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その日、仕事から帰っていつものようにファンヒーターを点けるとティコは炬燵から出て来てヒーターの前に寝転んでいた。
いつもの何気無い行動。あまり気にも留めない。
30分後、ヒーターの前でバタンと嫌な音がした。見ればティコが体を伸ばしてひきつけを起こしていた。
何?てんかん?
直ぐには理解出来なかった。1、2分程度?そんなに経ってないかも。本当に短い時間でぐったりしてしまった。
何も出来なかった。
朝も異変は感じられる事なく、いつものようにヒーターの前に寝そべり、私は熱くなったティコのお腹を撫でながら「お前、熱くないのか?大丈夫なの?」と話しかけていた。
本当に気持ち良さそうだった。
以前飼っていた若丸は19年近く私の側にいてくれた。ティコまだ10歳なのでその時が来るのはまだまだ先だと信じて疑ってなかった。
本当に突然。
辛い。
悲しい。
その一瞬を何も出来ずに見ているのは辛いが、私がいる時で良かった。
帰ってから冷たくなったティコを見るのはもっと辛かっただろう。
10年前のあの日、保健所に連れていかれそうな子猫がいると職場の人から聞かされ、若丸が旅立って1年半、もう2度と猫は飼わないと思ってたけど結局引き取る事に。
可愛いキジトラのティコ。
ツンデレのお姫様。
上手に撫でてあげないとゴロゴロいわない。
外に出ることなく、狭い家の中だけの暮らしだったけど幸せだっただろか?
もっと何かしてあげられた事があったのでは?
もっと。
でも私にはまだクロというハチハレ猫がいる。7歳で甘ったれのやんちゃ坊主だ。
この子にはティコの分まで元気で長生きして欲しい。
一人山を歩く時、その時の風景、道、音を目や耳で感じながら色々な事を思う。
仕事の事、家事の事、旦那の事、子供達の事、親の事、友達の事、天国に旅立った犬や猫の事、ティコやクロの事…。
これからも歩きながら思う事だろう。