Sequoia/Kings Canyon NP, Rae lake loop アメリカ セコイア国立公園 ラエレークループ

- GPS
- 104:00
- 距離
- 65.5km
- 登り
- 3,180m
- 下り
- 3,186m
コースタイム
- 山行
- 5:40
- 休憩
- 0:20
- 合計
- 6:00
- 山行
- 5:50
- 休憩
- 0:10
- 合計
- 6:00
- 山行
- 6:40
- 休憩
- 0:20
- 合計
- 7:00
- 山行
- 4:40
- 休憩
- 0:20
- 合計
- 5:00
- 山行
- 4:30
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 4:30
天候 | 晴天 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2017年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
トレールははっきりしている。2016冬の豪雪により、2箇所の橋が流され、流木を橋代わりに渡る。クマが多く、今回は2度、”対面”したが、原則にそえば特に不安はない。渡渉用にサンダルが必要。 |
その他周辺情報 | 途中から、pacific crest trail, John Muir Trailと重なるので、人通りが多くなる。 トレールヘッドまで、近辺の都市(Fresno)から100mileあるので、麓でガソリンを入れておくことを勧める。 |
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
Tシャツ
ズボン
靴下
雨具
日よけ帽子
着替え
靴
サンダル
ザック
昼ご飯
行動食
調理用食材
飲料
コッヘル
食器
地図(地形図)
ヘッドランプ
予備電池
ファーストエイドキット
常備薬
日焼け止め
ロールペーパー
携帯
時計
サングラス
ナイフ
カメラ
テント
テントマット
シェラフ
|
---|
感想
前日は長女の入寮。同室の新入生の他の親たちは部屋の掃除等、甲斐甲斐しくいつまでも寮の部屋に止まっていたが、娘の希望もあって早々に退散する。
8/15。当日は、現地レンジャーステーション開所時刻8:00に間に合うべく、3:00に出発。現地に7:30に着く。すでに窓口が開いていて、前の8人のグループが入山申請していて入山割り当てが切れるのでは無いかとビクビクするが、入山許可を無事入手できた。今年は当日割り当てにかなり余裕がある様だ。理由は途中の橋がこの冬の大雪の春の融雪で流され、webで渡渉困難との情報が流れていたための様であった。8:30に登山開始。Mist fall前で、クマがトレールの真ん中で、松ぼっくりを食べているのに遭遇。咳払いをして、こちらの存在を知らせるが、最初の一回こそ、はっとして、振り返るが以降はまったく気にしない。以降、咳払いしても口をモグモグさせながらこちらの様子をのんびりとチェックするも、食べるのをやめようとしない。全く人に対して遠慮というものを知らない。後続の家族連れ等も合流しクマが食べ終わるのを5分程度待つ。メキシコ人の二人連れは、サッカーの試合でよくみるエアホーンを持っていて、ペッパースプレーが禁止された今では良い考えだと感心する。(クマに関する考察は後述する)。観光名所の、mist fallsを超えると、人も少なくなり静かな谷をひたすら登る。2:30宿営先のupper paradice valleyに着く。私が一番乗り。昼寝するも4:00過ぎても誰もこない。8時過ぎに目を覚ましたところ、3パーティーがいた。ここでは焚き火ができるので、みな火を焚いていた。木の燃えるいい匂いが立ち込めていた。
