新型コロナの対応で不要不急の外出自粛が求められる中、冬期本白根山登山にチャレンジした。1月から予約させていただいていた、本白根山登山の際には必ずお世話になっている草津温泉の温泉宿「永田屋さん」の宿泊を、どうしてもキャンセルしたくなかったということもあり、迷いに迷ったのだが、他者との濃厚接触を避けることができる自家用でアクセスしての登山ということで実行に踏み切った。
今回の目的は、これまで3回登っているが未だ立つことのできていない本白根山の本当の山頂に立つことである。
殺生・万代鉱コースを進む
国道292号に面した形で設置されていた登山道入り口の道標は撤去されていた。
しばらく整備された登山道を進み、万代鉱手前で左折して本格登山道に入る。入り口の様子を写真に取るべきだった。
積雪10〜15cm位の登山道を500mほど進んだ時点ですでに登山道は雪で確認できなくなったので、iPhoneのGPSとダウンロードした地図そして、登山道の経路を確認しながら慎重に進む。
小さな低い尾根を乗り越えなければならない場所に出たため、尾根に向かって一歩足を踏み入れると、笹の群生地のためか太ももまで踏み抜いてしまう状態。さらに、シャクナゲの群生が行き先を拒む。
苦労しつつ乗り越えると、山頂に向かって緩やかに登る、適度に間隔の空いてダケカンバの生える林に出る。快晴の日差しが木漏れ日で降り注ぐこの緩やかなダケカンバ林を抜けて山頂を目指すと決めた。
ダケカンバの林を抜け鏡池外輪へ
積雪量が増えたためワカンを装着。この後下山時の草津白根山ロープウェイ山麓駅手前2kmぐらいまでワカンはずっと装着したままだった。振り返ると最後まで膝下ぐらいの積雪が続いたため、山麓駅までつけたままでもよかった。
殺生河原方面に向かわず、緩やかな登りを山頂方向に向かって進むと、大きな岩が点在する岩稜帯に出た。岩稜帯の途中で2mほどの下りを強いられた所があり少し苦労するも、命の危険があるような場所ではない。万全を期すためには地図を確認し岩稜をさけ、少し右側を迂回するルートを選ぶべきだった。
鏡池外輪の急登
冨貴原ノ池の南西を1kmほど進んだところで一度登山道(雪で痕跡は全くなし)に入り、鏡池火口の外輪に向かう急登手前にたどり着いた。右側を迂回し登山道を進むか、このまま直登するかの選択に迫られた。ピッケルを要するほどの急登ではなく、ワカンがしっかり差し込むことができる安定した雪質であり、雪崩の心配も無さそうだったので直登することに決める。
結果的に直登は正解だった。この雪だと外輪右側のトラバースは大変だっただろうし、とにかくこの急登の登りが、今回の登山の中で一番楽しい出来事だった。
鏡池外輪から本白根山外輪
少し雪庇が張り出した外輪の上に出ると真っ青なスカイブルーと稜線のコントラストが最高に美しい光景が待っていた。その向こうには浅間山の雄大な山容が目の前に広がっている。
少し目を右にやると今日の目標である本白根山の山容と山頂が望めた。この時点で少し左足に疲れが出ていたこともあり本白根山山頂までまだだいぶ距離があることにがっかりした。
鏡池外輪をワカンで雪を踏みしめながら進む。本当に気持ちがいい。本当に来て良かった。
外輪の稜線を進み、シラビソの点在する森の中を左にそれ、本白根山火口の外輪に向かいしばらくすると、夏期登山では代わりに山頂とすることの多い展望台に到着した。
本白根山山頂へ
ここから本白根山山頂に向かうには山頂左側かの緩やかな稜線を向かうか、登山道を一旦火口付近まで下ったのち、登り返して右側の稜線を進むかのどちらかが考えられる。事前にインターネットの記事などで確認した時に高山植物やハイマツなどの保護のため右側から向かうのが奨励させる。といった記事を見かけたこともありそちらから向かうことにした。
一旦登山道を下り、登り返しの途中で本白根山山頂に直登できる場所に差し掛かった。雪がだいぶ積もっていることから植物への影響のないことが確認できるため、ここから直登することに決める。先ほどの鏡池外輪の時から少し時間がたち、快晴で日光が刺さるように照らしたことからか、斜面の雪は少し緩んでいた。指先から手全体をピッケルのように雪面に刺して進みなんとか稜線に辿り着いた。
稜線上で昼食をとりバックパックをデポして本白根山山頂に向かう。5分もかからず山頂に到着した。「やっと来れた!」という言葉が自然と口から漏れた。山頂は低いシラビソの木々に囲まれていて視界はほとんどなし。そのシラビソには、ピンクのリボンやお手製の看板が装着してあった。先客が1名おられ、「ここは本当は来てはいけないから看板も正式には配備できないのだろう」とおっしゃっていた。
下山開始
