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落葉広葉樹は気温が低下すると、光合成が低下するとともに葉からの水分の蒸発を防ぐ為に落葉に向かいます。枝と葉の間に離層が形成されていきますが、それは葉柄の外側から起こります。それにより、先ず師管が閉鎖され、葉で光合成されたエネルギーの元になる糖が幹にいかなくなります。次に導管は閉鎖され水分の行き来もできなくなり、枯葉となって落ちます。
さて、カエデの紅葉についてです。基本となるのは3種の物質、クロロフィル(緑色)カロチノイド(黄色)アントシアン(赤色)で、これらの化学構造は全く異なります。春から夏に葉が緑であるのは、葉の細胞中にクロロフィル(葉緑素)が多く活発に活動しているからです。クロロフィルは光合成を行って糖を合成し、それが植物の成長やエネルギーの元になっています。クロロフィルは分解しやすいですが、この時期にはどんどん生合成されて補充されています。カロチノイドは黄色〜橙色の色素で、春から夏にも葉の細胞に存在していますが、圧倒的な緑色に隠れています。
秋になって気温の低下(日最低気温が7℃とも言われている)が始まると、光合成やクロロフィルの生合成も低下し始め、葉のクロロフィル濃度が減少し始めるので、いままで緑色に隠されていたカロチノイドの黄色が現れるようになって、葉は黄色になっていきます。この頃から、枝と葉の間に離層が形成され、最初に師管が閉鎖されることにより、一部光合成され続けている糖は枝に行かず、葉に留まるようになりますが、ここから赤い色素であるアントシアンが生合成されるようになります。この赤い色素が蓄積するようになって、葉は赤色になっていきます。同じカエデの木であっても、日照によって、その進行の速さも違う為に、きれいなグラデーションも表われて、私たちの目を楽しませてくれるのでしょう。
イチョウやブナなどの様に、黄葉する植物は、赤色を発するアントシアンが生合成されないので、カロチノイドの黄色が持続します。アントシアンは植物の生存に普遍的には不可欠ではないので、その合成酵素をコードする遺伝子がないものと思われます。
紅葉はこの様に、ある程度の期間が必要となります。夏が猛暑であると、植物が弱って、その後の気温の低下で、急速なクロロフィルの減少が起こり、紅葉の期間がとれなくなり、枯葉となってしまいます。また、紅葉の期間に雨が多いと、アントシアンの生合成が低下し、色づきが悪くなります。今年は紅葉がやや遅れてはいますが、場所によっては良い感じになっているようです。紅葉の山を楽しみましょう。
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