九寨溝(絵画の世界)

ユネスコ世界遺産に登録されている九寨溝（きゅうさいこう）は、四川省北部のアバ・チベット族チャン族自治州に広がる自然の楽園です。輝く湖、幾重にも流れ落ちる滝──その光景はまるで絵画の世界に迷い込んだかのよう。鬱蒼とした原生林の中には大小100以上の湖沼や渓流、瀑布が50kmにもわたって連なり、まさに別天地と呼ぶにふさわしい場所です。

九寨溝の背後にそびえる山を越えた先には、同じく世界遺産の黄龍があります。黄色がかった乳白色の石灰岩層が棚田のように連なり、その上を透き通った青い水が静かに流れる姿は、まるで山脈を登る一匹の黄金の龍。神秘的な美しさに思わず息を呑みました。

今回の旅のハイライトである黄龍と九寨溝は、あいにく雨に見舞われました。本来なら青や白鶏色（鹅黄）、黒緑、赤褐、赤紫、碧緑といった多彩な色が織りなす、まるで錦繍のような景観が広がるはずでしたが、今回は叶わず少し残念でした。それでも標高の高さゆえ気温12度、震えるような寒さの中で見た雨に濡れた湖や滝は、いっそう透明感を増し、言葉を失うほどの美しさを湛えていました。

次は紅葉の季節に、あるいは雪に覆われた季節に──何度でも訪れたくなる憧れの地です。