青ヶ島 カルデラだけで出来た島
- GPS
- 15:07
- 距離
- 31.5km
- 登り
- 1,351m
- 下り
- 1,364m
コースタイム
- 山行
- 2:34
- 休憩
- 4:28
- 合計
- 7:02
- 山行
- 6:31
- 休憩
- 1:48
- 合計
- 8:19
- 山行
- 0:14
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 0:14
天候 | 曇り時々晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2016年01月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
飛行機
ヘリへの手荷物持ち込みは5kgまで。それ以上は超過料金が必要で、ある程度以上の荷物は持ち込み不可の模様。ちなみに、搭乗手続き時にみんなの前で体重を申告させられる。 島内にはタクシー、バスなどの交通機関は無い。レンタカー会社が一社のみ存在。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
大里神社・東台所神社の参道は丸石で作られた急な階段で、滑りやすく危険。特に下りは相当な注意が必要で、岩場だと思って手をつきながら降りても良いほど。東台所神社へは尾山展望公園から往復できるので、そちらからのルートを強く推奨。 地形図に載っている大人凸部への登山道入り口には気づかなかった。いずれにせよ通る人が少なく、かなりの藪こぎになることが予想される。 カルデラ内部の池之沢から三宝港へはトンネルが通じている。山を越える旧道は通れる状態ではなかった。また、三宝港から島の西側経由で集落に向かう道も、途中の崩壊が激しく歩きでも通行不可とのこと。 島の交通量は少ないがゼロではなく、また道が狭いので、事故に対する注意は必要。 |
その他周辺情報 | カルデラ内にキャンプ場があるが、ヘリ搭乗時の重量制限が厳しくまた燃料を持ち込めないことから、キャンプする場合は船による往復にならざるを得ないと思われる。水場もない(滞在中に川や沢、池など天然の真水を一切見なかった。)ので、かなりハードルが高い。 カルデラの底、丸山の麓にサウナがある。利用料は300円だった。 |
感想
前回は、八丈島から青ヶ島に向かうヘリがまさかの故障。そのため八丈島の山を登ったが、やはりどうしても青ヶ島にも行きたいということで、この3連休に再訪した。往路のヘリがなかなか空かなかったが、数日前にキャンセルが出た隙に予約できた。
ヘリは島の北部に西側から進入。今までに見たことのない形の島だ。島の周囲は絶壁で、集落は標高2〜300mあたりに位置している。その奥が外輪山で、さらに奥にある標高100m程度の火口を取り囲んでいる。ヘリポートは海岸のかなり近くにあるが、標高が高いのでヘリを降りても潮の香りを全く感じない。これまでに訪れたことのある他の島とはかなり様子が異なるようだ。
青ヶ島は天明の頃の大噴火で多くの犠牲者を出し、残った島民は八丈島に避難した。そこから帰還までの経緯はWikipediaの環住の項
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%82%84%E4%BD%8F
に詳しい。この環住というキーワードは青ヶ島住民の支えであるらしく、定期便の船に「環住丸」という名前が付けられていたほどだ。(現在は代替わりして「あおがしま丸」)なぜそこまでして島に戻りたかったかと言えば、この恵まれた環境があるからだ。特にカルデラの中は外輪山に囲まれていて、風が穏やかで塩害も無い。噴火でできた地層は栄養が豊富で、農作物がよく育つ。八丈島が飢饉に陥ったときには、逆に青ヶ島に移住してくる人もいたという。ただ、この島では水を大量に確保できないので、稲作には向かないようだ。
一日目は、島の最高峰である大凸部(おおとんぶ)へ。集落から高々150m程度の高度差なので、すぐに到着。目の前に広がる景色に、絶句してしまう。ただの火口なら他にも数多くあるが、このように海に浮かび島全体が一つのカルデラになっているというのは、世界にいくつあるのだろうか。しかもここの面白いところは、カルデラの中にも普通に道が作られていて、建物があり、畑が耕され、工場が動いていて生活の基盤となっていることだ。なによりも、火口なのに全面が植物に覆われている。江戸時代の大噴火からよくこれだけ成長したものだと思う。とにかくいろいろなことがミスマッチで、不思議な気分になってくる。
この日は昼食時間などの関係で、大凸部と集落近辺の神社などの散策で終わった。宿泊したのは民宿杉の沢で、ここは宿の別棟に居酒屋が建てられていて、食事などはそちらでいただくことになる。島の魚はやはりおいしい。寒気が降りてきていて気温はかなり低かったが、炬燵があり暖かかった。
