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更新日:2024年02月05日 訪問者数:555
雪山登山 技術・知識
吾妻連峰山スキー遭難事故から30年
miyamako
吾妻連峰山スキー遭難事故から30年
 ちょうど30年前の1994(平成6)年2月、吾妻連峰で山スキー縦走中の7人パーティのうち5人が疲労凍死するという事故が起こり、当時は大きな話題になった。
 事故の経過や原因については、各種の書籍のほか、NHKのドキュメンタリー番組「そして5人は帰らなかった」(YouTubeで視聴可能)で詳述されており、容易に知ることができる。
 私は事故パーティについて批評する立場ではないが、たまたま同じ時に同山域に入っていたので、現地の状況や、行動の決定要因に関する情報を提供することにより、事故の原因や防止策を考察する上での素材になるだろうと考え、掲載するものです。

【私たちのパーティ】
・在京山岳会 リーダーmiyamakoほか男女7人
・計画 2月11日(金) 吾妻スキー場〜家形山〜烏帽子山付近(幕営)
    2月12日(土) 〜東大てん〜西吾妻山〜西吾妻小屋(泊)
    2月13日(日) 〜若女平〜白布温泉  予備日なし
計画書は会で審査のうえ、県警に事前送付

【2月11日】
 東北新幹線、路線バスにより高湯温泉に到着。冬型が強く残り、雪混じりの強風が吹き付けていた。スキー場の1本目のリフトは動いていなかったが、たまたま近隣旅館のマイクロバスに乗せてもらえることになり、3本目リフトの乗り場付近まで送ってもらう。リフトに1本乗り、最後の4本目リフトも運休であったため、ゲレンデ内をシール歩行で登る。地吹雪にさらされ辛い登りだった。この時、メンバー中で最も経験の少ない者が、時々スリップしているのを観察した。
 11時30分、ゲレンデから樹林に入ると風は感じなくなったが、雪は降り続いていた。薄くガスが漂うものの視界は十分に効いた。天候は回復傾向で、時々薄日が差すようになった。順調に登り、14時過ぎに五色沼畔の1810mピークに出た。既に雲は上がり、白い雪原となった五色沼や荒々しい一切経山を見渡すことができた。家形山への取り付きは、クラストの斜面に苦労したが、風は支障になるほどのことはなかった。この斜面でもスリップしているメンバーが気になった。頂上台地西よりの樹林の中で、15時30分に行動を打ち切る。16時の気象通報により天気図を作成すると、九州南西海上を低気圧が順調?に東進していることが見て取れた。
 夜には満天の星が広がったが、まだ風はフライをはためかせていた。テント内は、この時期にしては暖かく、既に低気圧前面の暖気が入っているように思われた。リーダーの私は、翌日の進退を考えて眠れぬ夜を過ごした。なお、事故パーティとは時間がずれていたためと思われるが全く接触していない。
《事故パーティの行動》
※タイムはNHK番組によるが、書籍では異なっている箇所がある。
13時スキー場発。16時家形山避難小屋着

【2月12日】
 風は3時頃にピタリと止んだ。薄明るくなって観察すると、全天塗りこめたような中層の曇りだった。磐梯山、飯豊連峰等が遠望できたが、スッキリしない陰鬱な眺めだった。風はなく、全く寒さを感じなかった。撤退することを最終決断し(理由は後記)、メンバーに説明する。不満顔の者もいて胸が痛かったが、了承してもらえた。
 6時15分、往路を下山開始。頂上台地の東端からは朝もやの福島盆地を見下ろすことができた。下降の準備をしている時、後方の磐梯山の頂上に雲が懸ったなと思うと、ものの数分で冷たい風が流れ雪が舞い始めた。1810mピークを越し、後は順調に滑降。その間に雪は次第に強くなり、9時にスキー場に到着した頃には大粒のボタン雪が降りしきっていた。温泉街では風は無く、雲のかかった山の中も「荒れている」状況ではなかろうと思えた。温泉に一浴、残念会を執り行った後、帰京の途についた。
《事故パーティの行動》
 8時15分家形山避難小屋発。北に向かう尾根から滑川温泉を目指すが、下降点を見出せず、18時30分頃ビバークとなる。

【2月13日】《事故パーティの行動。以下同じ》
7時出発。下降点を見出せず、家形山避難小屋に引き返す途中の白浜(1579m)付近で行動不能となり、悪条件下のビバークとなる。
【2月14日】
9時、行動できる2人が滑川温泉に向け出発。16時ビバーク
【2月15日】
8時出発。12時半頃滑川温泉に到着し救助要請。同日中に残り5名収容される。

【総括】
撤退を判断した理由は次のとおり。
1 1日目の行動がはかどらず、予定していた烏帽子山の先まで到達できなかった。予備日がないため、3日目に悪天候でも必ず下山できるためには、2日目に天元台スキー場の近くまでの長距離を進んでおく必要があり、これは好条件下でないと難しいと思われた。
(ここでは、下山期限から逆算して行程を考えたのが結果として良かった。残り2日で半分ずつ行けばよいと考えたら立往生になっただろう。)
2 低気圧が接近しており、どの程度荒れるかは分からないが、少なくとも視界は不良となり、平坦な連峰中心部のルートファインディングが極めて困難となり、スピーディーな行動ができないと思われた。(当時はGPSはなかった。)
3 歩行速度や、シール登行技術面で不安のあるメンバーがおり、悪条件下でのパーティの力量に自信が持てなかった。

 以上を総合的に考慮し、縦走の続行は不可能と判断したのだが、どちらかと言えば理屈は後付けで、第六感が「ヤメロ」と訴えたのが正直なところだ。いくつかの分岐点のギリギリ最後で撤退を選択したために無事下山できたわけだが、これは1のとおり、1日目に深入りできなかったことにより引き返しの判断がし易かったという「結果オーライ」の幸運に助けられた面が大きい。事故パーティのその後の状況を知ると、今も冷や汗のにじむ思いだ。幕営装備、食糧、燃料、スコップ等は持っていたので死ぬことはなかったと思うが、下山遅延で大変な事態になるところだった。当時は今よりは血気があったので、天候が悪そうでも「とりあえず登山口まで行ってみて・・」という振舞いをすることがままあった。冬山で寒気の流入が予想されている時は、初めから山行を中止すべきであった。

(余談)出発前夜にテレビの天気予報を見ていた時、森田正光さんだったのだろうと思うが「南岸低気圧で東京が雪になるか雨になるかは微妙だが・・・私は雪になると思います。」と言ったのに驚かされた。私はほとんどNHKしか見ていなかったので、キャスターが私見を述べるというのが当時は新鮮だったのだ。これで「南岸低気圧。それなりの寒気が入る」ということが強く印象に残り、判断の材料となった。その意味で森田さんは大恩人である。

  ※私の所属会は既に解散しており、本稿は個人の責任によるものです。
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