狩場山 小田西川 釣り <54>


- GPS
- 56:00
- 距離
- 13.1km
- 登り
- 543m
- 下り
- 534m
天候 | 2日目は雨。 |
---|---|
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
北海道のなかでも、道南(同じ日本海側の道北も)のイワナは大き いという評判がある。道東にも大物のイワナはいるが、この地域はオショロコマ を筆頭に大きさよりも生息数で勝負というのが常だ。もちろん、川によっても、千 差万別だが。
◆鱒がうようよ泳ぐ滝壺
その大物イワナを釣りたいと、道南の小田西川を遡行することにし た。小田西川は、狩場山(一五二〇メートル)に源を発し、日本海へとそそぐ。狩場山 は、後方羊蹄山(一八九三メートル)をのぞけば道南地方では最高峰、渡島半島では 随一の険しい山岳だ。標高一五〇〇メートルを超す山頂から、一〇キロたらずの流程 で海に達するわけだから、川全体が一気に高度を下げる急流となっており、と くに下流部のゴーロ帯と源頭部とはきびしい遡行を強いられる。
事前に遡行記録を調べて、上流の二股に魚止めの滝があり、そこに は鱒が群れて泳いでいると記してあったので、三人で胸をふくらませて、札幌 中山峠 岩内 島牧と車を走らせた。まだ開通して日が浅い国道が、日本海 の断崖にそって、難所を切り通しやトンネルでやりすごしながら、南へ延びてい た。村の集落が途絶え、舗装道路が砂利道に変わって、しばらく走ると、小田 西川の河口に着いた。
◆巨岩累々のゴーロ帯を遡る
河口といっても、そこは、広々とした砂浜をゆったりと流れる川が海にそそ ぐというような、ありふれた河口ではなかった。かなりの傾斜がある流れが、大き な石を押し出 しつつ、海に落ち込んでいる。一見すると土砂崩れの跡のよう。一〜二メートルの高さ の堰堤が二段、三段とつらなって、その川を横断していた。期待の鱒(おそらく、 アメマス) は、これでは遡上を阻まれているかもしれない。
わらじ、地下足袋で足ごしらえをして、出発。空は鉛色で雨も落ちてくる。上 流から降りてきた釣り人とすれちがったが、聞くと「天気が悪いので、引き返して 下山する」 とのこと。びくの中は二、三匹の型のいいイワナが入っていた。この釣行で、人に 出会ったのは、この人だけだった。
雨はときおり、強く降る。天気予報では大きな崩れはないそうだが、局地的 に降られれば、増水して大変なことになる。
ゴーロ帯にかかると、沢幅いっぱいに、巨岩が積み重なって、待ち構えてい た。沢登りというよりも、岩の乗り越えの競争をやっているみたい。ついに、二階 建ての家ほど もある岩が二つ、V字型の沢幅いっぱいに行く手を完全にふさいでいるところに 出た。まいった。いや、岩の間にすきまがある。さっそく山野君が先行してルートを 切り開く。
岩に両側をはさまれたこのすきまには、水が流れ落ちていた。けれど、濡 れるのもかまわず体をすきまの奥へやり、空間の中で上向きにずり上がると、 頭の上に空が見えた 。
◆雨で退避。33センチのアメマスを釣る
巨岩帯が一段落し、岩はいぜんころがっているが、その間隔があいて、渓 相がやや穏やかになってきたあたりになって、また雨が強く落ちてきた。水も濁 ってくる。「まず いな、これは。」「テントを張って安全に一晩退避できるところをさがそう」。
しばらく進んで、右手の小尾根に樹林が繁っているのを見つけ、川から二 〇メートルほどの高さがあるこの尾根に登った。木の間に狭い空き地を見つけ、 ダンロップの小型のドー ム・テントを張る。増水すれば、ここで停滞になるかもしれない。でも、落石や水 流に襲われる心配はない。明日のことを考えれば、上部の滝が射程に入るあた りまで、沢を つめておきたかったが、しかたがない。
泊まり場が決まると、雨の中で、釣りを始めた。U字型の谷底に、直径五メ ートルくらいの大きな岩がころがっていて、その岩の上流側が深い淵になってい る。濁流が渦を巻いて いる真ん中に、ミミズを餌に、おもりを重くして糸を垂らす。竿の長さ分のミチ糸 が全部沈んでも、まだおもりが効いている。濁っていてわからなかったけれど、 三メートルを超す ようなかなり深い淵だと知って、思わず乗り出していた体を岸にひいた。
と、竿先がクィーンと水の中におじぎをした。来た! もう一度、引き込ん だところであわせると、 かなりの抵抗で応えてくる。竿を立てるようにして、水面へ引き上げると、白い斑 点が大きい、立派な魚体が姿を現した。尺上(三三センチ)のアメマスだ。
テントに帰ると、山野田君が三枚におろしてくれた。ピンクの身がきれいだった。小麦粉をつけてムニ エルをつくり、骨は他のイワナとともに味噌汁の具となった。
◆尺イワナが群れる桃源郷でルアーを 引く
夜が明けると、幸い、雨はあがり、増水していた沢も水の濁りがとれてい た。足のそろった三人なので、いいペースで遡行し、沢がゆったりと流れる中流 部に着いた。よど みや淵には、尺に少し足りないくらいのイワナが群れ泳いでいる。初めて見る魚 影の濃さに歓声を上げつつ、ルアーのキャスティングの用意をした。
川幅は、二人が並んで竿を振れるくらいの広さ。一投めから、元気いっぱい のイワナがヒットする。並んで投げれば、二人同時にヒット。遡ると、川は三人並 んでキャステ ィングできるような開けた場所も出てきて、上流へと足で魚を追い立てつつ、一五 メートルくらいの遠投を繰り返す。あっという間に、三人がそれぞれ一五匹ほどを釣った。大物ね らいに切り替え、型が小さいものは逃がしてやる者、貪欲に数を上積みする者 (私)、泳ぎ、逃げまどうイワナとたわむれる者など、さまざまに、この幸せなひと ときを堪能 する。休憩のとき、山野君は、一服休みの時間にバッタをつかまえ、これを餌に 針を落ち込みに投じた。バッタは白い泡とともに、沈まずに回っている。バシャッ と水面が波 立って、尺もののイワナが引き上げられた。
どこまで、このイワナの桃源郷がつづくのだろう。僕たちは、いつのまにか釣 り心が満たされて、イワナでず っしり重くなったザックを背に、川をくだった。
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