山の歩き方

2012年06月30日 13:52未分類全体に公開

　　　　　　　　　　　　　　　　山形のサクランボ狩り
《　山の歩き方　、その１　》
　いまだに山の歩く自分のペースがつかめていない。
　10分か15分くらいかなり早いペースで歩いては休む。それがだんだん頂上近くの急な登りになると、休む回数が頻繁になる。妻から「もっとゆっくり、ゆっくりだったでしょう！」と、以前ガイドさんと一緒に登った時のことをあげ、叱咤一喝されてしまう。
　数年前から私が山に登りだし、そのうち妻も誘うようになった。始めのうちは私が先を歩いて、誘導しているつもりであったが、近ごろは途中から妻の後を追いかけることがしばしばになった。男のメンツなどないけど、これは少し寂し過ぎる。
　あるツアーで、準備運動をしてから、ガイドさんの後に着いて歩きだした時、こんなにゆっくり過ぎてと、初めは歯がゆく思った。しかしそのゆっくりペースが次第に身体を慣らしてくれるのだろうか、急峻に差しかかっても、ほぼ同じペースで歩め、そう足に来るようなことがなかった。
むかし、山岳部の人が山は1時間歩いて10分休むペースだと言っていたような気がする。しかも大きく重いリックをしょって、前の人の後を地面だけを睨んで一歩一歩、ただ歩くだけだとも・・・。その時、そんなにつらい思いで山など登りたくないな～と、山は少し敬遠していた。もっとも、今の山岳部のことはよく知らない。ともかく山は私みたいにガツガツ登るものではないらしい。走るにしても泳ぐにしても、その長短に合わせたペース配分を取るのが当り前だろう。山はほとんど長距離、長時間だから、普段歩くくらいのゆったりペースでなくてはいけない。そうすればそう一気に疲れが出ない。頭では分かっていても、まだ身体が覚えてくれない。ついつい始めは元気だから足の運びが早まってしまう。
　普段の散歩をするくらいのペースならば、何時間歩いても疲れないように、山もそんな歩調で登れるようにしていきたいものだ。

《　山の歩き方、その２　》
　山にでも登ってみるかと、始めに選んだのが、箱根の金時山だった。この山は中学生たちが遠足で登るくらいだから、何とかなるだろうと思ったのだ。しかし長い間、勤務先と自宅くらいしか歩いていなかったから、最後の方の急な登りになって、一気にペースが落ちてきた。ほとんど10mか20m歩いては一呼吸で、後から来る人に次々に抜かれて行った。この時も始めから飛ばし過ぎたこともあるが、まだ山を登るまでの身体になっていなかったからだと思う。その時はまだ体力に自信があると錯覚していたから、私が立ち止まって休んでいる脇を、若い女の子たちが横目で私を眺めてスイスイ登って行ってしまうのを、恨めしく情けなく気持だった。数年経った今では、少しだけ達観したのか、人に追い抜かれることに何ほどの抵抗感もなく、「お先にどうぞ」と言えるようになってきたようだ。
　あたり前のことだが、マラソン・コースを短距離選手のように走ってはいけないということだろう。
　それと冬にはあまり山へ出かけないこともあって、春先に、さて！と初めて登る時にはやはり身体がなまっていて、かなりきついのを感じる。山で出会った人たちも、よく春先にそのようなことを言っていた。シーズンオフからいきなり登り始めるのではなく、少なくとも出かける少し前から、それなりの体調を整える準備が必要みたいだ。若いうちはともかく…。

《　山の歩き方、その３　》
　学生の時、友達Ｏ君と２人で少しばかり登山らしきことをしていた。いつもそのＯ君が私の先を歩いていたが、私との距離が次第に開いてくると、Ｏ君は時々立ち止まって私を待ってくれていた。ところが、私がその待っていてくれた地点にやっとのことで到着すると、すぐに彼は又歩き出してしまった。彼は私を待っていてくれた間、少し休みが取れたはずだった。ところが私は今着いたばかりで、私もそこで少しは休みたいよ～という思いであった。
このようなことは２人以上で山に登る時にはよく起こることだろう。人によって体力に差もあるし、なかなか同じペースとはいかない。が、そんな時には体力のない人に合わせるのが山の常識なのかもしれない。だからだろう、団体で出かかる時には、落ちこぼれそうな人は、先頭のガイドさんなどのすぐ後に着くようにさせている。
　私より体力のない人はそういないと思うが、もし私より遅れてしまった人が出たら、私はその人が到達しても、その場で少し休みを取るように心がけたいと常々思っている。
　こんなことは当たり前かな？ところで、その友達だったＯ君と、卒業後はほとんど山に一緒に出かけていない。彼は山で遅れてくる私の到着を待って、「こわい？」とよく訊いてきた。休むたびに何度もこの〝こわい〟を聞いて、心の中で、〝山を歩いていて、怖いはずがないだろう〟と、いささか反感を持ってしまった。ところが後でわかったことだが、彼の出身の北海道では〝疲れた〟ことを〝こわい〟と言うらしいことを知った。
　これだけが理由でもないだろうが、彼とは卒業後ほとんど切れてしまった。でも、山登りの味を教えてくれたことには感謝している。それに〝待つ〟ことも・・・。