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記録ID: 1297887
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ハイキング
石鎚山

【伊予富士】静かな一歩

2017年10月30日(月) [日帰り]
情報量の目安: B
都道府県 愛媛県 高知県
 - 拍手
体力度
2
日帰りが可能
GPS
03:33
距離
6.6km
登り
824m
下り
824m
歩くペース
速い
0.70.8
ヤマレコの計画機能「らくルート」の標準コースタイムを「1.0」としたときの倍率です。

コースタイム

日帰り
山行
3:26
休憩
0:04
合計
3:30
距離 6.6km 登り 824m 下り 838m
13:08
29
13:55
20
14:15
26
14:41
14:42
21
15:24
15:25
29
15:59
ゴール地点
天候 くもり時々晴れ
過去天気図(気象庁) 2017年10月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
登山口の案内図
ところどころに鮮やかな紅葉
ところどころに鮮やかな紅葉
頂上付近はガス
きれいな尾根道

感想

【静かな一歩】

 この日は前日に山の準備をしなかった。遅めの台風が過ぎ去った朝の空を見上げながら、山に行くのを決めた。よく忘れ物をするので、いつもは前日にきっちり道具を揃えるのだけれど、この日はベッドから起きてからいそいそと準備を始めた。ほぼ1年ぶりの登山。山にどっぷりのめり込んでから、こんなに間が空いたことはなかった。

 行く時間がなかったわけでも、行く理由がなかったわけでもない。むしろ山に行きたくて行きたくてたまらなかった。しかし、去年の暮れ頃から体調不良の波が寄せては返し、自分の身体がどうにも思うようにいかなくなってしまった。家と山のあいだで、気持ちだけがフワフワ浮いているようだった。

 朝食を慌ただしく食べ終えると、天候と体調を見定めてから「よし」と小さく気合を入れてザックを背負った。近くの山ならどこでもよかったけれど、なんとなく「伊予富士」という響きに心惹かれて、登山口まで約1時間半車を飛ばした。愛用のゴローの登山靴に足を入れ、小さく一歩を踏み出す。ゆっくりゆっくりと自分に言い聞かせながら、歩みを重ねていく。

 登山口から桑瀬峠までは急勾配が続き、木々も鬱蒼としている。スローペースを心がけていても息が切れた。標高が1500mを超えたくらいから笹が多くなり、ふっと振り返ると壁のような山肌に赤や黄色が映えていた。たぶん紅葉のベストシーズンはもう少し先だと思うが、深い緑とのコントラストが鮮やかに目に残った。

 桑瀬峠から西に進路を変え、気持ちのいい尾根道をテンポよく進む。左右ともにほどよく切り立っていて眺望がいい。ずっと待ち焦がれていた山歩きのはずなのに、気持ちが高ぶるという感じはなく、自分でも不思議なくらいただ淡々と歩いた。登りはじめて2時間ほどで着いた頂上は、風がかなり強く、じわりと汗をかいた身体はすぐに冷えはじめた。湯を沸かすのも面倒だったので、おにぎりをひとつだけ食べてすぐに下り始めた。

 これまでは山頂に到達する達成感を求めて登っていたが、この日の頂上はあくまで目標であって目的ではなかった。山の中に自分の身を置く。それだけで満たされていく感覚があった。それと同時に、山を下りながら自然と無心になっていくのもわかった。矛盾しているようだけれど「満ち足りた空っぽ」とでも言うべき心境だった。

 あらためて「山を歩く」という行為は、本当にシンプルで、それ故に奥深いものだと思う。街を歩く時には気にも留めない一歩一歩を重ねるその単純な作業が、山では深く静かな喜びに変わる。


救いは一歩踏み出すことだ。さらにもう一歩。そして、たえずその同じ一歩を繰り返すことだ。
What saves a man is to take a step. Then another step.It is always the same step, but you have to take it.

(サン・テグジュペリ『人間の大地』)

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