チングルマ=稚児車?
高山植物の代表格、チングルマですが、ほとんどの方が
〜「稚児車」に似ているから〜
〜果穂った姿が、幼児の玩具を連想して「稚児車」と名付けられた〜
と覚えますよね。
自分もそのクチでしたが、そもそも「稚児車(チゴグルマ)」ってなんでしょう??
ググってみると...結局、チングルマが検索されます..
世間的にも、チングルマ=稚児車 が定着していますが、検索結果上位からよく見ていくと面白い記事があり..
稚児車なる玩具(風車みたいなもの)は存在しない
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
とのことです..あれあれ..
ということで、紹介されている書籍を引用しつつ、誰もが知る高山植物の代表格「チングルマ」の和名由来について、面白い話を書いてみます。
〜「稚児車」に似ているから〜
〜果穂った姿が、幼児の玩具を連想して「稚児車」と名付けられた〜
と覚えますよね。
自分もそのクチでしたが、そもそも「稚児車(チゴグルマ)」ってなんでしょう??
ググってみると...結局、チングルマが検索されます..
世間的にも、チングルマ=稚児車 が定着していますが、検索結果上位からよく見ていくと面白い記事があり..
稚児車なる玩具(風車みたいなもの)は存在しない
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
とのことです..あれあれ..
ということで、紹介されている書籍を引用しつつ、誰もが知る高山植物の代表格「チングルマ」の和名由来について、面白い話を書いてみます。
方言が転化?
前述記事のURLは http://ozenotomo.seesaa.net/article/132014416.html です。
紹介している書籍は「植物和名の語源探究(深津正著)」 (http://www.yasakashobo.co.jp/books/detail.php?recordID=46)
こちらの書籍、気になったので図書館で借りて読んでみました。(チングルマのところばかりだけど..)
ざっくり内容を紹介すると、
=================================================
柳田国男の「野草雑記」には、「オキナグサの方言でチゴノマヒ(稚児の舞)というのがあり、これをなまってチグルマイというとある。チングルマは、このチグルマイがなまったもの。
『日本植物方言集(草本類篇)』では、オキナグサの方言として、「チゴバナ」の名が全国的に広く普及しており、とくに越中(富山)では、「チゴノマイ」および、これから転じた「チグルマイ」の方言があることがわかる。「チゴノマイ」は無論「稚児の舞」であって、子供が首を振り立てながら舞を舞うとき、髪の毛が渦を巻くように揺れ動く。その様子を、オキナグサのそう果をつけた長い花柱が風にそよぐ姿にたとえたもので、『本草綱目啓蒙』や『俚言集覧』にもやはりこの言葉が載っている。
=================================================
とあります。要は、多数の文献において、方言の転化の結果が「チングルマ」と紹介されている、と記しています。
つまり、以下のような関係図。
紹介している書籍は「植物和名の語源探究(深津正著)」 (http://www.yasakashobo.co.jp/books/detail.php?recordID=46)
こちらの書籍、気になったので図書館で借りて読んでみました。(チングルマのところばかりだけど..)
ざっくり内容を紹介すると、
=================================================
柳田国男の「野草雑記」には、「オキナグサの方言でチゴノマヒ(稚児の舞)というのがあり、これをなまってチグルマイというとある。チングルマは、このチグルマイがなまったもの。
『日本植物方言集(草本類篇)』では、オキナグサの方言として、「チゴバナ」の名が全国的に広く普及しており、とくに越中(富山)では、「チゴノマイ」および、これから転じた「チグルマイ」の方言があることがわかる。「チゴノマイ」は無論「稚児の舞」であって、子供が首を振り立てながら舞を舞うとき、髪の毛が渦を巻くように揺れ動く。その様子を、オキナグサのそう果をつけた長い花柱が風にそよぐ姿にたとえたもので、『本草綱目啓蒙』や『俚言集覧』にもやはりこの言葉が載っている。
=================================================
とあります。要は、多数の文献において、方言の転化の結果が「チングルマ」と紹介されている、と記しています。
つまり、以下のような関係図。
なお、オキナグサの方言には、相当数あるようで..下記にて色々と紹介されています。
http://www.atomigunpofu.jp/ch5-wild%20flowers/okinagusa.htm
・チゴバナ 加州播州 と記載あり ※加州=加賀藩は、江戸時代に加賀、能登、越中の3国の大半を領地とした藩
http://www.atomigunpofu.jp/ch5-wild%20flowers/okinagusa.htm
・チゴバナ 加州播州 と記載あり ※加州=加賀藩は、江戸時代に加賀、能登、越中の3国の大半を領地とした藩
オキナグサってどんな花?
