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夢枕獏さんの原作小説は読んでいませんが、谷口ジローさんの漫画で見つけて読んで、それもだいぶ昔ですが、登山家やクライマーの世界はこんなんなんだ、と同じ山好き?として理解し得る部分と同時に多分に別世界感を感じたのを覚えています。
なので、この映画がamazon primeで公開されてから結構経つと思いますが、確かに前から気になっていました。
少しだけ観るのを躊躇っていたというか避けていた理由は、可笑しいかも知れませんが、この映画のサムネイルや動画紹介の"画のタッチ"のためです。
正直、自分の好みじゃなかった…。
しかもついでに白状しちゃうと、原作の漫画版も、谷口さんのシリアス/劇画タッチが苦手で、存在を知ってから実際に読むまで時間が掛かったのです…。
漫画は内容よりも絵の第一印象(好み)で、ドラマや映画も出演者の顔ぶれで選んでしまうのは皆さんも同じでしょうか?
実際に観てみると、まずその避けていた感覚を覆されました。
人物こそ何かのっぺりしたベタ塗りタッチのようですが、山や街などの背景や効果がまるで写真を見るようなリアリティがあり、特に山や岩壁の表現などはすごく迫力がありました。
そしてまんまと?この映画に惹き込まれてしまったのです(だいぶ単細胞で容易い私)。
世界最高峰エヴェレストの人類初登頂をめぐるミステリーを解き明かそうとする1人の山岳ジャーナリスト(深町誠)と、そのエヴェレスト登頂を誰も成し得ていない、より困難な手法・条件で成し遂げようと執念を燃やす1人の登山家(羽生丈二)の物語です。
結局、羽生は山から戻らず、深町にそのミステリーのカギとなるものを残します。
映画の最後、「何故誰よりも先により高い頂を目指すことに命を賭けるのか?今は解る。そこに理由などない、と。ある者にとっては、山の頂も通過点でしかない。登り切っても、歩き続けるだけだ。」のメッセージで締めくくります。
人は、適度に楽しんでいるうちは良いのですが、より高みを目指す性質を一定量持っているんだと思います(「精神的に向上心のない奴は馬鹿だ」夏目漱石『こころ』)。その原動力が名声なのかお金なのか、達成感や満足感なのか人それぞれだと思いますが。
ただ、こと山の場合、相手は自然。いくら準備しようが科学が進歩しようが、人間が想定し得ないリスクが無数に存在するでしょう。目指す先にはより厳しい状況とリスクが待ち受けている。でも、それでも挑戦する。そして…、歴史は繰り返す。
登山家の宿命みたいなことを思ってしまいました。
そんな映画です。
蛇足ですが、この映画、原作と多分に異なります。映画では色々と端折られているところが多いと思いました。なので、原作を知っている人もそうでない人も、是非真っさらな頭で本作をご覧下さい。そしてまた原作に戻ってみたりで両者の違いを見つけつつ2倍楽しむ、というのはいかがでしょうか?
皆さんからも本作の感想が聴けたら嬉しいです。
では、次の映画でまたお会いしましょう!
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