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「黒部の山人」(鬼窪善一郎 語り)
〈感想〉
先日、黒部源流域の山々を歩いた。その際に持ち歩いたのがこの「黒部の山賊」。山行中は序章しか読むことができず、下山してから再びページを開いた。
「黒部の山賊」は、人里離れた秘境の山々を闊歩していた猟師たちと三俣山荘を再建した伊藤正一との交流を描いた物語。
この本の中では、獣を追い道なき道を歩く山賊たちの山の中での原始的な生活が生々しく描かれていた。そこには、今の登山の文脈とは全く異なる命がけで山と対峙する人々の営みがあった。
特に印象的だったのが、山の中でのちょっと怖い話や不思議な出来事のこと。怪談のような話も山賊たちの口から語られると、手つかずの山の自然の中ではそんなことがあっても不思議ではないと納得してしまった。
「黒部の山人」は「山賊」に登場する鬼窪善一郎の山の生活史を本人の語りでまとめたもの。「山賊」の著者、伊藤正一が記録した山賊たちと鬼窪本人が語るエピソードには重なる部分があり、「山人」を併せて読むことで、山賊たちの山との向き合い方がより立体的に想像できるようになった。
この二冊の読後、現代の登山以前の山を歩いた男たちの生き様に心が震えた。より深く山と向き合う山行がしたいと強く思った。そして、またいつか「山賊」に描かれた黒部源流の山々を歩いてみたいという思いが湧き上がってきた。
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