「オキナグサ」を是非画像検索してみましょう。
( https://www.google.com/search?q=%E3%82%AA%E3%82%AD%E3%83%8A%E3%82%B0%E3%82%B5&newwindow=1&sca_esv=592986270&rlz=1C1GCEU_jaJP1058JP1059&tbm=isch&source=lnms&sa=X&ved=2ahUKEwiT7tDjiKKDAxWaaPUHHa-zAGsQ_AUoAnoECAMQBA&biw=1462&bih=674&dpr=1.25 )
咲いている姿は、後述にあるとおり「ツクモグサ」に良く似ています。
でも、下記記録で見られるような果穂った姿は、チングルマのそれと瓜二つですね!
https://yamareco.org/modules/yamareco/upimg/65/651442/d745f6b97df292c8bf87534aa8614c0e.JPG
( https://www.google.com/search?q=%E3%82%AA%E3%82%AD%E3%83%8A%E3%82%B0%E3%82%B5&newwindow=1&sca_esv=592986270&rlz=1C1GCEU_jaJP1058JP1059&tbm=isch&source=lnms&sa=X&ved=2ahUKEwiT7tDjiKKDAxWaaPUHHa-zAGsQ_AUoAnoECAMQBA&biw=1462&bih=674&dpr=1.25 )
咲いている姿は、後述にあるとおり「ツクモグサ」に良く似ています。
でも、下記記録で見られるような果穂った姿は、チングルマのそれと瓜二つですね!
https://yamareco.org/modules/yamareco/upimg/65/651442/d745f6b97df292c8bf87534aa8614c0e.JPG
下記はWikipediaの引用です。
=======================================
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%82%AD%E3%83%8A%E3%82%B0%E3%82%B5
「白く長い綿毛がある果実の集まった姿を老人の頭にたとえ、翁草(オキナグサ)という。 ネコグサという異称もある」
「近縁種は、ツクモグサ」
「日本では、本州、四国、九州に分布し、山地の日当たりのよい草原や河川の堤防などに生育する。アジアでは、朝鮮、中国の暖帯から温帯に分布する。かつて多く自生していた草地は、農業に関わる手入れにより維持されていた面があり、草刈などの維持管理がなされくなり荒廃したこと、開発が進んだこと、それに山野草としての栽培を目的とした採取により、各地で激減している。 」
絶滅危惧II類 (VU)
=======================================
かつては、あちらこちらの集落で見られたオキナグサ。老若男女誰もが、その名をその土地の言葉で語っていたことでしょう。
そして、紅葉時期にふと高山帯の山を訪れた者たちが、あの大群落を見て「まるで、チゴノマイ(チグルマイ)だねぇ」なんて、話していたのかも。
=======================================
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%82%AD%E3%83%8A%E3%82%B0%E3%82%B5
「白く長い綿毛がある果実の集まった姿を老人の頭にたとえ、翁草(オキナグサ)という。 ネコグサという異称もある」
「近縁種は、ツクモグサ」
「日本では、本州、四国、九州に分布し、山地の日当たりのよい草原や河川の堤防などに生育する。アジアでは、朝鮮、中国の暖帯から温帯に分布する。かつて多く自生していた草地は、農業に関わる手入れにより維持されていた面があり、草刈などの維持管理がなされくなり荒廃したこと、開発が進んだこと、それに山野草としての栽培を目的とした採取により、各地で激減している。 」
絶滅危惧II類 (VU)
=======================================
かつては、あちらこちらの集落で見られたオキナグサ。老若男女誰もが、その名をその土地の言葉で語っていたことでしょう。
そして、紅葉時期にふと高山帯の山を訪れた者たちが、あの大群落を見て「まるで、チゴノマイ(チグルマイ)だねぇ」なんて、話していたのかも。
やはり、稚児車なんて存在しない..?
