所用で東京新宿へ出かけた際、靖国通りを渡ろうとしたら渡れない。丁度東京マラソンが行われていて通行止めになっていた。ランナー達は大河のようにゆったりと途切れることなく続いていた。沿道には観戦する人、知り合い仲間を応援する人で一杯だった。「〇〇ガンバレ」など歓声も沸いていた。
走るなら一人で走ろうと考えるのが私の流儀だ。考えるとかなり無謀なことだが、走るトレーニングなど行っていないのに二十歳の大晦日にふと思い立って長距離走を行った。軽く昼食を摂り、帰りの交通費と帰りのウエアなどを背負って自宅の新宿から八王子まで４０ｋｍ近い距離を走った。２時間ほど走ったあたりで立ち止まると身体がフラフラ揺れていた。一年の最後の日に、エネルギーが有り余っていたのかじっとしていられなくてストイックになりたかった。それから苦しいという感じが消えてゆきゆっくりだが着実に歩を進めることができて夕方には目標地点まで走れた。後半はランナーズハイという感覚だったのかもしれない。
その単独走の経験からすると、大勢のランナーと競うマラソン大会に参加して、果たして疲れを感じない陶酔や高揚感（ランナーズハイ）を持てるのか疑問が浮かんだ。だが本人達の現実はきっと充実感で一杯だったのだろう。その時「あーそうなのか、遊びなのか。自分を含め人は遊びに興じたいのだ。」との考えが浮かんだ。でも私は少し違って、遊びでもルールは自分で決めたいと考える。大晦日の長距離走を整理して考えると、順位を上げることや目標タイムを念頭に置かないでただ走ることのみに無心になることを自分に課したのだと思う。山登りでも現在ＧＰＳ使用は私のルールには入っていない。道迷いやルートミスも登山のエッセンスのひとつだと思っている。
遊びと言えば、大河ドラマで聞いた「遊びをせんとや生まれけむ 戯れせんとや生まれけむ 遊ぶ子どもの声聞けば 我が身さへこそ ゆるがるれ」が浮かぶ。しかし私は遊ぶ子の姿に我を忘れて振る舞うことは、もはやできない。私は子供の心を失ってしまったとも思えるが、子供の心を失わないことも寂しいことではないかと思っている。子供の心を失わない羽生結弦はとても素敵だし感動そのものでオリンピックなんて超越している宇宙的存在に思える。ただその一方で、子供の心を失うことでやがて誰にでも訪れる死を受け入れ乗り越えることができるような気がしている。
追記：翌日から身体全体が筋肉痛となり特に階段の上り下りはとても難儀した。回復するのに一週間程度かかってしまった。
ランニングはしていなくて専ら歩くばかりなのですが… 外秩父七峰縦走ハイキング大会で3千人と一緒に42kmを歩いたときは、確かにランナーズハイを感じました。そして同時に「ランナーズハイに呑まれて歩くのはいかがなものか？」と思ったりも(^_^;;;
最近、近場の低山で地味な道を長く歩くことが増えたのですが、単独で淡々と歩くのもいいものですよね。そう思えるようになって以来、こういうのも、
童（わらべ）のときは 語ることも童のごとく 思うことも童のごとく
論ずることも童のごとくなりしが 人となりては童のことを捨てたり
といった相変化の一種なのかも(ﾅﾝﾃ
「遊びをせんとや生まれけむ」は梁塵秘抄が元なのですね。なんてすぐにググってしまったり、GPSを手放せなかったり… いつまでたっても童なんだから💦
コメントありがとうございます
東京マラソンの一般ランナー達はみんなとても楽しそうに走っていて、野外で体を動かして健康的ないい遊びだなと思います。マラソン大会に参加することに意義があると思っている方々なのでしょう。一方はるか先で先頭を争うランナー達は遊びじゃない、参加するだけでは意義があるとは思っていない、のでしょうね。
一節削除一節追加（Ｒ4/3/7）
「toshimizu さんの童化」と掛けて、 「桜」と解く
その心は
「どちらも入学式に似合います」
朝から繰り返しての加筆、申し訳ありません（Ｒ4/3/8）
「春よ、来い」とかけて 「toshimizu さんの童化」ととく
そのこころは
「どちらも待ち遠しい」
集団で行われる行為を、比較対象として一人でやってみたいと試みる心境に同意します。私の場合は単に群れるのが苦手なだけだからかもしれませんが。
こんにちは
大晦日の長距離走の前年の年末年始、左膝じん帯断裂をしてしまいました。その年の夏、北アの合宿の無理がたたって、左足親指が無感覚になり左膝に力が入らないという後遺症が生じてきました。足の不調で次の年の冬山に行く勇気がありませんでした。しかしじっとしてもいられず、自分に挑戦と長距離走に挑みました。
エベレストの初登頂者・ヒラリーが「征服すべきは山の頂上ではなく、自分自身だ」と言ったとか！ 偉そうに言えばマラソンなどスポーツも登山も遊びなら、人と競うこともゴールに到達しようとする意識も邪魔なものとなります。邪魔なものを排した時にこそ、遊びとしての本来の境地が見えてくるように思います。
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