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2018年10月01日 23:11未分類全体に公開

ありがとう、さようなら。

 先日、趣味の仲間が山行中に滑落事故で亡くなった。彼はとても体力があり経験豊富で、いつも冷静でいて用心深く、安全な行動を心掛ける人だった。危なげな場所で油断して気を抜いたり、無茶な行動を取ったりするような人じゃない。滑落の瞬間、何かがあったのだろうか?不可抗力な何かが?動物に出くわして驚いたのだろうか?何かに気を取られたのだろうか?滑落の原因が何だったのか、う〜んと考えてしまう。
 遭難の知らせが入った初日は、強い彼のことだから、道迷いかな?ビバークしてそのうち戻ってくるかな等と楽観的に考えていた。でも次の日も見つからなくて、大怪我をして動けないでいるのかも知れないと、いよいよ心配になってきた。彼のline にメッセージを入れても既読にならない。翌日、私は地図を見て、彼が過去に歩いた場所等調べた。捜索本部に電話をかけて、色々聞かれて話したり、情報提供したりした。捜索隊の方々も広範囲に、懸命に捜してくれていた。この電話が僅かでも捜索の役に立てたらと思った。その後暫くして、捜索本部の方から「発見されました。残念ですが…。色々有り難うございました。」と連絡が来た。とてもショックで、遺体でというのが信じられなかった。生きて発見されてほしかった。翌日のニュースの記事を見る度に、現実なのだと、もうこの世に居ないのだと思うととても悲しくなった。もっと聞きたいこと、聞いてほしい事が沢山あった。遺体が見つかった数日後に、彼が滑落した山頂を訪れた。もしかしたら彼に会えるかもしれないと思って。もしも彼の魂が、この藪だらけの場所に未だに留まっているならきっと寂しいだろう。私は手を合わせ、祈り、彼に話しかけるつもりで色々喋った。最後に「あなたの家族が待っているから、家族のところへ帰りましょう」と話しかけた。。もし彼の魂がまだそこに居たなら、聞いてくれていると良い。山を降り、彼が住んでいた辺りまで車を走らせ、近くのコンビニで助手席のドアを開けた。「さよなら、またね。」と声をかけた。もし彼の魂が乗っていたら、家族のところへ帰れたと思う。これで寂しくない。 遺体の発見から私は、彼が安心して次の世界に旅立てるように、時間のある時は仏壇の前で手を合わせて祈っている。
 葬儀の前日、私は崖のあるバリルートを歩いた。彼の最後の山行は途中で終わってしまった。心残りだろうか。旅立つ前に、面白いルートを最後まで歩きたいと思っているかもしれない。スリルのある藪だらけなこのルートは、彼も好きそうだ。きっと一緒に冒険を楽しんでくれると思う。彼の魂と一緒に歩いているつもりで絶景のバリルートを歩いた。翌日、お通夜とお葬式に参列して、本当にお別れをした。
 これらは、感謝と別れを伝える、私なりのやり方だ。
 
 彼との思い出は、どれも刺激的な楽しい思い出ばかりだ。自転車に関しては、自転車仲間達との長距離サイクリングや、極寒の初日の出サイクリング。初日の出を見た後、寒風吹きすさぶ中、彼が振舞ってくれた熱いコーヒーと焼きたてのアンコ餅がとても美味しかった。彼のチョイスするコースは上り坂の多いコースばかりで、とても疲れたがいつも凄く楽しかった。当時のことを今でも思い出しては懐かしく思う。
 山の思い出は春に山菜採りに連れて行ってくれた事。山梨の某山域に、一緒に天然のコシアブラを採りに出掛けた。車で入れない場所は、途中から自転車で進み、そこから藪っぽい道なき道を歩いて登って行った。地図を見て少し迷ったりしながら、目当てのピークに辿り着いたと時は、宝島を発見したような気分だった。車に帰る途中彼は、私に向かって落ちて来る落石にいち早く気が付き、避ける事が出来た。子どもの頭くらいある大きめの落石だった。彼が叫んでくれていなかったら、私は直撃弾を受けて怪我をしていたと思う。色々な事があってとても冒険的な登山だった。新鮮な天然コシアブラの天ぷらは美味しかった。
 彼は去年から、某レースに出る為のトレーニングを熱心に行っていた。残念ながら今年は選手になれなかったけど、選考に手応えを感じていて、次回も挑戦したいと言っていた。彼がそのレースを走るところを見てみたかったなぁ。
 彼はチャレンジや冒険の楽しさ、他にも良くも悪くも色々な事を私に教えてくれた。どの体験も、その時の気持ちも、一度の人生の中でそうそう経験できるものでは無い貴重なものだ。もうこの世で彼に会うことは出来ないが、彼が教えてくれたことや思い出はずっと心の中に残り続けるだろう。これからも出来る範囲で、冒険的でタフな山行にまた挑戦したいと思っている。 
 友達が、彼と話す夢を見たという。同じ位の時期に私も彼の夢を見た。彼を交えて皆で笑いながら喋る夢。夢の最後に、彼の手を両手で握って「じゃあまたね!」と明るく挨拶をして別れて、夢が終わった。彼が知り合い達の夢に出て来て、お別れの挨拶をして行ったのかも知れない。
 いつか私もあの世に行った時は、また彼と沢山話をしたい。怒られるかもしれないが彼に「あの時なんで滑落したの?滑落の瞬間は、どんな事を思ったの?」と、気になるので聞いてみたい。有り難う、さようなら。またいつかどこかで会いましょう!
 彼のご冥福をお祈りします。
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