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2024年04月08日 16:33登山全体に公開

あれはきっと山の達人

柏原駅から霊仙山へ登った。当初は醒ヶ井駅からの登山を計画していたけれど、林道で土砂崩れがあり、ルートを変更して登山可能な日を待つ事にした。

ようやく天候と休日が噛み合い迎えた登山日。
駅から今日も一人黙々と歩いていると、後方から熊除けの鈴の音が聞こえてくる。自分のぶら下げているおまけみたいなのではなく、ちゃんと良い具合に響く鈴。
それが少しずつ近付いてくる。ああこれは、自分より歩くペースの早い人だな。直追い抜いて行かれるだろう。ここは道がまだ広いから、取り敢えず歩いてたらいいかなと思った。
案の定距離は縮まり、追い抜かれる前に挨拶をした。
それがきっかけで、ヒルがもう出るかの話になった。自分が夕べヤマレコの山行記録を読んだ限りではまだ出なかったということだったので、ここは初めてなのでわかりませんが、人の話ですとまだ出ないようです。とありのままをお答えした。
すると、帰りはこの辺りは出るかな・・・と仰る。

自分は登山初心者なので、こうして山行中に行き会った先輩方がぽんっと教えて下さる話を毎回登山の学習にしている。
「ありがとうございます!」と口にした。気温も上がるしこの湿度だものな、油断大敵だと肝に銘じる。

みるみる遠ざかる先輩の背中。足運びが身軽で、なんだか重力を感じさせない。今日は体が重いなと思いながら力任せに進もうとする自分とは大違いなのだ。

あの人はきっと山の達人に違いないと思った。

先輩と自分の歩行スピードは随分違ったはずだ。ところが、付かず離れず、初めて霊仙にやってきた自分が困らない程度に、先輩の背中が完全には消え去らないのだ。雨が多かったからか、雪解け水なのか分からないが、足場の悪い林道で、元々渡渉箇所があるのは知っていたけれど、それ以外にもちょろちょろ水が流れていて滑りやすく。泥濘だらけの道だった。ここを渡って良いものか、右か左か、慎重を期する場面の連続だった。しかしそういう場面では、先輩の姿がしっかり視界圏内にあって、ちらっと振り返られる。それだけで進んで行かれる。
自分も同じ地点に着く。足場と石を選びつつ歩いてみる。

そんな具合の登山が、三合目まで続いた。三合目の標識の前で汗を拭いておられた先輩は、自分が追い付くと、 暑い。と。
暑いですね。 この会話を最後に本来のペースで歩き出された。

重力が、あそこだけないんじゃないかな――

本当にそう思った。どれだけ歩いたらあんな風に肩の力を抜いて登れるんだろう。

きっと最初の会話で自分が山の初心者だと気付かれて、三合目まで様子を見て下さったんだと思う。無暗に話しかけられるとルートを間違えたり標識を見落としてしまって怪我や道迷いに繋がり、実際にそんな経験もした自分は、こんなふうに程よい距離を保ちながら背中で教えて下さったことが、貴重な経験でありがたかった。嬉しかった。


一人だけど、一人じゃ無い。山での出会いは一期一会。そんな時間を大切に、また山を歩きたい。

山の大先輩、その節は大変お世話になりました。ありがとうございました。
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