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2020年03月14日 19:53登山記録全体に公開

初めての東北登山 会津駒ヶ岳

出発

朝4時30分に目を覚まし登山の準備を開始する。昨日は自宅から電車、バスを乗り継ぎ5時間かけてここ南会津檜枝岐村の旅館ひのえまたまでやってきた。コロナウイルス騒動真っ最中の登山は流石に気が引けたが、感染防止対策を兼ねた人ごみを避けての一人登山だ。神も許してくれるだろう。
 準備を終わらせ昨日お借りした山の雑誌2冊を2階の温泉フロアに作られた小さな和室にある本棚に返却し1階に向かう。お借りした山の雑誌2冊は、昨晩テレビ放送があった田中陽希氏のグレートトラバース3を食い入ってみたこともあり全く目を通せなかった。思えば私が今でも登山を続けているのはこの方のチャレンジの影響が強い。昨年会社の山仲間と丹沢の塔ノ岳に登った時にiPhoneでその番組のテーマソング「Higherという言葉が心地よく耳に残る楽曲」を鳴らしながら山頂に立ったりしたものだ。あの時この歌に気づき話しかけてくれた女性に大きな感謝の念を持ったことが思い出される。
 温泉宿にしては少し小ぶりの玄関前に座り登山靴を履き始めた頃、旅館のご主人が朝早くにもかかわらず無理をお願いして作ってくれた弁当とペットボトル入りの水を持ってきてくれた。ここ檜枝岐村の冬期は、ほぼ休業状態のようで、登山に必要な食料を調達するのが困難であったこともあり本当にありがたい。ご主人と2、3会話を交わしたのち感謝の言葉を伝え宿を後にした。
 時間は5時、外はまだ暗かったが3月初めの早朝にしては気温は高かった。おそらく0度位か。ヘッドランプの電源を入れ綺麗に除雪された道路を北方向に進み会津駒ヶ岳登山道入口へと向かう。当然の如く誰もひとがいない全くの静寂の中、自身初めての東北地方の登山がいったいどんなものになるのかを想像し、期待と不安が頭の中で行ったり来たりした。

登山開始

10分ぐらいで登山道入り口に到着した。登山道手前に乗用車が2台止まっている。先行者だろうか。おそらくバックカントリー目的の登山者であろう。ここ会津駒ヶ岳の冬は、雪質がよく比較的緩やかな傾斜の山ということもあり、登山目的というよりもバックカントリーを目的に登山をする方が多いようだ。バックカントリーに強い憧れがあるが今の私はその装備も技術も持ち合わせていない。数年後の実現を想像しながら登山道入り口を左に進む。
 登山道入り口を少し入ったところにある公衆トイレの3分の1ぐらいが雪で埋まっている。お世話になった旅館のご主人が今年の雪の少なさを嘆いておられたが、さすが豪雪地帯。この公衆トイレで要を足すのは難しそうだ。
 車が走れるほどの広さで1メートルぐらいの雪が積もり所々に四輪駆動の車がつけたと思われるワダチができたデコボコ路を300メートルほど進むと、滝沢登山口に向かうための直登する冬道と右方向に回って進む夏道との分かれ道に着いた。旅館のご主人が「今年は夏道だよ」とおっしゃっていたのを思い出したが、直登の冬道に適度な踏み跡が残っていたこともあり少し迷ったが冬道を進むことにした。
 緩やかな登り坂から始まる冬道をつぼ足で進む。15センチほどの沈み込みはあるが、用意したワカンを装着するほどではない。また、新雪のふわふわした心地よい雪質であるため、同じく持参したモンベルカジタックス製の軽めの前歯付8本歯アイゼンの出番もなさそうだ。
 短い急登を上り終えると滝沢登山口に到着した。滝沢登山口は小さなカール状の地形となっていて前面180度が雪に覆われた急登で囲まれていた。雪崩の心配はなさそうに思えた。
 急登をつぼ足で20分ぐらい登った頃、息のつらさを感じ立ち休みしていると後方にバックカントリー目的の方だろうか、シールが貼られたスキー板で登ってくる姿が目に留まった。この急登をスキー板で登るということが、経験のない私には全く想像がつかなかった。
 世も開け始め空が明るくなってきた。天気は曇り空だが風は穏やかでしばらくは天候の崩れる心配はなさそうだ。しばらくすると稜線に出た。この辺りがヘリポート跡と呼ばれるところだろうか。当然雪でヘリポートの痕跡は全く見当たらない。相変わらず先行者により雪はある程度踏み固められておりつぼ足で問題ない。しかし、少し踏み跡を外れると膝上ぐらいまで踏み沈んでしまう状態だ。踏み跡を付けてくれた先行者に感謝しつつ先に進む。

