夢愁の春よ．

https://youtu.be/4-WWElinWc4

春の訪れのわからぬまま入院して三カ月が過ぎた．病室には季節感など感じられない。
冷暖房完備の部屋の中…三階の窓から真正面にみえる向かいの病棟．左側には新築病棟の建設現場が外壁の足場の解体を始めている…どうやら完成も間近、地上からみる景色は展望がなくなり、病棟はコンクリートの四角いジャングルを囲もうとしていた。
昨年の春に撮った写真を編集してムービーを作りなおすが、心は満たされなかった。
こうしてはいられない、春は待ってはくれない。病棟に閉じ込められる前にここから脱出しなくては…その日の夜に脱獄を実行する。
深夜、アタック開始．窓を開けると外壁に隣の新築病棟とを繋ぐアンカーボルトが撃ってある．手に巻いてある包帯をロープ代わりにアンカーに結んで腰に巻いたタオルをハーネスとして繋ぐ。
公共施設の建設物の外壁はタイル張りでクラックなどない、滑らぬよう注意を払ってタイルの目地に脚で探りながら慎重に降りる。
舗装の運河まであと一息、脱獄は円滑に進められ成功したかに思われたが、いきなり真上からいざなう光が射した瞬間、脳裏が敗れる叫び声が…≪脱走だ！≫懐中電灯の光が、部屋を仕切るカーテンの隙間からこぼれた…目を開けると、見回りに来た看護婦が「起こしちゃって御免なさい」．と囁いた。
夢の大脱走は失敗に終わった。

コメント

tagu36

RE: 夢愁の春よ．
失礼ですが・・・・笑えました
お大事にしてください

karasiko7

コメ見舞ありがとうございます．
ウケにかかってもらえましたか．．．
病室からカフン笑を飛ばしています