ヌタハラ林道より桧塚奥峰へ☆暴風雨の中のテン泊山行


- GPS
- 06:37
- 距離
- 16.7km
- 登り
- 1,311m
- 下り
- 1,270m
コースタイム
- 山行
- 3:29
- 休憩
- 0:12
- 合計
- 3:41
天候 | 一日目;雨 二日目;曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2020年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
林道上部の登山道の入り口に標識あり 途中までは明瞭な登山道あり 最後の急斜面は登山道は不明瞭 |
写真
感想
この週末は台風が到来する予報であり、数日前から台風の情報を頻繁に確認する。台風は四国沖で大きく東に向きを変え、房総半島のあたりに向かうという予測コースはほぼ確実とされるが、問題はその速度である。予報のサイトによって台風の通過時間が大きく異なる。台風を東の海上へと運ぶ偏西風が例年よりも緯度が高いところを吹いているために台風の速度が遅いらしい。
数日前までは日本の東の海上に早い時期に予報だったので一里野からの白山の周回を考えていたが、直前になって台風が日本の南海上をかなりゆっくりと東進する予報に変わる。日本海側沿岸は台風の西側に向かって北風が吹き込むことになると思われ、行き先を南に変更する。
台高の山を長いことご無沙汰していたので、久しぶりに桧塚のあたりを訪れることを考える。新調したテントを試す機会がなかったので、この機会に試すことにする。桧塚の周辺はテントを張るのに格好の場所が多いところだ。かなりの雨が降ったようではあるが、予報によると午後には雨が上がりそうだ。
【一日目】
家を出て高速道路に乗ったところで一眼レフを家に忘れてきたことに気がつく。取りに戻ることが出来る距離ではない。仕方がない、今回はスマホの写真で我慢することにしよう。
奈良盆地に入ると上空には青空が広がっている。しかし、橿原で西名阪道に入り、東に向かうと途端に雲が低く垂れ込めるようなる。榛原から東吉野村を目指すとますます雲は低くなり、雨が降り始めた。
県道569号の蓮峡線は宮ノ谷分岐よりも先は一昨年は台風の被害で斜面が崩壊していたが、何事もなかったかのように綺麗に修復されている。道路沿いの廃屋の隣に駐車場があったので車を停めて歩き始める。五分ほど歩いたところで、途中のコンビニで購入してきた食料を車の後部座席に忘れてきたことに気がつく。
丁度、道の左手には廃屋と広い駐車地があったので、廃屋の軒下にリュックをデポし、車まで走って戻り、駐車地まで車を運転して戻る。どうも今回は何かと忘れ物が多い。
台高では大雨が当たり前ではあるが、台風14号は台高には相当な雨をもたらしたのだろう。ニュースの天気予報でも紀伊山地の南東斜面は大量の降雨が予想されることを伝えていた。奥香肌峡を流れる水は緑白色の濁流となり、凄まじい轟音を立てて流れている。
林道を進むと、林道に上を横切って流れる水の流れががある。深いところでは足首よりも上までありそうだ。林道の端に大きな石を放り込んで、その上を渡る。
ヌタハラ林道に入り、ジグザグと斜面を進む。夫婦滝の展望台に立ち寄る。林道の終点から植林の中をトラバースして進むと伐採斜面が広がり、ヌタハラ谷の対岸に二筋の滝が見える。右手の滝は轟々と凄じい水量が流れており、滝の轟音がこちらまでよく聞こえてくる。残念ながらスマホではズームや露出の調整が難しく、綺麗に写真を撮ることが難しい。
林道の上部ではアケボノソウが一株だけ咲いているのを家内が見つける。尾根の取付きには桧塚奥峰登山口と案内がある。最初は植林の中を行くが。すぐに一本の巨樹の倒木が現れる。樹肌からすると樅の樹に思われる。植林された周囲の杉の樹を圧倒して屹立していたことと思われるが、何とも痛ましい。
まもなく植林が終わり自然林となるが、細尾根の急登となる。尾根上の踏み跡は明瞭であり、辿りやすい。自然林には樹肌に地衣類を纏う樹々が多く、あたりは灰緑の色がどこまでも広がっているようだ。
ふと気がつくとさほど大樹ではないが、山毛欅の樹から水道のように水が滴り落ちている。山毛欅の樹肌に苔や地衣類が成長するのは山毛欅の樹がとりわけ効率よく水を集めやすい樹形であることと関連すると聞いたことがあるが、樹から流れ落ちる一筋の水流を前にそのことを実感する。
今回は防水性能が高いはずのトレッキング・シューズを履いていたのだが、靴の中まですっかり水が浸みている。家内も私も同じgoretexのレインスーツなのだが、レインスーツの中までびしょ濡れでレインスーツは果たして役を果たしているのかわからない。
細尾根が終わり、なだらかな段を通り過ぎると、再び急斜面となる。先程までの細尾根と異なり、踏み跡は不明瞭となるが、ところどころにピンクテープはついている。急登にさしかかると家内の歩行速度が極度に遅くなる。背中にフィット感触が良いからということでリュックも新調したのだが、どうも腰から下が非常に疲れるらしい。
桧塚から東に伸びる主稜線に出ると途端になだらかな尾根となる。p1214のあたりには登山口への下降点を示す小さな案内標がある。どうやら尾根の南斜面の植林の中をトラバース気味に下降する道がもう一つあったらしい。p1214のピークを過ぎて、しばらく進むと次々と山毛欅の大樹が現れる。ここは一昨年の冬に北側の木地谷側からイズミ谷左岸尾根を登り稜線に出たのだが、陽光に煌めく霧氷が何とも美しかったことを思い出す。
