登山の持久力に関する覚書
1.肺活量(もしくは最大酸素摂取量)
ヒトは糖質や脂質を酸素で燃やすことで生きている。
ということは、ヒトは吸い込んだ酸素の分しか山を登れないということである。
特に登山をしているわけではなくてもスポーツマンがスイスイと山を登れるのは肺活量が大きいためであり、
運動不足の中高年が山を登れない第一の理由は肺活量が足りず糖質や脂質を燃やせないからである。
また、肺活量が足りないとカラダは無酸素運動で不足する力を補おうとするが、
無酸素運動は糖質を消費して乳酸を生み、乳酸は疲労を蓄積し、肺活量に余裕が出るまで回復はしない。
このように肺活量はとにかく重要であり、肺活量の強化は目に見えて登山を楽にしてくれるだろう。
後述する糖質と脂質の燃焼割合にも関係している点も留意したい。
2.スタミナ、すなわち糖質と脂質と相対運動強度
ヒトは糖質や脂質を酸素で燃やすことで生きている。
しかし、糖質は1gあたり4kcalであり一般人ではせいぜい400g程度しか貯め込めないのに対し、
脂質は1gあたり約9kcalであり、その気になれば10kgでも20kgでも貯め込むことができる。
こう聞くと脂質だけを燃焼させることができれば無限に運動を続けられると思うかもしれないが、
糖質と脂質の消費割合は肺活量に対する相対運動強度で決まっており、
安静時では脂質が60%消費される一方、相対運動強度が60%の時は脂質が50%となり、
相対運動強度が80%になると脂質は20%しか消費されなくなる。
これは脂質の燃焼には糖質より多くの酸素が必要であるため酸素が不足すると脂質の消費が落ちるからである。
つまり、相対運動強度が高いと有限の糖質がどんどん消費されてしまい、糖質が尽きたところで動けなくなる。
これがスタミナが尽きるということであり、登山の用語で言えばシャリバテである。
脂質の燃焼を促してスタミナ切れを防ぐには、登山のペースを息が切れない程度に抑えることが大事である。
また、糖質を行動食で補うことにより実質的なスタミナを大きく増強できる点も重要である。
3.筋肉痛
行動食を摂ってスタミナを補充しながらであれば、ヒトが何十時間でも登山できるかと言うと、そうではない。
長時間登山を続ければ徐々に筋繊維の損傷が増えて脚力が落ちてくる。
いわゆる、行動食を取っても長時間休憩しても足が震えて脚力が回復しない、という状態である。
こうなるとそれ以上の登山はとりやめ脚力の回復を待つしかないが、その間に現れるのが(遅発性)筋肉痛である。
筋肉痛は筋繊維の損傷が回復し増強される際に生じる炎症によるものとされ、
筋肉痛が残る間は脚力が十分に回復していないということである。この期間は2日-1週間程度となる。
筋肉痛の出ている時に運動すると筋繊維の回復を妨げるとも言われるので、無理な運動は控えた方がよい。
筋肉痛は足を暖め血行をよくすると回復が促され痛みもやわらぐため、温泉で療養するのは良い考えである。
また、水分不足は生化学反応を妨げ脚力の回復を遅らせるため、水分は十分に摂るべきだろう。
4.疲労、つまりは糖質の不足
十分な運動量の登山を行うと貯め込んでいた糖質はカラになると考えられる。
この糖質の備蓄を回復させるためには、炭水化物を多く含んだ食事を摂ることが第一である。
体力を使う仕事をしている方々は食事をして一晩眠れば十分に回復しているわけだが、
運動不足の中高年ではもう2-3日は休んだ方がいいかもしれない、
また、水分不足はスタミナの回復も妨げるため、水分は十分に摂るようにしよう。
なお、高タンパク食を続けることでカラダが炭水化物不足となっている時に
一気に炭水化物を接種すると限界を超えて糖質を筋肉に貯め込むことができる。
いわゆるプロのアスリートが実践するところのカーボンローディングである。
食生活に対する制限が厳しいため一般人の週末登山に活用しづらいが、遠征登山の場合は一考に値するだろう。
参考文献:山に登る前に読む本(能勢 博)、登山と身体の科学(山本正嘉)
スポーツ栄養学第2版(寺田 新)
