池ノ平峰から胎内川へ下降浦島ゴルジュを下る
コースタイム
- 山行
- 14:00
- 休憩
- 1:00
- 合計
- 15:00
- 山行
- 2:40
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 2:40
天候 | 晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2015年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
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コース状況/ 危険箇所等 |
胎内尾根(廃道)を登り池ノ平峰から胎内川へ下降、川を下り浦島ゴルジュを通り楢ノ木沢からアゲマイノカッチに登り、奥胎内ヒュッテに周回する。沢下りだが完全な沢登りの範疇に入ると思われる。 |
その他周辺情報 | 宿泊 奥胎内ヒュッテ キャンプ場併設 宿泊、温泉 胎内ロイヤルホテル |
写真
装備
個人装備 |
エアーマット
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備考 | ハーネス、8環はテープスリング、カラビナで代用(実使用無し) |
感想
序章(9月12日)
もう10年位前になろうか、廃道になった胎内尾根を辿り一ノ峰まで登ったことが有る。胎内尾根は飯豊連峰の門内岳に突き上げる尾根でなかなか手ごわい登山道として知られていた。いずれ歩くのが困難になるので踏み跡が残っているうちに行ってみようと思い立ったのである。
その頃、ダム工事が始まっていてそのうち浦島のゴルジュも消えてしまうのかと思うと寂しくなって、その前に行ってみたいなあ、と思ったのである。浦島は「あの世への入り口」みたいなところだ、ということからつけられたらしいが、厳しい所なら浦島じゃなくて「地獄」が合いそうだがその辺も興味のあるところである。
一時、山にはご無沙汰だったが、今年復活してそのことが気になっていた。どんな具合かとヤマレコで検索してみると、satwo3という方が、8月に池ノ平峰から2泊3日で下った記録がヒットした。この方は相当のベテランで彼も浦島の変貌を憂いての再訪ということだ。
同じような考えの人がいた、ということに気を良くし早速計画作りに取り掛かった。まず、登るか下るかの問題。沢を登る場合、おそらく私の場合は、浦島の入り口までさえも行けないであろう。やっぱり下りだ。satwo3のように浮輪を利用して下るのが正解である。彼は、2泊3日の行程だが、岩魚釣りをしながらの行程だ。私の場合は、ただ浦島を通ってみたいだけだから楢ノ木沢出合で一泊のテン泊とする。浮輪は季節外れで入手できなかった。“必殺火付け人”を自称する私は久しぶりに胸が騒いだ。日程は19〜20日と決めたら連休中は19日しか出かけられないことになってしまった。なんてことだ。
浦島は諦めて、12日に新保岳を新道から登ってみることにする。半日でも行ってこられるが、真の狙いはつり橋が渡れないという胎内尾根の入り口にある橋と下山口の徒渉部分の下見である。いつでも登られるように、という思いがそうさせる。
下山部の徒渉は、ひざ上10cm、問題なく渡れた。その先の踏み跡も確かについている。この辺は、以前通ったことがあるので心配はしていない。続いて頼母木川のつり橋に向かった。途中工事の守衛さんがいて様相を聞いてみると、水深は普段より10cmほど多いとか。つり橋は通行禁止だが、渡る者もいるとのことだった。工事用の橋は一般の人は通れない、ということだ。
つり橋まで行ってみると、確かにつり橋入り口には、通行禁止と印刷された幅広の黄色いテープが幾重にも巻き付けられていた。脇から簡単に入れるので少し渡ってみたが、足を踏板に乗せると傾きが激しくこれは無理と判断した。
河原へは、吊り橋アンカーの所からロープが下がっていて簡単に降りられる。対岸の橋直下流に岩が出ていて、そこを目標に渉るのがベストと判断して渡ってみると膝上20cm位であった。短足の私としてはこの辺が限界であろう。
しかし、当日はもちろんだが、前日まで強雨が無ければ徒渉は問題ないと一安心である。
第二章(9月19日)
沢中1泊を日帰りに変更し決行とするが、装備は泊まり可能である。登山口5時出発の予定で自宅を3時に出る。コンビニで、おにぎりを調達していたら現地到着がちょっと遅れてしまってなんだかんだと25分の遅れ。
心配した天候は、何とか持ちそうだ。今日は沢の中が主体だから、まず展望は無い。晴れよりも何よりも雨だけ落ちてこなければそれでいい。ガスも薄れてきて、陽の光が射してきて青い空も見えた。猿さんも木の上からじっと私を見ていた。まるで応援してくれているかのようだ。これは吉兆だ。
