1967年4月30日（日曜日）、丹沢・玄倉川・同角沢を単独遡行した時のことです。前日の最終バスで玄倉に入り、出合まで歩きツエルトを被り夜明けを待って遡行を開始しました。最後の滝・遺言棚を登って東沢乗越に至ってから迷ってしまいました。下山予定は小川谷右岸経路でしたが、経験不足から東沢の踏み跡を見落としていました。猛烈に密集したスズタケに現在位置が分からなくなってしまいました。飲み水があり、里にも通ずると考え、知らない沢を安易に下降しました。（最近調べて、小梅沢とありました）その沢を3つ4つと滝を懸垂下降していくと、玄倉川本流と対岸に玄倉林道が見えました。『助かった』と安堵した束の間、さらに下降していくと本流との出合いの処に40〜50mほどの滝が掛かっておりました。
付近は断崖絶壁で巻降りることは難しいと考え、8mmx30mロープで3回下降をすればよいと安易に考えました。2回目を下降していた時、支点の立木が折れ、最悪の姿勢（頭を下になった逆立ち状態に加え、背中が滝に面した姿勢）で落下しました。もう何が何だか分からない意識も遊泳していました。落下速度が加速されていく中、肩が太さ数ｃｍの小立木に当たり体が反転し頭が上になりました。この時は、まだ背中が滝に面していました。次にまた小立木があり、お尻に当たって折れてしまいましたが、落下速度が一気に落ちて、とっさに体を捩じって右手で背面にある岩の突起を掴んで落下を止めることができました。命拾いしたことも意識しないほど、何が起きたのだろうと呆然としている状態でした。
その後、玄倉川を渡り、林道に這い上がり、林道で工事車両に乗せてもらい、バスと電車に乗り、家にたどり着きました。その間の数時間は、行動しているのですが呆然としていました。家に着いた私を少し離れた処から見た父が、『何かあったな』と母に言ったそうです。それほど、ショックで呆然とした姿だったのでしょう。
２本の小立木があったことも、右手で岩の突起を掴めたことも、偶然とはとても思えないことです。直瀑に近かったので、それらが無ければ岩床に叩きつけられ、即死だったと思います。この九死に一生が中学２年の子供だったから身軽で柔軟性があったからとは、とても言えません。あの体験を『自分の力と運で乗り越えた』とは思いませんでしたが、子供であった当時は、生かされたというようには考えられませんでした。それが、年齢を重ねていくとともに『何かの力が働いて、生かされた』と変わっていきました。
★山行記録『大タギリ〜』に関連した記録を投稿しています
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する