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記録ID: 167914
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積雪期ピークハント/縦走
白神山地・岩木山

岩木山弥生コースピークハント失敗記

2012年02月05日(日) [日帰り]
 - 拍手
GPS
09:40
距離
11.8km
登り
1,226m
下り
1,226m

コースタイム

6:00弥生登山道手前1キロほどの神社---7:05弥生登山道1合目付近---7:56大長峰に乗る---9:25大長峰終端---10:45ブナ林帯抜ける---11:30森林限界---13:201433m地点で前進断念引き返す---15:40出発地点着

天候 曇→風雪
過去天気図(気象庁) 2012年02月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
弥生登山道への農道は、1.5m以上の積雪で通行不能。1キロほど手前の神社脇の雪捨て場に車を駐車させ、そこから歩く。
コース状況/
危険箇所等
スキーで20〜30センチのラッセル、1300m付近からはワカンで膝上ラッセル。途中、大長峰終端から急坂が続き、雪崩に注意。
登山道1合目付近の水道施設。1mほどの雪が屋根に乗っていた。
2012年02月05日 07:08撮影 by  DMC-FT3, Panasonic
2/5 7:08
登山道1合目付近の水道施設。1mほどの雪が屋根に乗っていた。
弥生登山道2合目付近、大長峰。朝靄の雑木林。
2012年02月05日 07:57撮影 by  DMC-FT3, Panasonic
2/5 7:57
弥生登山道2合目付近、大長峰。朝靄の雑木林。
1400m付近。マイナス8度。体感温度はマイナス20度だ。砂嵐のように、雪の粉が舞い上がり雪面を駆け抜ける。
2012年02月05日 13:23撮影 by  DMC-FT3, Panasonic
2/5 13:23
1400m付近。マイナス8度。体感温度はマイナス20度だ。砂嵐のように、雪の粉が舞い上がり雪面を駆け抜ける。
ホワイトアウトは怖い。フラッグの赤は雪原に良く映える。
2012年02月05日 13:23撮影 by  DMC-FT3, Panasonic
2/5 13:23
ホワイトアウトは怖い。フラッグの赤は雪原に良く映える。
ここで断念。向こうに9合目の耳成岩が見える。あと少しだった。
2012年02月05日 13:23撮影 by  DMC-FT3, Panasonic
2/5 13:23
ここで断念。向こうに9合目の耳成岩が見える。あと少しだった。
森林限界のベース地点に帰着。ここにスキーを立てておいた。太陽が顔をのぞかせ、気持ちが和らぐ。
2012年02月05日 13:50撮影 by  DMC-FT3, Panasonic
2/5 13:50
森林限界のベース地点に帰着。ここにスキーを立てておいた。太陽が顔をのぞかせ、気持ちが和らぐ。

