下を、無念さを肩ににじませイヤホンできゃりーぱみゅぱみゅを聞きながら黙々と先を行くCLケンゾーのあとをぼとぼと追いながら、自分自身の積雪期アルパインへの取り組み方を上高地への道中悶々と自問自答するのであった。
ノントレースの北穂東稜。
雪崩、体力の問題以前に技術的に非常に厳しくなります。
あのリードはシビレルと思う・・・・・・。
トレースつけば楽勝だけど、なければグレードは数段あがってしまいます。
雪山の判断は難しい。
MLでの下山連絡が意味不明(最近こういう意味不明なの多い)でしたが、htokさんの感想で理解できました。こういう判断過程は書きにくいと思いますが、他のメンバーには大変参考になります。ありがとうございます。
あとはKypの感想と下山連絡の趣旨を知りたい。
おつかれさまでした。
小川山で憂さ晴らし
雪山はその時の天気だけじゃなくて、
過去の積雪状況(経時変化を含め)が問題になる中、
徳ちゃんの結論はいい判断だったと思うよ。
まあ、いい判断とはわかっていても、
コヤピーのリベンジに賭ける思いもわかるから
無念倍増なんだろうなぁ…。
でも、何もなかったから再び来シーズン挑戦する
権利も得たと思ってこれからも精進してよ>二人とも。
下山してたと思います。
北穂東陵でも雪崩れるでしょ!
2人ともツッコムパーティよりも良いと思います!
来年ガンバ〜!
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