登りに5時間半もかかってしまっていたため、すぐに下山を開始する。稜線を下り、まっすぐに登り返して鏡池外輪に向かうルートと、左側の登山道を下り、本白根山頂駅に向かう2ルートが考えられた。疲労感が強かったこともあり、登り返しを避けることができる本白根山頂駅を経由し、鏡池外輪した付近をトラバースし、登りに使ったルートで下山することを選択した。のちにこの選択が間違いであったことに気付かされることになる。
本白根山頂駅を経由するルートは夏の登山道となっているルートであるが、一面に雪が深く降り積もっており登山道は全く確認できない。GPSでルートを確認しながら慎重に斜面を下っていく。
1kmほど下ると山頂駅が目に入る。山頂駅を左手に見ながら進み、冨貴原ノ池方面に向かう登山道を探すが、積雪で全くわからない状態。さらに、強い日差しの影響で雪質が脆くなっていてトラバースするのも困難な状態。自分の今の体力を考慮しても、ここをトラバースして冨貴原ノ池に向かうのは困難と判断。思えば少し頑張って本白根山山頂から登り返して鏡池外輪を越えて冨貴原ノ池に向かうルートを選択すべきだった。
下山ルートの変更
幸い過去の残雪期に、山麓駅から本白根山山頂を目指した経験があり(その時は敗退したが)ここから今は利用されていないスキー場のコースを辿り下山できることはわかっていたのでその時のルートで下山することにした。
少し傾斜のあるところはお尻で滑りながら、らくらく下山ですすんだ。思えばここは2年前の噴火で多数の犠牲者が出たところである。なくなった方のご冥福を祈りつつ先を進む。
下山に予想以上の時間がかかっており先を急いでいたこともあり、途中でスキーコースに沿って右側にを進まなくてはいけないところを見逃し、誤ってロープウェイのルートをそのまま進んでしまった。気づいた時はすでに遅く両側が切り立った崖に囲まれる雪で埋められた沢に入ってしまった。このまま進んでも安全に下山できるかの判断がつかなかったため、地図を参照して最短で白根山を貫いている国道に出るルートを進むことにした。幸いにも右側の尾根を越えるとすぐに国道に出られることが地図で確認することができた。この段階での急登は疲れた体にはこたえたが、最後の力を振り絞り、所々で腰までの踏み抜きに苦労しながら小さな尾根を越えると、足元に目指す目標の国道を確認することができた。安堵の気持ちがどっと湧き出てきた。本当によかった。
この辺りは溶岩でできた崖の点在する岩稜帯であることが薄々わかっていたので小さな尾根を超えた先が絶壁であることも十分考えられたからである。この尾根超えが今回の核心部であった。
所々に雪の積もった舗装道路と、ショートカットが可能な雪の積もった浅い谷を踏み抜きに苦労しながら歩き続け、なんとか山麓駅まで下山した。すると、営業していないはずのレストハウスからスノーモービルに乗ったレスキューの方が近寄ってきた。
レスキューの方:
どちらにいかれたのですか?
私:
本白根山に行ってきました。警戒レベルが1に下がっていたので大丈夫なのかと思って。
レスキューの方:
湯釜の方にはいかれたのですか?
私:
湯釜方面は警戒レベルが2であると認識していたので行っていません。
レスキューの方
本白根山にも未だ入山規制がかかっていることはご存知?
私:
存じ上げませんでした。申し訳ありません。
レスキューの方:
この先はまだスキー場が営業しているので、一般道を除雪車に注意して下山してください。
私:
有難うございます。
どうやら本白根山は、現在も入山規制がかかっているようだ。確認不足である。家に戻ってから再度確認したところ、本白根山火口中心から半径500mの範囲に草津町から入山規制が出されていたのを確認した。(昨年4月現在)
最終的にお咎めを受けてしまったが、これ以上ない快晴の中、今まで立てなかった本白根山山頂に立つことができた。いろいろ反省点はあるが、無事下山することができ、最高の登山となったことは間違いない。本当に来て良かった。
前日と下山後にお世話になった永田屋(えいだや)さん、本当にありがとうございました。おかげさまで目標の本白根山登山を無事終えることができました。お部屋での掛け流し源泉入浴で日々の疲れを取ることが出来たこと。そして、美味しい食事をいただき体力をつけられたことが今回の登山成功に繋がりました。
最後に
登山後にあらためて確認した本白根山の規制状態は以下。
気象庁
・噴火警戒レベル1:活火山であることに留意
平成31年4月5日より変更なし
地元自治体:草津町
草津白根山(本白根山)の火口中心から半径500m圏内を、警戒区域として立入禁止の規制を実施いたします。
平成31年4月5日より変更なし
※下山後に再確認して認識
今回の登山ルートは、完全に火口から500m以内のエリアでした。大変申し訳ありませんでした。
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