二日目、いよいよカルデラの中を歩くが、まずは大千代の港へ。三宝港がしばしば接岸不能になるため、その代替として造られたそうだ。島の両側に港を造れば、どちらから風が吹いても片方は使えるだろうという発想だろうか。しかし、港はともかく、そこに下りる道が問題だった。なにしろ相当に急な崖なので、道を通しても短期間で崩れてしまい、結果的に大千代港はほとんど使われなかったそうだ。
その道を、行けるところまで行ってみた。車道は途中までで、その下は階段になっている。この風景はすさまじい。階段も途中からは廃道になり完全に通行不可だが、たとえ通じていてもこの階段を上り下りするのはかなり大変ではないだろうか。それとも、後で車道を通す計画があったのだろうか。地形を見る限りそれも無理に思う。いずれにせよ、どうしてここに港を造ろうと思ったのか。いくら何でも無茶すぎる。
なお地形図によれば、この道の途中から大人ヶ凸部(おおにんとんぶ)への登山道が描かれているが、気づかなかった。横の崖にはしごが掛けられているところが一カ所あったが、あれを登れば良いのだろうか。いずれにせよ道標などは全くない。また、大里神社横から火口に直接下りる道もあるはずだが、痕跡は全くなかった。そのため火口へは車道で下りるしかない模様。
この道は途中からトンネルと山腹を這う道に分岐している。後者は現在通行止めだが、人だけは通れる。確かに落石や木の枝が散らばっていて、車が通れる状況ではなかった。
火口の底は緑が豊富で、八丈富士の火口に似ている。時々、農作業関連の車が通過していく。ビニールハウスでの栽培が多いようだ。おそらく集水に使われている青いブルーシートが、上から見ると目立って景観を損ねているように思うのだが、この島はあまり観光に熱心ではないようでそのままになっている。これだけの自然がありながらもったいないとは感じるが、これはこれで良いような気もしてくる。そういった生活感も含めて面白がれば良いだけの話だ。第一観光客が殺到しても、交通や宿のキャパシティーに限度があるので、あまり宣伝しても意味が無いだろう。
丸山に登る前にその西側をぐるっと回って、三宝港へ。かつての山越えルートはやはり廃道で、通れそうになかった。そのため歩行者もトンネルを使う必要がある。この500mのトンネルは島の外輪山を貫いていて、港とカルデラ内を急傾斜で直接結んでいる。島の西側の、港と集落を結ぶもう一つの道は、崩壊のため復旧の見通しが立っていない。結果的に、集落から港へ向かうには、まず外輪山の上を東に向かい、そこからトンネルで火口に下り、丸山の周囲を回って南西側に行き、さらにトンネルで外輪山の下を通過するしかなくなった。これが島の生命線だから、かなりの綱渡り状態である。もし山が再噴火したらこのラインは使えそうにない。避難はヘリポートから大型ヘリでのピストン輸送しかなさそうだ。
ナトリウムランプに照らされたトンネルを抜けると、青空が広がる港に出た。日曜日ということで定期便はなく、完全に無人だった。ここはテレビなどで時々紹介されるように、港が狭く波も激しいので普段は船が陸揚げされている。その際に船が上から吊られて空を移動する風景が面白いのだが、当然今日は何も動きはない。さすがにこの場所は潮の香りに満ちていて島らしい。強風でしかも寒いので、しばらくの滞在後またトンネルを上り返した。
次は島の中心部、丸山に登る。天明の大噴火時に噴火でできた小山である。山頂の富士塚の隣に展望台があり、周囲の景色を眺められる。ここから、お鉢巡りで丸山を一周できる。つまり丸山自体がカルデラであり、周囲の外輪山と合わせて二重カルデラを形成しているわけだ。さらにこの青ヶ島自体が巨大な海底火山の外輪山であるというから、不思議なものだと思う。
丸山を下山し、地熱を利用したサウナ施設を利用する。別に硫黄臭いということもなく、普通のサウナだ。そういえば、この島では硫黄のにおいを全く感じない。そういう火山もあるということなのだろう。
これで、思い残すことはない。朝、集落から出発して外輪山を下り、旧港と現港を見てカルデラとお鉢を一周し、サウナにも入ってまた外輪山を登り宿に帰った。これだけの全過程を徒歩で行動しても、まだ時間に余裕はあった。やはりコンパクトな島だなあと思う。レンタカーを借りたり、あるいは歩きが速い人ならば一泊でも十分かもしれない。しかし訪問が難しい島なので、二泊は見ておきたいところ。
そういうわけで、なかなかに濃密な二泊三日の旅だった。実は、八丈島でマラソン大会が開かれていたからか東京行きの飛行機が予約できず、八丈島でさらに一泊することになった。そのため前回行けなかった場所を訪問できて、これで八丈島にも思い残すことはない。しかし、また何年か経ったら再訪したくなるだろうと思う。そのとき2つの島はどう変わっているのだろうか。あるいは変わらず今の生活が続いているのだろうか。
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