だいぶ昔、Ｈ氏が監督就任してからのこと。H氏がインタビューで『野球は愛である』との考えを表明された。その確信を得た話しぶりに、“一芸に秀でた者は違うな”と感心した。しかし、どうして野球に愛があるのだろうか、変だなとすぐに思った。相手に心を合わせることが愛なら、投げたボールをバットに当てることは正しく愛のように思えるのだが、果たしてそうか？空振りさせようとする投手とヒットを打ちたいバッターに、果たして相手を愛する気持ちはあるのだろうか？むしろ、バッターの胸元へ避けなければ死球すれすれに投げることを得意技とする優しくない投手もいたので、愛があるどころか、その反対の悪があるとしか考えられない。もしも球団のマークに💛を掲げたら、それだけで対戦する球団が卒倒し戦わずして勝てるか否か？ただ超楽観的に考えると、相手に笑ってもらい集中力を削ぐ効果はありそうだ。しかし、自軍の選手が愛に目覚め対戦相手を愛したら戦力低下は甚だしいと思われる。確かに、犠牲バントは味方のための犠牲的精神だが、相手にとっては嫌らしい作戦。それらを愛とするなら、是非そこら辺の論理的説明を崇高なＨ氏から教えを請いたのだが、今まで私の耳元に届くことはなかった。しかし、そう言う私は、人間として純なところのあるＨ氏には好感を持っている。
百歩譲って『野球は愛である』なら『山は愛である』の方がよっぽど真実に近いように感じる。悪意を持って山に登る人がいたら、山岳サスペンス作家が労なくしてネタが転がり込んで大喜びしてしまう。自分の経験では、迷惑を善意と勘違いする輩はいたけど、それでも悪意は持っていなかった。愛の成立は対象があってこそで、一人ではなかなか難しい、自己愛に完結しては自家菜園で育てた野菜を自家消費しているだけのようだ。成果物は少しでも隣近所にお裾分けしてこそ、自己愛を超え無償の愛の実践になる。単独行の場合は相手が山とか自然とかが対象だ、なんなら山小屋で薪割りの手伝いをすれば、さらなる愛が広がる。複数パーテイーなら、時には嫌なことも生まれるが、普通は一緒に行くこと自体楽しく愛が生まれる。野球の相手は敵だが、山には間違いや勘違いをしなければ敵は存在しない。つまり、どう考えても野球より登山の方が愛に溢れていると思うのだ。だからといって、ここで登山の宣伝をしたいのではありません。
ネットで検索すると、愛には無数のURLがあるが、『山は愛である』は見当たらない。そんな無数の解釈と説明が溢れている中で、一番異彩を放つのは、やっぱり宮沢賢治の次の言葉だと思う。
『世界ぜんたいが幸福にならないなら個人の幸福はあり得ない』
この賢治のように皆が考えたら、格差や貧困は少なくなっていくと思うのだが、いつの時代も現在も、禍を皆で乗り越えようではなく、自分のチャンスと考える人もいることは、とても残念であります。
賢治の言葉から、愛の数式を考えました。 Z=X/Y 超簡単な式で表しました。
記号説明：
X⇒ 対象（友人、隣人、特別な人、世界の人々、自然、宇 宙、etc. ）
負でない数値（正の数値でないと、解釈が成り立たなくなるので）
Y⇒ 自己意識（エゴの度合い） ０以上 等身大は１
Z⇒ 愛
つまり、Y（自己にあるエゴ）を等身大1より大きくしていくとZ（愛）は小さくなり、等身大１より小さくしていくとZは大きく無限大に近づいています。これ以上、愛を語ると容量の小さい私の頭が停滞しH氏の言葉を誤解したように、私も誤解されそうなので、今回はここらへんで筆をおきます。（笑）
以上、ご参考になれば幸いです。
yasuji-さん、こんばんは。
「この賢治のように皆が考えたら、格差や貧困は少なくなっていくと思うのだが、いつの時代も現在も、禍を皆で乗り越えようではなく、自分のチャンスと考える人もいることは、とても残念であります。」には全く同感です。
宮沢賢治とも似ているのですが、矢野徹（SF翻訳者、作家）が1958年の短編「耳鳴山由来」で『幸せというものは・・・みんなでつかもうとしなければ現れない不思議なものだ・・・』と書いています。作者は太平洋戦争に学徒出陣しており、作品の底流には、本来人々を幸福にするべき科学技術が濫用され戦争の災禍という不幸をもたらした痛恨の想いがあるように思います。
今般のCOVID-19についても、これを商機と考え実際に巨利を得ている者がいることは大変残念です。これを宮沢賢治や矢野徹が見たらどう思うでしょうか？
「空振りさせようとする投手とヒットを打ちたいバッター」には、『敬愛』があるのではないでしょうか。愛というよりは尊敬。敬愛があるから相互に全力を尽くし、双方が向上するのではないかと思います。よきライバル関係・・・・。
文章に収拾がつかないので、ここら辺で終わります。
irazuyama さん こんばんは
私の戯言に同意とコメントをいただきありがとうございます
経済界で双方に良い良いとする理想のビジネスかのように使う『win−win 』は、実は『win−win−lose of others』で自分たち以外は良心の呵責もなく蹴落とすことなんですね 賢治のように、先ず相手のこと、全体のこと、誰一人も残さないことで考えていただきたいと思います 矢野徹氏は知りませんでしたが、是非読んでみたいと思います
ピッチャーとバッターの関係は、考察が浅すぎました
確かに武士の果し合いのように思えますね 敬愛に同意です
irazuyamaさん こんばんは
紹介いただいた「耳鳴山由来」を図書館で借りてきて、読みました。
宇宙人の若者トモが鋼鉄が無い文明以前の地球の村で織りなす物語ですが、最後、文明の発展しても幸せな世にはならないと語っていました。まさにそうですね。ホモサピエンスは文化・文明を発展させてきたが、精神の発展はほとんど無かったように思います。情けないことなんですね。
こんばんは、irazuyamaです。
ご紹介したものの入手困難ではと思って調べてみたら、ちくま文庫の「巨匠たちの想像力」シリーズに収録されていました。私もさっそく本屋で「戦時体制」「管理社会」「文明崩壊」の全3冊を買ってきました。
yasuji- 様の日記がきっかけで数々の作品に再び接することができます。ありがとうございました。
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