体力不足

気づくと大分後方にいたスキー板で登り続ける方が間近に迫っていた。踏み沈みに気をつけながら道を譲り挨拶を交わす。その後あっという間に視界から消えていった。スキー登山の方の体力に感心しつつ、自身の体力不足を嘆きつつ先に進む。
 シラビソが点々と茂る曇り空の森の中、時折青空が顔を出す気持ちの良い尾根道を自分の体力に合わせゆっくり進んでいると、登山道から少し外れたところで2名の方が休憩しているのが見えた。一人の方はスノーボードを背負いスノーシューで。もう一人の方はスキーボードであろうか、短めで両側が跳ね上がったスキー板を履いている。朝食が済んだのか出発の準備をしているところだった。おはようございます。と挨拶を交わし、すぐに追い抜かれることを覚悟しつつもお二方の左側を通過した。自身がスキーよりも多少得意であスノーボードでバックカントリーを楽しむ方や、スキーボードという比較的新しいアイテムで登山を楽しんでいる方に出会い、あらためて登山という趣味の奥深を感じた。
 しばらくすると案の定すぐ後方に先ほどのお二方の姿が現れた。スキーの方に道を譲った時と同様に沈み込みに気をつけながら道を譲りふたたび挨拶を交わした。お二方もあっと言う間に姿が見えなくなっていった。ふと、自分の歩行ペースが上がらないことに気づき時間を確認するとすでに8時38分を示していた。どおりでペースが上がらないはずだ。登山を開始してから水以外何も口にせずすでに3時間以上が経過していた。
 ルートから少し外れた雪の平らなところを足で少し踏み固め、そこで朝食を取ることにした。
 宿のご主人に無理を言って朝早くに作ってもらった弁当を開けてみると、おかずの唐揚げ、山菜の天ぷらと一緒に、笹の葉に包まれ海苔に巻かれたびっくりするほど大きなおにぎりがふたつ入っていた。これらをゆっくりと食し体力を回復させ再び登山を開始した。  
 今回の登山のMVPは間違いなくこのびっくりする程大きな2つのおにぎりであろう。ご主人と奥様にあらためて感謝である。

核心

 東北地方の低い森林限界を超えた頃、左手の方向に今回の目的である会津駒ヶ岳山頂の姿が初めて目に飛び込んできた。全体を雪化粧したなめらかな美しい山容である。左側に目をやると、燧ヶ岳の双峰が見える。まるで不思議そうにこちらを見ている猫の耳のようだ。
 しばらく進み山頂まであと1.5キロメートルほど手前ぐらいにさしかかった時、頂上から100メートルほど下の最後の急登のところを登り続ける若い2名の姿がピーナッツほどの大きさで目に入った。ずいぶん離されてしまったものだと感じた。最初に出会ったスキーの方はすでに山頂以降なのか姿は見えなかった。進行方向に目をやると雪に埋まり屋根しか見えない駒ノ小屋に続く踏み跡と、駒ノ小屋の20mほど下をトラバースしてショートカットする踏み跡とに分かれていた。これまでつぼ足で不安定な歩行を続けてきたからか、いつもとは異なる太ももの外側に疲れが出ていたこともあり、迷わずショートカットできるトラバースの踏み跡に進むことにした。しかし、このルートを選択したことが後で後悔する原因となった。
 トラバースのルートは、登山靴で踏み固まった跡ではなくスキーやスノーシューでつけられたあまり踏み固まっていない、つぼ足で進むと一歩一歩が膝上まで踏み沈む状態のルートだった。
 一歩足を踏み出すたびに足が深く沈み込み足を抜き出すのに苦労を要する。ミレー のバックパックの背面にくくりつけてきたワカンを装着するか大いに迷ったが、ワカンで足がさらに重くなることも気になりそれほど長い距離ではないと言い聞かせそのままつぼ足で進むことにした。
 30分ぐらい格闘したであろうか、やっと踏み固められた登山道のコースに戻ることができた。この時、大きなおにぎりのありがたさが再び蘇った。

登頂

 9時50分、山頂まであと200メートルぐらいのところまでたどり着いた。先程先行したお二方の登る姿を遠くから見ていたその場所だ。山頂付近のスカイラインが目に見える。 
 雪深いトラバースコースをつぼ足で歩いてきた疲れが体全体にどっと押し寄せてくる。
 10歩進んでは立ち止まるを繰り返し最後の急登を上り続ける。そして、10時10分ついに標高2133m会津駒ヶ岳山頂に到着。降り積もった雪に頭だけ出ていた三角点に両手を触れ、山頂に到着したことを実感する。
 周囲を見回すと曇り空ではあるが360度全部が絶景である。やっぱり来て良かった。
 旅館ひのえまたの大きなおにぎりふたつと作ってくれたご主人、奥様に感謝しつつ会津駒ヶ岳山頂を後にした。
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