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山登りはレジャーの一つです。楽しめれば良いので、本来は何を持って行こうが自由だと思います。しかし、山には市街地にはないシビアさがあり、持っていたことで命が救われるグッズがあったりします。そして、一度にカバンに入る荷物には限りがあります。そこで、山道具はまず何から揃えて行ったら良いのかという永遠の命題に対し、リスクを分析してアプローチしてみよう思います。ビギナーの道具選びや、何を持っていくべきかを考える参考にもなるように、まとめたいと思います。
1.前提条件
楽しむことが目的ですが、それには、(1)安全に生きて帰ること、(2)予定日数を上回る山行をしないことが前提です。
2.リスク
あらかじめ想定される危険(リスク)を分析し、対策を立てておくことで、リスクを回避できる可能性が高まります。本稿ではリスク分析からアプローチします。
危険には、突発的な天候悪化、山崩れ、噴火など、備えにくい危険(ハザード)がありますが、リスクを考えることで、考えないよりはハザードに対しても良い対応ができるはずです。
3.(1)基本装備
・運動靴
・長袖シャツ、長ズボン
・リュックサック
・ファーストエイド/修理キット
・水
・食料
・衣類
・お金
・保険証、免許証、カード類
・携帯電話
基本的に、家にあるものだけで山に行こうとした場合、人についていくだけの場合に家にあるものの中で必要な持ち物です。ただしこれだけでは不足なので、家には無いだろうと思われる、買うべき用品は次のカテゴリにまとめます。それぞれの装備の選定理由は下記の通り。
【運動靴】山は平らな道ではないので、運動しやすい靴の方が疲労が少ないです。
【長袖長ズボン】皮膚の露出を少なくすると、日焼け、怪我、虫刺され対策になります。
【リュックサック】不安定な道では転倒しやすいので、両手は自由にしておきます。
【ファーストエイド】湿布、痛み止め、絆創膏、軟膏、ポイズンリムーバーなど。ハンカチやタオルも代用として含めたりします。
【修理キット】持ってきたものが壊れた時の対策。ガムテープ、ソーイングセット、針金、細引き、ナイフなど。
【水】水は万能です。何かを混ぜればその他の飲料になるし、料理、傷や目に入ったごみの洗浄などにも使えます。清涼飲料は飲むしかできないので、同じ重さなら水の方が果たせる役割は広いので、必ず水を持っていきます。
4.(2)まず買うべき基本装備:道迷い、帰宅遅れ、雨対策
○コンパス(山岳用方位磁石)
○紙の地図(2万5千分の1地形図相当)
○GPS
○ヘッドランプ
○レインウエア
・折りたたみ傘
添付画像では、警察庁の発表資料から、山岳遭難の態様別件数の割合を抜き出しました。それによれば半数近くが道迷いのため、道迷い対策が重要です。各用品の選定理由は次の通り。
【コンパス、地図】電池がない、携帯が圏外である状況でも、現在地、方位、地形を把握するために必要です。一人一人持ってもらいたい必須装備です。
【GPS】現在地を正確に把握できるので、ぜひ活用して遭難防止に役立てたいです。スマートフォン用アプリ等もありますが、山では電源と電波が入りにくい、雨に濡れる危険もあることを念頭に、製品を選びたいです。専用品は高額な場合もあるので、きちんと使用できる1名以上が持っていれば良いと思われます。
*たとえば、経緯度が印刷された地図を持っていれば、iPhoneなら圏外でもコンパスアプリでGPSで測位した経緯度を確認することで、現在地が定位できます。
【ヘッドランプ】日暮れ後の山は真っ暗で、道も踏み跡も見えません。万一日暮れを過ぎて行動しなければならなくなった場合、明かりがなくては何もできません。見えないことで野生生物と遭遇する危険もあります。視界と両手の自由を確保するために、ヘッドランプは一人一人持ってもらいたい必須装備です。
【レインウエア】雨合羽です。1回しか山に行かない。しかも100%晴れの日だ。というなら100歩譲って100円のビニール合羽でも良いでしょう。しかし、衣服が濡れると体温を奪い、低体温症で死亡する危険があります(トムラウシ山遭難事故など重篤な事故につながる)。ビニール合羽は雨の浸入こそ防ぎますが、運動に伴って出る汗が内部で結露し結局体を濡らしてしまいます。専門店で販売されているゴアテックスなど、透湿素材で運動を考えられた縫製のレインウエアは是非揃えておきたい装備です。どちらかといえばハザードの対策になりそうですが、遭難原因として率が高く見えないのは、多くの人は雨が降ったら山行を中止することと、山登りを趣味とする方の中では専用レインウエアの所有率が高いからという考え方もできます。天気予報は外れる場合もあるし、日本は雨がよく降るので、私の中では、透湿生地のレインウエアは靴より重要な装備と思います。
5.(3)できれば買っておきたい、安全対策装備品
○熊よけの鈴
○ヘルメット
○熊撃退唐辛子スプレー
実はヘルメットと熊撃退スプレーは私も持っていませんが、いざという時生還できる確率を上げるためにはあったほうが良いと考える装備です。選定理由は次の通り。
【熊よけの鈴】これは安価です。熊は基本的には臆病なので、人の気配がすると逃げていくといわれています。「人がいきなり現れた」という鉢合わせが事故につながっています。鉢合わせの状況を作りにくくするために有効です。
【ヘルメット】警察庁の資料では、道迷いの次は、滑落、転倒が続きます。また、転落、落石が原因の事故も発生しています。我々は甲殻動物ではないので、全身を装甲することはできませんが、バランスを崩した時にその重さでぶつけやすく、重篤な怪我につながりやすい頭を外傷から守ることは、重要と考えます。ハイキングでヘルメットを着用している人はほとんどいないので、していると恥ずかしく感じますが、大事な装備と思います。
【熊撃退唐辛子スプレー】万一遭遇した時に、戦闘では勝ち目はありません。人間が熊に勝つためには、銃、罠ぐらいしか手は無いと思いますが、日本では銃の携行などできません。昨今、熊と遭遇して重傷を負うなどのニュースをよく聞きます。熊撃退スプレーを持っていることで命が救われるなら、持っておくべき装備でしょう。
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