奥多摩に2人で登山に行った時のことだ。
私は遅いので健脚の友達に山小屋まで先に行って、待っているようにと頼んだ。
空は晴れ少し寒かったが空気は澄み、たくさんの紅葉の葉を踏みしめて歩く道はとても楽しかった。私は遅い歩を進めながら満ち足りた気持ちに包まれていた。
そのうちに山の天気の例え同様、急に空は暗くなり雨粒が落ちて来た。そしてそれはいつのまにかミゾレ交じりになり、私は先を急いだがやがて雪へと変わっていた。
私は約束の山小屋への道のりをあきらめて、非難小屋へ入りホワイトガソリンのコンロへ火を点けた。
インスタントラーメンを食べ終えるとありったけの服を着てシュラフカバーにもぐりこんだ。寒さには慣れている、いつしか眠りについていた。
朝になりガタガタガタという音で眼が覚めた。
友達が心配して山小屋から非難小屋へ引き返して来てくれたのだった。
そして、おはようと言うと私の顔を見て生きているかと笑った。そのあと待ち合わせの場所に行けなかったことを詫びたり話をした。
友達がところでさっきこの避難小屋から青白い顔をした女性が飛び出して行ったけどどうしたんだろうと私に聞いた。
私はいいや昨晩は私しかここに泊まっていなかったけどと答えた?
友達はえっっと驚きながら顔を曇らせた。
そしてそんなはずはない片方に髪を三つ編みにして、目はぱっちり二重でと言われて
私にも少し見覚えがあった、顔はほっそりしていて白い服を着ている20代くらいの女性。
友達はその通りだと言った。昨夜寝ぼけながら目を開けたとき、窓にその顔が一瞬見えた気がしたのだった。
2人は口を開けたまま閉じられなかった。
友達がそう言えば奥多摩の避難小屋でそういう話をすごく前に聞いたことがあるなーと言いかけてはっと止めた。
私は背筋がとても冷たくなっていった。
ただの2人の思い過ごしかもしれない、
足跡を見てみようと思ったけれどしんしんと降るぼた雪がすべての足跡を隠していた・・・・
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する