感想

岩木山弥生登山口から頂上をめざすが、1433mで断念、引き返す。
行動時間:6時〜15時20分
天候:曇り
気温:1300m付近 -8℃
いつもの通り午前3時半に起き出した。寒くない。窓から見えるコンビニ駐車場の雪だまりには、夕べの足跡が影を作っている。しめしめ。携帯電話が告げる天気予報も午後から晴れると言っている。この数日、降雪に次ぐ降雪で山の厚みも大分増しただろう。だが昨日から暖気が来ているし、雪もある程度締まってきているに違いない。そんなことを考えながら、準備済みのザックに食料とテルモスを詰め準備完了。送り棒は40本、スキー、シール、ストック、ピッケル、スパッツとともに軽自動車の後ろ座席に投げ込む。
 そうそう、今回の登山靴は新しいマインドル製だ。この黄緑色が美しいやつは、私の師匠が1年程はいたものが形見に残り、奥様が私に使ってとくださったものだ。どういうわけか足のサイズも含め、衣服から何から師匠のサイズが私にもぴったりで、私が師匠から登山の手ほどきを受け始めた頃、足サイズが同じなのはすばらしいと大いに喜ばれ、2足ずつ持っている夏・冬用登山靴を一足ずついただいた。その上、これはもう使っていないものだからと、登山用品一式までいただいた。スキー、シール、アイゼン、エアマット、携帯用ダウンジャケット、アウター用上下ジャケット、上下の肌着、冬のピークハントには必需品のフェイスマスクまで、何から何までいただいた。今回のピークハントに所持・着用するものも、8割方は師匠が使いこなした匂いがある。
 1月2日の岩木山嶽コースのピークハント後、使った登山靴を乾かしていたときに、かかと部分の皮が破れゴアテックスのフィルムがむき出しになっているのをうかつにも見逃していた事に気がついた。登山用品専門店に相談したが、修理できるかどうか疑問だ。いずれにしても、今回はこの靴はやめとくのが無難だ。そういうわけで、新しいマインドルが後ろ座席に投げ込まれたのだ。だが、これが今回の断念の原因、準備不足を思い知らされることになった。
 いつもとは違った雪の壁で曲がりくねった上弥生までの道路を、中古のワゴンRでかっとばす。岩木山環状道路を左折し弥生登山口への取り付き道路に入る。いくらか柔らかくなった雪が深く轍を作っている。エンジンを吹かしながら坂を登ると、まだ真っ暗闇の中、照明をつけながら除雪車で雪を飛ばしている人がいる。新聞配達のバイクが道を空けてくれる。こちとらは遊びに行くのだ。いやはや申し訳ない。道は雪捨て場で終点となり、車はここに停めておく。
 時刻は5時半、出発予定の6時にはまだ30分もある。余裕だ、と朝のラジオを聞きながら支度にかかる。今回は、下はオーバーズボン、上は厚手のフリースに決めた。デイパックに投げ込んできた磁石、ナイフなどの小物を身につけ、厚手の靴下、オーバーズボンを身につける。アウターはザックの下段に詰め込んである。登山靴を履き、スキー板にシールを貼る。ザックにピッケル、シャベルを取り付ける。まだあたりは真っ暗だ、頭につけたライトを点灯する。車のドアを閉め、ジルブレッタのビンディングに登山靴をはめ込む。あれ?前側のコバがずいぶん小さめだなあ。それでも片手でビンディング後方の留め具を引き上げるとカチンと音がして靴が固定された。ザックを背負い、これも初めての左腕にカメラケースをマジックテープバンドでくくりつけ、さて出発だ、とミトンの中履きをめくりあげて時計を見ようとしたら、上弥生の公共スピーカーから聞き覚えのある音が流れてきた。あ、時計を見ると確かに6時を指している。準備に30分も使ったのか、じゃあ、ちょうど定刻のスタートだ。
 車の駐車場所はきれいに除雪されてあり真っ平らだ。捨てられた雪の1メートルほどの低めの壁に足がかりをつけ農道に入る。雪の中に15センチほどスキーは沈む。方向転換をしようと右足を外側に向けようとしたら、ガラリとスキーが脱げた。ビンディングが外れたのだ。あれ?どうしたのかな?ザックをつけたまま流れ止めを外しスキーを整え、つま先の金具に靴のコバを引っかける。あれ?きちんと入っていかない。コバが小さすぎて、金具のカーブにうまくはまらないのだ。後の留め具を引き上げると、つま先側がコバから外れていく。かろうじて留まることは留まるが、つま先を上に持ち上げると外れてしまうのだ。雪の藪の中での修復作業は無理だ。やばい。これは大変だ。左足にスキーを履いたままで、右足のスキーを支えにしながら、駐車場所に下りた。これは大変だ。カメラケースを外しザックから自由の身になり、ビンディングの調整にかかる。どうやら左足も同じ状態で、コバに留め具がきちんとひっかかっていない。どうすればこの小さなコバが金具に留まるのだろう。金具の曲線に合わせてコバを削ろうか、などと考える。これが留まらないと今日の山行はなしだ。結局は後の金具を5ミリほど詰め、強い圧力で靴をビンディングに押し込むことにする。渾身の力を振り絞り後の留め具を引き上げる。留まった!
 疲れた。時計を見ると30分の時間が経過していた。いつの間にかあたりはうっすらとしらみがかってきていた。まあいい。仕方ない。今日は行けるところまで行こう、行動予定の1時までは6時間半ある。
 