ヒトは糖質や脂質を酸素で燃やすことで生きている。
ということは、ヒトは吸い込んだ酸素の分しか山を登れないということである。
特に登山をしているわけではなくてもスポーツマンがスイスイと山を登れるのは肺活量が大きいためであり、
運動不足の中高年が山を登れない第一の理由は肺活量が足りず糖質や脂質を燃やせないからである。
また、肺活量が足りないとカラダは無酸素運動で不足する力を補おうとするが、
無酸素運動は糖質を消費して乳酸を生み、乳酸は疲労を蓄積し、肺活量に余裕が出るまで回復はしない。
このように肺活量はとにかく重要であり、肺活量の強化は目に見えて登山を楽にしてくれるだろう。
後述する糖質と脂質の燃焼割合にも関係している点も留意したい。
2.スタミナ、すなわち糖質と脂質と相対運動強度
ヒトは糖質や脂質を酸素で燃やすことで生きている。
しかし、糖質は1gあたり4kcalであり一般人ではせいぜい400g程度しか貯め込めないのに対し、
脂質は1gあたり約9kcalであり、その気になれば10kgでも20kgでも貯め込むことができる。
こう聞くと脂質だけを燃焼させることができれば無限に運動を続けられると思うかもしれないが、
糖質と脂質の消費割合は肺活量に対する相対運動強度で決まっており、
安静時では脂質が60%消費される一方、相対運動強度が60%の時は脂質が50%となり、
相対運動強度が80%になると脂質は20%しか消費されなくなる。
これは脂質の燃焼には糖質より多くの酸素が必要であるため酸素が不足すると脂質の消費が落ちるからである。
つまり、相対運動強度が高いと有限の糖質がどんどん消費されてしまい、糖質が尽きたところで動けなくなる。
これがスタミナが尽きるということであり、登山の用語で言えばシャリバテである。
脂質の燃焼を促してスタミナ切れを防ぐには、登山のペースを息が切れない程度に抑えることが大事である。
また、糖質を行動食で補うことにより実質的なスタミナを大きく増強できる点も重要である。
3.筋肉痛
行動食を摂ってスタミナを補充しながらであれば、ヒトが何十時間でも登山できるかと言うと、そうではない。
長時間登山を続ければ徐々に筋繊維の損傷が増えて脚力が落ちてくる。
いわゆる、行動食を取っても長時間休憩しても足が震えて脚力が回復しない、という状態である。
こうなるとそれ以上の登山はとりやめ脚力の回復を待つしかないが、その間に現れるのが(遅発性)筋肉痛である。
筋肉痛は筋繊維の損傷が回復し増強される際に生じる炎症によるものとされ、
筋肉痛が残る間は脚力が十分に回復していないということである。この期間は2日-1週間程度となる。
筋肉痛の出ている時に運動すると筋繊維の回復を妨げるとも言われるので、無理な運動は控えた方がよい。
筋肉痛は足を暖め血行をよくすると回復が促され痛みもやわらぐため、温泉で療養するのは良い考えである。
また、水分不足は生化学反応を妨げ脚力の回復を遅らせるため、水分は十分に摂るべきだろう。
4.疲労、つまりは糖質の不足
十分な運動量の登山を行うと貯め込んでいた糖質はカラになると考えられる。
この糖質の備蓄を回復させるためには、炭水化物を多く含んだ食事を摂ることが第一である。
体力を使う仕事をしている方々は食事をして一晩眠れば十分に回復しているわけだが、
運動不足の中高年ではもう2-3日は休んだ方がいいかもしれない、
また、水分不足はスタミナの回復も妨げるため、水分は十分に摂るようにしよう。
なお、高タンパク食を続けることでカラダが炭水化物不足となっている時に
一気に炭水化物を接種すると限界を超えて糖質を筋肉に貯め込むことができる。
いわゆるプロのアスリートが実践するところのカーボンローディングである。
食生活に対する制限が厳しいため一般人の週末登山に活用しづらいが、遠征登山の場合は一考に値するだろう。
参考文献:山に登る前に読む本(能勢 博)、登山と身体の科学(山本正嘉)
スポーツ栄養学第2版(寺田 新)
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