モミジ谷〜蛭天国の巻
神奈川県
genboku
その他1人 - GPS
- --:--
- 距離
- 5.2km
- 登り
- 588m
- 下り
- 587m
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| 天候 | 晴れ |
|---|---|
| 過去天気図（気象庁） | 2024年08月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関：
電車 バス
|
写真
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谷を上がりすぎて進退窮まったあたりから下部を見下ろす。写真ではそれほど急傾斜に見えない。写真右側の尾根に取りつこうともしたが、そこも厳しそうだった。
感想
春岳沢から中3日、今回はとなりのモミジ谷に行った。夏休みの間にもう一度どこか山に行きたい、という話になり、暑いので近くの沢ということでモミジ谷になった。しかしつい4日前にも奴らの恐怖に身もすくむ思いをしたばかりであるのに、また再びその巣窟にわざわざ出向くというのは一体どうした心理構造だろうと思った。しかもモミジ谷からの詰めの経路についても、奴らの出没が大いに想像できてしまう。
前日の台風7号で水嵩の増加が懸念されたが、さほどではなかった。やはり核心の一つは、春嶽湧水から髭僧の滝までの金目川沿い400〜500mに及ぶ経路だった。
春嶽湧水に着いてそこら一帯を眺めていると、もうすぐにでも引き返すか、余計なことは何も考えず柏木林道から登山でもして帰りたくなった。前日の雨で辺り一帯は湿っぽく、どこか鬱蒼とした雰囲気を醸し出していた。「これは確実にいるな・・」と思わざるを得なかった。しかしここまで来ておいてよもや引き返すわけにもいかず、覚悟を決めて沢足袋などを履いてから、髭僧の滝までの道を歩き出した。
予感は見事に的中した。もう来るわ来るわ、でかい奴から小さいやつまで、歩く少し先を大手を振って待っている。この動きが物凄く気持ち悪い。沢足袋に飛び移ろうというやる気に満ち満ちている。常に沢足袋を見て歩かなければ次から次へと這い登ってくる。優に10匹以上は払い落とした。
いつもは髭僧の滝に向かって左側の経路から橋を渡って右側に移るのだが、遡行図（丹沢の谷）を見ると左側から直進して髭僧の滝の落ち口に至る経路があるようだ。トラロープをまたいで道が続いており、その先にとてもじゃないが渡れない小径木丸太を渡した橋がかかっていた。左側の斜面上部に巻き道があったが、その小橋の手前がまた奴らの巣窟のようなところだった。
先を歩いていたAの沢足袋が総攻撃に遭い、あまりの数に払いきれなくなって血の気を失う様子が垣間見えた。沢足袋の側面から奴らが生えてくるような錯覚さえ覚えた。不思議なことに、何故かすぐ後ろにいる私の方には寄ってこない。この先の道そのものの安全性も定かではないところでのこの攻勢に、這う這うの体で引き返した。
黙っていつものように金目川を渡り、髭僧の滝を左手に右側のルンゼ状の藪を突っ切った。またいつものようにでかい奴らが押し寄せてきたが、ここは我々も慣れたものですいすいと崖を登り沢に入った。ここでようやく一息ついた。急速に気が楽になっていくのが分かった。
さてここからモミジ谷だが、この沢は皆の記録通りほとんど何もなかった。滝らしい滝はなかった。流木がいくつも折り重なっているところも多く、わざわざ沢登りするところではないと思った。むしろ水が涸れてからの岩場歩きは浮石も多くて危ない。奴らも頻繁に出没する。涸れた沢は入り込むところではないなと思った。
1時間ほどで水が涸れ、沢足袋を脱ぐなど準備をしてから上流を目指した。一時は詰めに対する警戒感と奴らに対する恐怖で、モミジ谷を下って春岳沢を登り、前回と同じ東の作業道を伝って帰ろうというような案もあった。しかしそれも大変だということで、谷を上がる覚悟を決めた。
705m地点の二股を左に取り、大岩のあと3〜4つある突堤を乗り越えて、沢筋が3つ又になっているところの左の谷を進んだ。すぐに谷が2つに分かれ、その間の尾根からイタツミ尾根に出る詰めの経路が遡行図に記されている。このあたりから急に傾斜が強くなり、尾根に乗り込もうとしても取りつきやすい場所が見つからない。乗り込みやすい場所を探すうちにさらに谷を上がってしまい、進退窮まった。地面が滑状ですべりやすく、傾斜もきついため下ろうとすると転げかねない。しかしこれ以上谷を上がろうにも手がかりがなくなってきた。左側の尾根に入るしかないのだが、その土はぐずぐずで、取っ掛かりのある木まで這い登れるかどうかというところ。ここで先行するAが、慎重に進むべき足場を算段しながら這いあがり、木に取り付いついた。それからロープを出してもらい、こちらも木まで登った。
しかしまたこの場所が崖っぷちのような狭いところで、2人で立つのがやっとの面積しかなかった。ここからさらに這い登るしかないのだが、左斜め上の木まで10m前後はまたぐずぐずの斜面を行くしかない。ロープの一方をこちらの木で確保し、もう一方をAの身体に固定しようとする際に、念のためカラビナを使った方がいいと思った。手で結んでいざというときにほどけたら取り返しのつかないことになる。しかしハーネスとともに余分なカラビナはザックにしまってしまい、取り出すには慎重な動きが必要だった。何度か取りだそうとしたが、ザックは沢装備などで10�疏宛紊發△襪燭瓠⊇峇崚�に危ないと思って止めていた。いよいよAが体に回したスリングとロープを手で結んだ状態で登りかねないと見てとって、太極拳の動きのようにスローモーションでザックを木の根元におろしてカラビナを取りだした。
それにしても詰めの際のこのいつもの緊張感といったらまるで生きている心地がしない。少し態勢を崩したらすぐに転がり落ちてしまう状態にあるため、必然的に心拍数が上がる。危険な状況に置かれると興奮状態に陥り、瞬間瞬間がとても長く感じる。涸れ沢に入ってから汗が滝のように流れだし、詰めになると今度は汗を気にしている暇もなくなった。
幸いにもこの詰めの山には奴らはほとんどいなかった。ここで奴らが出てきたら悲惨なことになりかねないと想像していたが、実際の詰めの現場では、危険を前に奴らのことは二の次になっていた。
Aが左斜め上の木まで取りつき、ロープを出してもらって追いついた。そこからは木や根っこなどが等間隔で並んでいたので、それらを頼りに這い登り、イタツミ尾根に出た。近くのテーブルベンチで昼食（ラーメンとおにぎり）をとり、蓑毛まで下りて帰った。この日の山の上は涼しい風が吹いていて、とても気持ち良かった。
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