 いつもと違いばたばたした出発だった。それでも歩き出し始めると息づかいも落ちついてくる。農道を登山口1合目に向かいながら積雪の状態をスキーとストックの感触でつかむ。新雪が10センチ。その下にはバリバリバリと3層の弱層があり15センチほどのラッセルだ。だが、農道脇に立ち並ぶリンゴの樹冠は自分の目線より下だ。積雪1.5mというところか。農道でこうなのだから、山に入ったらどんなだろう、と想像しながら歩を進める。20分も歩かぬうちに汗が浮かんでくる。ニットのキャップが汗を含んできた。ミトンの中も汗ばんできた。この手袋も初めて使う師匠の遺品。ウールの2重にオーバーミトンを加えた3枚重ねのごつい奴だ。
 7時過ぎに1合目直前の水道施設の脇で休憩。ここは標高300mだが、高度計はと手袋をめくると270の数字が見える。おお、高気圧が来ているな、これはうれしい、と数値を調節する。水分を補給歩き始める。
 7時56分。登山道2合目大長峰に乗った。途中遠回りをしたが、沢から尾根への連絡路はどんぴしゃりだった。急坂を斜めに登り一汗かいた。暑い。ミトンの内履きをポケットにしまい込み、このくらいがちょうどいい。ビンディングは、その後はずれていない。どうやらこのままいけそうだな。大長峰は幅30〜50mほど、長さ1キロほどのゆるやかな尾根だ。通常なら、小灌木があちこちから枝をのぞかせ、スキーで通り抜けるのがやっかいな場所もあるのだが、今回は違った。小灌木は深い雪の下となり、夏道が2mほどの幅で白い絨毯のように続いている。なんとまあ歩きやすいことよ。ピッチが上がり、1時間半で大長峰の終点まで到達した。9時25分だ。ここからは急坂が300mは続く。登山靴の紐を上から2段目まではずし、足首の自由度を確保、ビンディングのクライミングサポートを立てる。直登が無理なところはジグザグに登る。徐々に新雪は厚さを増す。スキーは30センチほど沈む。しかし重みのある雪質でスキーは良く浮く。浮いたスキーを交互に深く沈み込ませながら、ブナの間を2本の深い溝を切りながら4合目、5合目と進む。気温が低くなってきた。ザックのベルトにつけているボトルホルダーにささっているペットボトルの水が凍り始めた。蓋が開かないのはボトルの口の周りが凍って膨張するからだろう。間もなく飲めなくなるに違いない。今のうちだ。半分凍った水を喉に流し込む。
 10時45分。ブナ林帯を抜けた。高度計は1058mを指している。6合目付近だろう。行動時間はあと2時間ちょっと。エネルギー補給し急がなくては。おにぎりを1個ほおばりフェイスマスクをかぶる。どうせこれから先は頭がしびれるほど寒いに違いない。先を急がなくては。ここからが大変だった。深い。スキーは膝まで潜る。しかも気温が低くさらさらした雪だ。シールが効かない。スキーがずり落ちる。森林限界まで400mほどを40分ほどかかってしまった。森林限界に近づくと案の定天候は急変。時には下から時には横から吹きつける猛烈な風雪がほほを突き刺す。さすがにフリースは寒いなあ。フェイスマスクの上にかぶっているニットのキャップはがちがちに凍っている。やっとのことで最後のダケカンバの林まで到達し幹の陰に身を寄せる。ザックからアウタージャケットを引っ張り出し、フリースの上にまとい頭も覆う。これで大丈夫だ。しかし時刻は11時30分。急いで、おにぎりを1個、お茶とともに胃に流し込む。ペットボトルは氷の塊になってしまった。
 ここからはワカンにしよう。以前、いつもこれから先は凍っていることが多かった。スキーで凍った雪を歩くことほど怖いことはない。で、ワカンに履き替える。スキーは赤いシールが上から見えるように揃えて立てておく。さあ、急いで出発だ。右手にピッケル、左手にフラッグ40本。ワカンで足を一歩踏み出した。え、こんなに深いの?膝を超える深さで足を持ち上げるのはなかなか大変だ。これでは歩は進まない。スキーを外したことに内心舌打ちをしながら雪をかき分ける。風はますます荒れ狂う。しばしホワイトアウトとなり、じっと雪煙をやり過ごす。そうそう、コンパスを忘れていた。胸ポケットから取り出しぶら下げる。大長峰に載ったときにコンパスで正確な方向をセットしておいたので方向は間違わない。あっちの方向へまっすぐ行けば頂上に到達するはずだ。それにしてもこの視界ではフラッグは立てていかなくては。30歩を数えて1本立てることにした。
 おそらくこのラッセルだと1時に頂上は無理だろう。せめてこのフラッグがなくなるまで登って、そこでおしまいだな。1から30を数えてはフラッグを立てるのを繰り返す。後ろを振り返り、フラッグが見えるのを確認するが、なぜか足跡はまっすぐではなく左カーブをしているのだ。これが自分の癖なのだろう。覚えておかなくては。だまっていれば左にカーブしていく。右脚の歩幅が少し大きいのかもしれない。そんなことを考えながら、荒れ狂う風雪の中を突き進む。変化自在の風が、目の前の雪の粉を横に並べたり、縦に並べたり、時には唐草模様の曲線を描いたりと、風と雪が目の前で戯れている。時折竜巻が一つ二つと雪を巻き上げ、二つが一つになり消えていく。寒さをわすれて雪と風の芸術に目を見張る。風の音も千変万化だ。ヒュウヒュウ、ゴオゴオ鳴ると思えば、ぴったりと静寂が訪れる。静寂の後は決まって足下がさらわれそうにゴオッと吹き込んでくる。一人雪原にいてこのおもしろさはたまらない。がちがちの頭のキャップが視界を隠すのをずりあげながら、後に連なるフラッグを確認し、ああ、やはりこれはおもしろいと独りごちする。
 フラッグは後1本になった。ここまでだ。先に何か見えないか、と目をこらすと、見えるではないか。あれは確かに耳成岩だ。標高はと、腕を見ると1433mの数字が踊る。13時20分だ。今日はここまで。ピッケルを立て、写真撮影。あと192m登れば頂上だった。行程にして30〜1時間というところか。残念だが又来よう。一泊すれば大丈夫。スタート地点の30分のロスが痛かった。6時間50分の登りラッセル後、下りは2時間20分で下山した。登山口到着は15時40分だった。

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