しかし、廃道の歩きは楽ではない。立木が道を覆い、雨、いや朝露かもしれないが全身ずぶぬれ。ピッチは上がらず。見晴台に出て一休み。木に打ち付けられた標識の文字は前来たときは読めたが、今は判読不明。年季の入った標識だ。
出発して直ぐに建設中のダムが見えてきた。これは変だ。周りを見回すと登りの地形は無い。一端下るのは間違いないが方向が違っている。測量用の杭があったのでそれ用の道に違いない。戻ってみると腰を下ろしていた五葉松の根っこから左手に道がついていた。こういうところでは良くあること、分かっているのになぜ引っかかってしまうのか。目を覚ませと自分に言い聞かせる。
晴れ上がる様相を見せていた天候は、良くなるどころか、徐々に徐々に悪化する傾向だ。これは容易ならない事態だ。雨が降っているのに沢にはいって事故にでもなればセオリーを無視したとのそしりは免れない。撤退やむなしか。しかし、池ノ平峰までは頑張ることにする。
池ノ平峰までは天気に一喜一憂。行くかやめるか葛藤を繰り返しながら登るが、雨は止まずあえなく撤退となる。ああ、これで今年のいや永遠に浦島探訪は消えた。
終章(9月21日〜22日)
新潟県のHPにはダムの完成年は明記されていないが、現場の人は来年完成と言っていた。もう浦島探訪は永遠に無しかも、と思っていたら、ラッキーなことに急に用事が無くなって、再挑戦が可能になった。
荷物は、まだリュックに入れたままだし食料だけ買えば即出発可能である。しかし、先日の反省を踏まえ、作戦を練ることとした。小さなことだが、最初から渓流足袋とスパッツをつけて歩いたがこれはやめた。最初から徒渉だから、それで良いのだが余計なものを付けて歩きたくない。
必需品と言われるラジオも除いた。神さんに一泊前提だと気づかれたくなくて、ロープなど重いものをザックの下に入れておいたが、登山口で入れ替えるのを怠ったので、最初からセオリー通り重高軽低に入れ替える。天気予報も晴天が続き、絶好の山行日となり巻き返しを図る。
自宅出発を少しはやめ、登山口5時きっかりに出発。今日は猿さんの出迎えは無かったが、身体も軽く池ノ平峰7:50分着。胎内川目指して踏み跡を辿る。直ぐに踏みあとは消え、いや外したのかも知れないが、ブナの木の繁茂するところを目安に進んだ。
どうも目標とする滝沢出合より下流に向かっているようでそちらへトラバース気味に進むがなかなか方向を変えられず、ヒドを下ることになる。ヒドでいいのだが、問題は降り口が絶壁になっていた場合である。ロープの長さは10m。出来れば二つ折りで絶壁だとしても5mであってほしい。スリングを足せば、あと1.5m位は問題ない。一本使いでもロープ回収の方法は有るがそれは準備していないのだ。
小さな滝が数か所出てきたが一回ロープを使っただけで比較的楽に胎内川に出ることが出来た。最初からヒドを降りればよかったか。喉元過ぎれば熱さを忘れる状態だ。降りたところは、団子河原とは地図上で推測するとおよそ200m位下流であった。
降りたところの直上流は河原になっていて、大きな岩があった。そこで大休止とする。渓流足袋に履き替えたりスパッツを付けたり小一時間過ごして出発。いよいよ浦島との出会いが始まる。
最初は、普通の河原と言うよりは流れの中を歩くのがメインで、河原を拾って歩くイメージ。そのうちに河原は無くなって岩を伝うことは有るが川中歩きがメインになる。空は青いが陽が届くことはない。狭い所は2、3mの間隔で岩壁が両岸にそそり立つ。水は岩を食むが透き通るような清冽さだ。
まったく足の付かない泳ぎもあったが、愛用の杖が非常に役に立った。水深を測るのにも使えるし、深い所でも川底につけば体の安定を図ることもできる。その杖を流木が作り出した滝を降りるのに気を取られ置き忘れてしまったのは悔やまれる。
薬研沢出合から下流は偽浦島と言われるらしいが私はこちらの方が厳しかった。泳ぎが多く作四郎沢出合に着いたときは寒くて体が震えた。
予定では、楢ノ木沢出合まで本流を行くつもりだったが、左岸から下がるロープを見て、巻き道も厳しいというレコを見たりしていたのでその程度を知りたいのと、震えの来る寒さもあって、トラロープにおすがりすることに。
これがケチの付き始め。道の状態はなんてことも無いが、工事測量用の物と思われるテープに惑わされ、時間をロスしてしまう。楢ノ木沢出合まであとわずかという所で、簡単明瞭な本流を下ることにして、ロープを伝って本流に降り出合まで進む。出合に下がるロープを伝ってテン場に出た。この間で一時間、少なくとも30分はロスしたに違いない。まったく情けない。