8/16。渡渉点の橋が流されていたが、下流100mほどのところに直径1mの新鮮な倒木が川をまたいでおり、しっかり踏み跡がついている。これのおかげで足を濡らさずに川を渡れた。U字谷の緩やかな登りを詰める。昨日の行動から割り当てされたarrowhead lake キャンプサイトまで4時間で着くかと思ったが、高度のせいか6時間かかった。キャンプ地直前で、すれ違う複数の登山客から、クマが湖畔の草むらにいるとの情報を得る。キャンプ場1:30着。クマが近辺にいるのは不安要因だが、割り当てられた場所でもあるし見渡したところクマも見えないので設営する。最警戒体制をとり、日焼けどめ、調理器具を含めた匂いのしそうなものすべてを、クマよけロッカーに入れ、食料の入ったBearVault(耐クマ容器)をロッカーの上に置き、テントを30mほど離れた場所に設営する。おやつを食べて昼寝。3:00、鉄板を金槌で叩く様な音がして目が覚める。確認しに出たところ、案の定、クマがbear kegを開けようと格闘していた。蓋をしっかり締めていたか不安になったが、とりあえず持っている。追い払おうと、石を手に取り、石をぶつけたり、そばの倒木を叩いたり、大声を出したりするも、一向にクマは気にとめるそぶりもない。前足で体重をかけて容器を潰そうとしたり、両手で抱えて蓋を噛み付いて見たり、まるで以前見た北極グマがポリバケツで遊んでいる様にいいおもちゃになっている。一方、熊は人間を急に脅かした時以外襲わないという原則通り、私に対しての威圧行為はない。15−20mまで近づいて直接アイコンタクト(ガンの飛ばしあい)をとるも、『見つけたのは僕だから、あんたにあげない』とばかり全く意に介さない。全く人間を恐れないこどころか、人間を舐めきっている。もってこれなかったペッパースプレーをかけたい衝動に駆られ悔しい思いをする(禁止理由は後述)。20分ほどしたところで、数人の青年グループが通りかかり、しばしの撮影大会の後、クマを追い払うのを手伝ってくれて(数に物を言わせて、熊のパーソナルスペースに大声をあげつつ侵入)クマを排除できた。またもどってきて、おもちゃにされるのはかなわないので、耐熊容器もロッカーの中に収納した。容器の蓋には、穴が開いており、また回転防止の”つめ”が捻じ曲げられていた。後もう30分ほど頑張っていたらもしかしたら蓋が壊されていたかもしれない。5時夕食。レンジャーが通りかかったので、事象を報告し対策を教示してもらう。
『こんなとき、なにかできることはありますか?』
『うーん。なにもありませんね』
『ペッパースプレーは携帯禁止ですが、防御方法はなにがありますか?』
『そう、公園の方針としてペッパースプレーは携帯禁止です。最終的な防御方法としては石とか、枝をクマに投げつけるとかが効果的です。』
と、怒ったチンパンジーがとる行動以上の方策がないことが判明した。
『夜に戻って来て、テントに興味を持たれることが心配なのですが』
『大丈夫。テントとか人間には興味を示しません』と根拠不明の説明を受けた。(理由は後述)
一人だと不安だなあと思っていたら、8時頃他の単独行の人が同泊。熊の話をしたが、実際見ていないと緊迫感がないのか、熊ロッカーのすぐ横にテントを張っていた。(教科書的には、食料とテントは30m以上離す)結局、静かな朝を迎えた。
8/17。いとつ上のRae lakeまで40分。次の日の行動を考え、北湖畔のキャンプサイトまで足を伸ばしたが、クマロッカーがないことがわかり、湖畔中央のキャンプサイトに戻り、デイハイク中不在の間クマにいたずらされないように、食料、調理器具をクマロッカーにいれ、つぶしたテントで場所を確保した上で、sixty lake basinへのデイハイクに行く。ここは、今までも逆方向から何度か来ようとしたところで、いつも時間切れ敗退していたところなので、なんとか到達したかったところだった。かつての氷河底に小さな池が連なる美しいところで、踏み跡も途中で途切れ、手つかずの自然。California golden troutが泳ぐ池々を訪れたのはこの日、この谷全体で私一人だった。Rae lake に戻った後、水浴びした。雪解け水なので冷たいけれども気持ちがいい。日差しが強いので、衣類もすぐに乾いた。
8/18今日は峠を越えて、いよいよ帰りの始まり、Glenn pass は標高3600m。今年は、雪も久しぶりに残っている。Rae lakeの湖面は例年よりも50cmほど深く、以前水面上の飛び石も今年は水の中。サンダルに履き替えて渡る。キャンプ場からGlenn Passの標高差は700m。1時間半で峠に着く。何度か来たCharlot lake を横目で見ながら、さらに谷底に降りる。快調にとばして1:30に一つ先のキャンプ場についた気でいたら、後になってそれが、予定のキャンプ場junction meadow であることを知った。ショックだったが、そばに4頭の鹿が私テントを張っても気にすることなく、木陰で休んでおり、一緒に昼寝する。こういう平和的な隣人は歓迎する。彼らとは3時過ぎまで一緒にいた。結局、ここでの宿泊者は私一人で、念のため食料、料理道具等は離れたところに保管する。期待に反してクマはこなかった。