桧塚の山頂が近くなると家内はますます遅くなる。それでも何とか17時半過ぎに山頂に到着する。山頂の西側にはテントを張るの絶好の平地が広がっている。しかし、それまでは強風を感じることもなかったのだが、ここは風の通り道なのだろう、途端に風が強く、唸り声をあげて風が通過してゆく。尾根芯よりもわずかに南に斜面を下ったところでテントを張る場所を決める。どうやら風は少しましのようだ。雨は一向に降り止む気配はない。台風からの雨雲がまだしぶとくこの台高にかかっているのだろう。ということは台風が東進する速度は予報よりもさらに遅くなったということか。
普段よく使う自立式に比べるとワンポール・テントはペグダウンの作業に時間を要するので、雨の中でテントを張るのは不利である。何とかテントを張り終えると急にあたりは夜の帳が降りてくるのだった。
風も相変わらず強く、闇の中で獣(けだもの)が咆哮するような唸り声をあげ続けている。時折、テントを強く揺さぶるが、この新たなワンポール・テントは定評通り、かなり風に強いようだ。一向にやむ気配のない雨風の音を聞きながら眠りにつく。
足に見たこともないような巨大なヒルが取り付き、血を吸って膨れ上がっているのに気がつき、慌ててヒルを撥ねとばす夢を見た。時間を確認するとまで0時半。ようやく雨は止んだようだ。
【二日目】
翌日、朝は早起きする必要はないので目覚ましをセットしていなかったが、目が覚めたのは空が白み始めた時間だった。風の勢いは少しは弱まったようだが、相変わらず尾根の上はガスの中だ。湯を沸かしてコーヒーとパンで軽い朝食を済ますと、水に濡れてビショビショのテントを撤収する。本来は700gに満たないテントも流石に水を吸って重たくなっている。
全く眺望は期待は出来ないが、桧塚奥峰までは往復することにする。稜線の上では鮮やかに紅葉したシロヤシオ・ツツジが次々と霧の中から浮かび上がる。
桧塚奥峰の山頂には京都の北山や鈴鹿で見かけるような新しい木彫りの山名標がかけられている。小さな山頂広場の南東の立ち枯れの木にも山名標があった。山頂広場ではここでもシロヤシオ・ツツジが鮮やかな紅葉を見せてくれる。この山頂の西側からは山毛欅の樹林が続いている。
明神平から来られた登山者が桧塚奥峰で引き換えされることが多いが、時間に余裕があればこの桧塚まで足を伸ばしたいところだと思う。稜線を東西のどちらか辿っても、この桧塚〜奥峰の間はまるで別世界だ。晴れていたらそれはそれで美しい紅葉の景色を見ることが出来るのであろうが、それはまたの機会の楽しみにとっておくことにしよう。
桧塚に戻り、東側の樹林に入ると登りの時と同様、途端に風が感じられなくなった。再び山毛欅の大樹に見惚れながら、p1214を過ぎると急に樹林の樹々は小ぶりとなる。どうやら下降点の標識を見落としてしまったらしい。昨日、登りで辿った急斜面を再び下降するが雨降りのあとで斜面はかなり滑りやすい。
なだらかな段に下ると右手の植林の中から下ってくる踏み跡とテープが目に入る。しかし、テープは白いテープで目立ち難く、下から登ってくると正面の急斜面につけられたピンク・テープに目がいってしまうだろう。
登山口に戻り、ヌタハラ林道を下降すると下から単独行の男性が登って来られる。松坂市の要請を受けて登山道の調査に来られたそうだ。登山道の状況を聞かれたので、ここまでの情報をお伝えする。男性は登山道にテープでマーキングされるらしいので、今後はルートもわかりやすくなることだろう。男性によると台風は予報よりもかなり南の方に進んでいあったということで、松阪では午前中は晴れていたそうだ。
林道から見上げるとところどころで雲が切れ、青空が広がり始めている。林道を下ると登りの時にはレインスーツのフードのせいで視界が狭かったせいだろうか、登りでは気がつかなかったが、林道脇にはかなりの数のアケボノソウが咲いている。
ヌタハラ林道から奥香肌峡沿いの林道に出ると川はすっかり落ち着きを取り戻し、昨日の緑白色の濁流が信じられないような碧く透明な水が流れている。車の上にカヌーを積んだ数台の車とすれ違う。
昨日、渡渉するのに石を放り込んだ林道の上の流れもすっかり水量は少なくなり、全く問題なく渡ることが出来る。駐車場の手前では大人と子供が手を繋いだコンクリートの不思議のオブジェがあり、その奥にはかなり広い敷地と立派な石垣がある。どうやら小学校の跡地のように思われる。オブジェの周囲では散ったばかりの金木犀の花が芳香を放っていた。
下山後、スメールに到着すると時間は11時10分前、温泉は11時からであった。少し待つとすぐに温泉に入ることが出来た。温泉から上がると家内の脛から血が流れ出している。どうやらヒルに吸血されたようだ。
飯高の小さなスーパーでとっとき味噌を手に入れると、波瀬のおふく茶屋で手打ち蕎麦とでんがらを頂く。まだ12時半ほどであったが、手打ち蕎麦は我々の注文が最後であったらしい。手打ち蕎麦は越前蕎麦のような太く歯ごたえのある蕎麦であった。あっさりしただし汁が素朴な蕎麦とよくあっているように思われた。
奈良盆地は雲が多く、金剛山の上には雲がかかっていたが、京都に戻ると雲はほとんどなく、清々しい風が吹いている。帰宅してびしょ濡れのテントを干すと、瞬く間にテントは乾いてゆく。悪天候の中でのテントの性能を試すには格好の山旅であった。
夜、私の足にも初日にやられたものと思われるヒルに吸血の痕がいくつかあることに気がついた。
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