時間は16時20分。今日はここでテン泊だ。たき火をバンバン焚いて必殺火付け人を自称する私の面目躍如と行きたいところだが、そうは問屋が降ろしてくれないのがつらい所だ。神さんには日帰りが基本だと言ってあるのだ。後ろ髪をひかれる思いで出発。
楢ノ木沢を覗くと、ちょっと降りられそうになかった。降り口を探して上流へ。降りられそうなところは直ぐに見つかって、降りていくとタモ網が落ちていた。いや岩魚釣りの人がデポして置いたのかも知れないが新品のようだった。
わずかな距離だが三点支持が必要だったりして楽しめるところではある。直ぐにテープが下がっていてアゲマイノカッチの登り口に出る。地図とナビで確認しても間違いはない。たとえ間違っていたとしても登っていれば稜線に出るのは間違いは無い。ここでもまた、工事用のピンクのテープと踏みあとに惑わされたが、直ぐに復帰し上を目指す。
下山口の徒渉は夜になるのは間違いなくなった。いくらたいしたところではないといっても懐電付けての徒渉ではヒンシュクものである。まして目の前が奥胎内ヒュッテである。火の玉が出たなどと騒ぎになったりしたら大変だ。
とにかく稜線まで頑張って、そこでビバークしようと上を目指すが一歩一歩の歩みとなり、ついに懐電に。月明りは有るが懐電で進行方向を定めて潅木を手探りで掴んでの歩みでは遅々として進まない。懐電を照らすと灌木が覆いかぶさってくる。しかし、実際に進むとそれほでもなく普通に歩けるのが不思議な感覚だ。
そのうち傾斜も緩んできて、稜線が近くなったのは間違いが無い。太めのブナの木が出て来ると根元が平になっているものがあり、2、3回仰向けになって休んだ。そしてブナの大木が三本並んでいてその間に数本の細めのブナが絡んでいる所に出た。整地も何もしなくてもそのまま使えるテン場適地でそこでビバークと決める。
22日快晴。5時15分出発。カメラに続いてICコーダーも不調に。アナログに戻って、鉛筆で出発時間を記入したら何とそれを落としてしまう。地面上はブナの枯れ葉に埋まっているがいくら探しても見当たらなかった。鉛筆と言ってもゴルフのスコア記入に使うもので平べったいので枯れ葉の間にうずもれてしまったのか、それとも擬態と化したか。予備を用意しなかったのはミスである。
まあ、あとは降りた時間を記入するだけだから車に筆記具はあり問題は無い。最後の頼りはやっぱりアナログになるのか。文明社会もコンピューターが無ければどうなる。危ういものである。
登り始めるとあっという間に稜線に出る。これを西に進んで最高位から尾根を下れば終了である。のんびりと道なりに進むと真っ直ぐ下りになった。右斜めに降りていくはずの道が真っ直ぐ沢へ降りていくのは変だ。地図を見ると降り口を通り越してしまっていた。少し広い尾根になっていてピークに気が付かなかったのである。ピークピークで地図確認という鉄則を怠った結果である。
今度こそ正真正銘のラストステージの下りにかかる。それにしてもこの辺のブナ林は良い雰囲気である。徒渉があるからあんまり人が入らず、伐採もペイしないのであろう。手付かずのような感じである。徒渉も何の問題も無く8時前に駐車場に着いた。
携帯電話の通じる胎内スキー場まで一走りして、神さんが出かける前に連絡がついてやれやれである。
最近、記録のまとめにやれやれが目につく。ほんと。やれやれ。
妙高さん こんばんは
美しい姫小百合の序章からは思いもよらない展開で、小説を読んでいるようでした。美しい景気と澄んだ水。自分も沢を登っているような緊張感を味わいました。大切な杖、拝見しました。残念ですが命が一番大事!無事でなによりです。
山に慣れていらっしゃるとはいえ、とにかくお気を付け下さいね!
miepp
おはようございます。
遅寝早起きの燧です。心配頂いて恐縮です。
一回目、池ノ平峰までで戻った時、全身ずぶぬれとはいえ、ピッチが上がらなかったんですね。前回、一ノ峰まで行ったときは、テント担いでアイゼンピッケル持って、それでも自分では楽勝だったんです。その時と比べると、無理できないなあ、と反省しました。
神さんは「一人で泊っておっかなくないの」と言ったくらいで気にしていないみたいです。というか見放なされてるのかも。
神さんには言ってないけど、ほんと楽しかったです。って、ぜんぜん懲りていません。
今回は、神さんと十分にコミュニケーションをとって一泊の計画にすれば何の問題も無かったんです。私も焚き火をバンバン燃やして、山はもういいや、というまで楽しめたかも。計画書は必ず作って所定の場所(冷蔵庫にマグネット止め)に置いています。
ともあれ何事も家庭円満、コミュニケーションが基本ですね。これはアイガー北壁を単独で登るよりも困難かも。努力あるのみですね。
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