8/19最終日。耐クマ容器いっぱいに詰めて来た食料もほぼ食い尽くた。看板にトレールヘッドまであと11マイル (18 km)とでていたので、昨日の勘違いに落胆する。でも、昨日の鹿4頭が途中の草はらでお出迎え。平和的で気が安らぐ。トレール最後の渡渉は、説明をいい加減に聞いていたので、濡れる必要もないのに足を滑らし靴下を濡らしたので、ループの合流点からはサンダルで歩いた。トレールヘッド近辺は気温が30度を超えハエが目の前に群がり、うっとうしかった。11:30駐車場着。
景色も素晴らしく、2500m近辺で一泊したのが効いたのか高山病にならずにすんだ。何より、動物たちとの接触が予想外に濃厚だったのが良かった。
レンジャーステーションでクマへの対応と対策を聞いた。要約は以下の通り。(カリフォルニアにいるのはツキノワグマと親戚のブラックベアのみで、州のシンボルとなっているヒグマ(grizzly bear)は絶滅している。以下はブラックベアのアドバイス。グリズリーは全く違う原則で動いているので以下は当てはまらない。
1)クロクマは一般的に出会い頭で驚いたり、子供を守る以外では人間を攻撃しないし、興味を示さない。
2)クマが興味を持つのは、食料だけである。化粧品、日焼け止め等は食べ物の匂いと認識されるので気をつける。
3)ほとんどのこの地区のクマは、人間を恐れる。今回のケースは例外的なもので、この個体が引き続き人間の所有物を襲うのであれば対処が必要。
4)レンジャーの常套句として、不注意で人間の食料の味を覚えたクマは駆除されるとされるが、屠殺に至るまでに段階がある。人間を恐れないクマで、人間に興味を持つ個体は、麻酔銃で捕獲され檻に入れられ、人間を恐れる様に教育される。それらの個体には耳にタグをつけられ放たれる。何度か教育しそれでも人間に攻撃的なクマは安楽死処置がとられる。(今回の2個体はいずれもタグがついていなかった。)安楽死処置はここ1、2年無い。
5)ペッパースプレーは、使用した際の副作用(使用した本人に対して)が効果を上回るので禁止している。(私も練習で使用した際、ひどい目にあった。https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-692829.html 参照)
6)エアホーン、等代替器具はその必要を認めない。クロクマ自体が小さいので、人間を襲うことは滅多に無いし、もし襲われてても、怒ったチンパンジーの方策でどうにかなる(枝、石を投げる。その際クマに直接当たらない様に注意)。絶対に、背中を見せて走って逃げてはいけない。熊の狩猟本能を喚起し、襲撃を誘発するだけである。
7)この辺りのクマは、以前ヨセミテで餌付けされていたために人間に必要以上に近づいている、という認識は正しくなく、その習慣を持つクマは全て駆除された。近年の入園者増加によりクマが人の存在に慣れてきているのが原因。個体によって人への警戒心が無くなっている。その様な個体で人間に興味を持つものは上記の様に教育される。
以前野生の黒クマと接触した時は手斧があったので不安は感じなかったが、丸腰でこれだけ接触を持ったのは初めてだつた。クマからのボディーランゲージから襲ってくるという意思は感じられなかったが、緊迫感はあった。人との距離が不自然に近いと感じたが、一線を越えたら即屠殺というのではなく、教育されると聞いて安心した。そうでなければ、一線がどこにあるか知らないクマにとっては不幸なことだったろう。クマと一対一で対峙するという貴重な体験は、熊への畏怖と敬愛を改めて喚起した。日本のクマは、狩猟対象であることから一般的に人間を恐れる。私も、日本でのツキノワグマとの接触は、せいぜい人間の気配を知って慌てふためいて丘を駆け上る黒いシリを見たのがせいぜいであった。近年増加している日本での人との接触事故に心を痛めるひとりとして、切に共存を祈っている。
PS: 後日、bearVault のメーカーにクマによってフタに穴を開けられたと連絡したら、新品のフタを無料で送ってもらえた。
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