佐賀のとある山奥で、山口さんというおじいちゃんから聞いた話。「うちの村は昔、義経騒動っていう事件があってな…」
昭和も初めの頃、九州には義経という四股名の力士がいた。力士と言いながらも半分廃業しているような状態で、ヤクザまがいのことをして日銭を稼いでいる半グレ力士だった。そんな義経関には意中の女の子がいた。その娘は佐賀の山奥、現在山口さんが住む集落に住んでいた。その子を遊びに誘うため、ある日義経関は弟弟子の半グレ力士を2人引き連れてわざわざ山奥まで来た。しかし、せっかく家まで行ってみたものの意中の娘は留守にしていた。これでは面白くない。不機嫌なまま集落を去ろうとしたところ、村の四角で、山口さんの祖父にあたる人が引き連れた農馬と行き当たりでぶつかりかけた。それだけならまだしも、馬は義経関らを見下ろして「ヒヒン」といなないた。不機嫌な義経関はとうとう切れてしまい山口さんの祖父を路上に引きずり倒して、そのまま乱暴を働こうとした。「このままでは山口のじいさんが殺されてしまう!」急いで集まった村中の男たち。勢いそのままに手下の半グレ2人を殺した。残った義経関は命からがら一山越えた隣の集落へ逃げ込み、農家の納屋の中、収穫前で空だった米俵に身を隠した。夜通しで村人の捜索が行われる中、義経関は朝が来るまでガタガタ震えていた。やがて朝が来て、義経関が隠れるようにして街に降りたところで警察の知るところになり、実行犯らはしょっぴかれた。
「その時の裁判費用捻出のために山を売り払ったから、俺の家の山は随分少なくなっちゃったんだよな」山口おじいちゃんは話していた。
俺は、この事件に「義経騒動」って名付けるのはどうかと思った。
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