前述の「植物和名の語源探究(深津正著)」にも某氏との会話で
===============================================
「君は稚児車なんていう日本語があると思うのか、そんな日本語にない言葉が語源になるはずがない!」
念のため、「稚児車」という玩具があるかどうか、小高吉三郎著『日本の遊戯」 酒井欣著「日本遊戯史』山田徳兵衛著「日本のおもちゃ」など、世にある限りの参考書をはじめ、 主要な 国語辞典百科辞典などについて調べてみても、ついに「稚児車」なる話は見つからなかった
===============================================
といった記述があります。これは、確かに同意。
というのも、雪深い高山帯に咲くチングルマより、子育て家庭に見られたという「稚児車」なる玩具の方が遥かに日常的に見られるものであり、そういった存在が「実態」や「図画」といった形で「伝承」されていないことが、その存在に大きな疑問符を投げかけるのです。
===============================================
「君は稚児車なんていう日本語があると思うのか、そんな日本語にない言葉が語源になるはずがない!」
念のため、「稚児車」という玩具があるかどうか、小高吉三郎著『日本の遊戯」 酒井欣著「日本遊戯史』山田徳兵衛著「日本のおもちゃ」など、世にある限りの参考書をはじめ、 主要な 国語辞典百科辞典などについて調べてみても、ついに「稚児車」なる話は見つからなかった
===============================================
といった記述があります。これは、確かに同意。
というのも、雪深い高山帯に咲くチングルマより、子育て家庭に見られたという「稚児車」なる玩具の方が遥かに日常的に見られるものであり、そういった存在が「実態」や「図画」といった形で「伝承」されていないことが、その存在に大きな疑問符を投げかけるのです。
和名研究者の決定打
「植物和名の語源探究(深津正著)」では、本件について最後に下記のように記しています。
=====================================================
日本最初の百科辞書である三省堂発行 『日本百科大辞典』の「チングルマ」の項に「越中立山においてこれをちごのまひと称する」とあるのを見つけたことは大きな収穫だった。 これは、チングルマとオキナグサ両者共に、 果実の姿がよく似ているところから、方言の面でも共通するようになったなによりの証拠である。
=====================================================
前述の関係図「チゴノマイ → チグルマイ → チングルマ」の From~To の繋がりに、より強固な証拠を得たわけですね。
なお、この「日本百科大辞典」の初版は明治41年刊行ですが、その頃からも記載されていたんでしょうかね..
CF. https://dictionary.sanseido-publ.co.jp/column/ayumi17
=====================================================
日本最初の百科辞書である三省堂発行 『日本百科大辞典』の「チングルマ」の項に「越中立山においてこれをちごのまひと称する」とあるのを見つけたことは大きな収穫だった。 これは、チングルマとオキナグサ両者共に、 果実の姿がよく似ているところから、方言の面でも共通するようになったなによりの証拠である。
=====================================================
前述の関係図「チゴノマイ → チグルマイ → チングルマ」の From~To の繋がりに、より強固な証拠を得たわけですね。
なお、この「日本百科大辞典」の初版は明治41年刊行ですが、その頃からも記載されていたんでしょうかね..
CF. https://dictionary.sanseido-publ.co.jp/column/ayumi17
これからは..
「にっぽん百名山」などで、登場するガイドさんが「稚児車」を率い合いに「チングルマ」を紹介している映像を数回見てきました。どこかの回では、イラスト付きで紹介されてもいたな..。
「稚児車」この漢字表記だけ見てしまうと、果穂った姿との類似性から勝手な想像が働きますが、それは恐らく誤りでしょう..。
ここで紹介したエントリーは、信憑性は高いものと個人的には判断しているので、今後は、「方言転化説」を機会があれば語ってみたいと思います。
その裏付けるになるよう、自分用にまとめたのが本エントリ..^^;
「稚児車」この漢字表記だけ見てしまうと、果穂った姿との類似性から勝手な想像が働きますが、それは恐らく誤りでしょう..。
ここで紹介したエントリーは、信憑性は高いものと個人的には判断しているので、今後は、「方言転化説」を機会があれば語ってみたいと思います。
その裏付けるになるよう、自分用にまとめたのが本エントリ..^^;
お気に入りした人
人
拍手で応援
拍手した人
拍手
※この記事はヤマレコの「ヤマノート」機能を利用して作られています。
どなたでも、山に関する知識や技術などのノウハウを簡単に残して共有できます。
ぜひご協力ください!
親の世代の方から、かつては里山に稚児守りの祠がよくありそこに我が子の無病息災を祈って風車をさした、チングルマの綿毛が風車に似ていることからその名前がついたと教えられましたがどうなんでしょうね。
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する