📖通勤読書［橋姫（宇治十帖）］

源氏の腹違いの［八宮］、世から忘れられた親王で、仲睦まじい御夫婦なのに子がありませんでした。

長い年月ののち、可愛い娘が生まれ、引き続いてもう一人。

しかし、女君は亡くなってしまいました。

池の水鳥がつがい離れず泳いでいるのを羨ましく眺めて
八宮〈打ち捨てて　つがひ去りにし　水鳥の　かりのこの世に　たちおくれけん〉

（父鳥を打ち捨てて母鳥が立ち去ってしまったあとに、どうして雁の子供たちが残されてしまったのか）

上の姫〈いかでかく　巣立ちけるとぞ　思ふにも　うき水鳥の　ちぎりをぞ知る〉

（どうやって大きくなったのかと思うにつけ、母上に先だたれた憂きさだめが思い知らされます）

若姫〈泣く泣くも　はね打ちきする　君なくば　われぞ巣守に　なるべかりける〉

（悲嘆に沈みながらもお育て下さった父上がいらっしゃらなかったら成人することはできなかったことでしょう）

＊［巣守］＝孵化しない卵


【写真】ホオズキ

（ほおずきの中身を出してズーズーと上手に鳴らす人がいたっけ）居彷人